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14話「リンとの地下探検…たまにミカゲ」

主な登場人物

ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公

ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。

リン:ベルス第一商隊の隊員。明るく親しみやすい性格の天然キャラの女。

ミカゲ:しゃべるフクロウ

タカン:ベルス商議会の議員。ダルムス共和国と内通し、悪だくみをしている噂がある人物。

~言葉~

封樹=エル。巨大樹のこと。

封樹の力=エルマ。エルから採られて使われるエネルギー。あらゆるものへの活用がなされている。

ベルス王国=ルーファーたちが暮らす大国

ダルムス=ダルムス共和国。ベルス王国の敵対国

 ルーファーも地下街の存在は知っていた。

 元々首都の大規模な留置場として使用されていた。しかし、首都の拡大に伴って使用されなくなったため、その場所を解放し、違法な小売店や娼館など軒を連ねるようになった。

 そして、そんな場所のため、荒くれものたちが跋扈する闇の深い場所になっているのが現状である。

 リンとルーファーは、そんな地下街をフラフラと地図を見ながら歩いていた。

 オレンジ色の灯と複雑に入り組む薄暗い小路、そしてたまに大きな広場がある不思議な作りである。


「ここって広いんだよね~。いまいち地図がわからんなあ~」


 リンは、おでこをかきながら地図を凝視している。


「確かに複雑に小路が入り組んでるし、方向感を失いそうになるわね」


 ルーファーも今が入り口からどうやってきているのかが分からなくなっていた。


「ダメだ!ちょっとおなか減ったし、あそこでご飯食べよ!」


 リンは近くのボロボロの店を指さした。

 ルーファーは『この人は何をしにここに来たんだ』と思ったが、自分も腹の虫が鳴っていた。食欲に抗えず、リンの提案に乗ることにした。


「どうもどうも~、お店入るよ~」


 リンがいつもの調子で店内にはいる。


「あれ!かわいいお嬢ちゃんがお二人で珍しいね」


 いかにもな好々爺が店の奥から出てきた。

 きっと美味しいものを作る人だとルーファーは直感した。


「まあね~、たまにはこういうところにきてスリルを味わいたいんだよ~」


「ははは、確かにスリルは、あるな。というかスリルしかない」


「ハハ、だよね~」


 リンは初対面でも打ち解ける底なしの明るさがある。ルーファーは少しだけうらやましく思った。


「ルーちゃん、何食べる?私は、ふるさとスープとでっかいパン!」


「私もそれで」


「おじさん、そういうことでお願い」


「はいよ、ちょっと待っておくれ。美味しくするからよ」


 『どうせ作りおきなのに、どうやって美味しくするんだ』とルーファーは思ったが、腹が減っているため喉を鳴らしていた。

 待っていると、好々爺が一つのセットをお盆に乗せて運んできた。湯気がたち、食欲をそそる匂いが鼻をついた。

 リンに先に渡した。


「先食べて、あったかい方が美味しいんだから」


「いいの?ルーちゃん大好き!それじゃ、いただきまーす!」


 リンは目を輝かせて、スプーンでスープをよそった。


「う~ん、絶品!最高の味だ、ここは将来の名店だ!」


 頷きながらリンはほおばって食べている。

 ルーファーの分も運ばれてきた。相変わらず美味しそうな見た目である。


「水を入れるの忘れてたよ、ちょっと待ってね」


 好々爺は、店の奥に消えた。

 ルーファーも美味しそうなスープにスプーンを入れ、少し持ち上げて、そのスープの赤い輝きに目を奪われた。

 すると店の入口から大きな『バサバサッ』という羽音が聞こえてきた。

 ミカゲであった。するとミカゲは、突進するようにこちらへ飛んできた。

 思わずルーファーは、スプーンを落とした。


「食うな…静かにリンを連れて出ろ、すぐにだ!」


「ガタンッ!」


 リンがスープをひっくり返し、机の上で突っ伏している。


「ちょ、ちょっと…リンさーん…」


 ルーファーはリンの肩をつついた。しかし、リンはびくともしなかった。


「抱えて逃げるぞ!はやく!」


「え、ほんとに?」


「ほんとだ、手遅れになる前に」


 ミカゲの様子がただならない様子であるため、ルーファーは戸惑いながらも覚悟を決めた。

 そして、すぐさまリン側へ回り、リンのことをおんぶした。力が入っていないため、ずっしりとした重みを感じた。


「よし、行くぞ!」


 ミカゲが入り口方面へ飛んで行った。


「おい、どこへ行く?」


 背後から声がした。先ほどの店主が水を持って立っている。


「おじさん、ごちそうさま。お金は今度ね」


 ルーファーはリンを抱えながら急いで店の外に出た。


「てめえら食い逃げする気か!、だれかそいつらを捕まえてくれー!」


 好々爺が叫びを上げた。

 すると物陰から何人かの男がでてきた。手にはナイフや縄を持っている。そして、まっすぐにこちらへと突っ込んできた。ルーファーは、このリンを抱えている状況では逃げきれないと思った。


「早く逃げろ、できるだけ遠くにだ!」


 ミカゲが男たちとルーファーの間に割って入った。


「ミカゲは?」


「俺は適当にこいつらをやり過ごしたら、飛んで逃げられるから大丈夫だ」


 するとミカゲが足につけた剣で男たちに立ち向かった。

 ルーファーは瞬時に男たちとは反対側に向きなおし、できるだけ全力で走った。

 複雑に入り組んだ小路を右に左に進んだ。

 そして、地下街の繁華街を抜け、らせん状の階段を何層にもわたって降り続けた。

 足と腰が悲鳴を上げているのが分かった。それでも止まることなく進んだ。

 しかし、足が限界を迎え、力が入らず転んでしまった。


「はぁはぁ…もう、むり…」


 息が切れ、体力も底をついていると感じた。

 壁に腰かけて、リンを下ろした。そして、ゆっくりと息を吐いてリラックスした。

 ルーファーは、疲れた体でふと回りを見渡すと、自分たちは巨大なトンネルの中にいるのであるとわかった。

 ところどころにオレンジ色の灯がついていた。


「リン!起きて」


 ルーファーは、リンの頬を優しくたたきながら、肩もゆすった。


「ふぁあ?」


 まだ眠気に襲われているようだった。

 このまま毒か何かで死んでしまうのではないかと思い、ルーファーはリンの喉に指を入れた。


「ウッ…ゲェェッ!」


 リンは苦しみながら先ほど食べていたものをかなりもどした。

 そして、意識がもうろうとしているリンの口に水を流しこんだ。だが、こんなボロボロの二人では、いずれ見つかれば必ずやられるとルーファーはわかっていた。


『ごめんね、リン。無理やりだけど助けてもらうね』


 ルーファーは、リンの力がやはり必要であると感じた。女子の太ももに傷をつけるのは気がひけたが、せめて目立たないようにと履いている短パンを少しだけめくり、小さく針で傷をつけた。

 そして、そこへ封樹(エル)の液体を流した。ルーファーはリンが封樹の戦士(エルズ)であるかについて確信していたわけではなかった。しかし、ダンからこの封樹(エル)の液体が入った小瓶を渡された段階で、一つの可能性として理解していた。

 すると徐々にエメラルドの粉末がリンの体を取り巻き始めた。ルーファーはほっとした表情で、リンの意識が回復するのを待った。

 すると、30秒も経たないうちに


「ここどこ?」


 リンが目を覚ました。


「地下街!」


 ルーファーは思わず大きな声を上げて答えた。


「はは、ルーちゃんボロボロ。てか、何で私の周りにこれが?」


 リンは、体を取り巻くエメラルドの粉末をぼんやりと眺めている。


「リン、眠らせられたのよ。そして、そのあと店の外で何人かの男に襲われた。要はあの店は私たちを狙っていたのよ」


「ルーちゃん、あの店は私がおいしそうだと感じて、たまたま入った店だよ。まさか」


 リンは笑って答えた。

 ルーファーもそうは感じていた。何かに化かされているのか、それとも偶然奴らの仲間に眠らせられたのか、ルーファーにはわからなかった。


「とりあえず、移動しなきゃ!奴らが来る!」


 ルーファーは気持ちを切り替えて、自分たちの状況を整理した。


「そうね、私はかなり大元気!!ルーちゃんごめんね、助かったよ」


 リンは元気に立ち上がり、座っているルーファーに手を差し伸べた。

 その手をつかみ立ち上がると、トンネルの奥から巨大な何かが来る音がした。

 その音の先を眺めると明るい光が飛び込んできた。

 トンネルの端に寄って、リンとルーファーは手で光を隠した。


「商戦車⁉」


 リンが思わず声をだした。

 ルーファーは、リンの口を急いで塞いだ。その車両の通り道には、商戦車特有の通り道にエメラルド色の粉末が浮遊しているという特徴が出ていた。しかし、ルーファー自身もなぜここに商戦車が走っているのかがわからなかった。


「商隊がこんなところで何をやってるんだろう」


 リンもどうやら同じことを感じているようだった。

 商戦車は封樹の力(エルマ)で走る車である。大量の封樹の力(エルマ)を使ってかなりのスピードなどが出せる。そのため、国としては封樹の力(エルマ)を大量に使用する車を一般では使用させることができず、商隊のみに使用を許すこととなっている。つまり、私たち以外にも地下街で何か活動をしている商隊があるということになる。


「こんな地下街での活動…なんか気になるね」


「ちょっと行ってみよう、ルーちゃん。私たちの調査と何か関係があるかも」


 ルーファーもリンの言っていることが正しいような気がしていた。

 そして、車両の通り道を二人で追いかけた。


「なんか、人の声が聞こえる…」


 トンネルが緩やかに曲がっていて、先が見えないが奥から声が聞こえた。リンとルーファーは屈みながら進んだ。


「なにあれ…たくさんの奴隷?と、あれは封樹の剣…?」


 視界の先ではボロ着を着ている男が沢山おり、男たちが封樹の剣を一つ一つ箱から出して、鞘にはめている。そして、明らかに身なりの違う者たちがこのボロ着の男たちを見張っていた。


「う~ん、封樹(エル)の剣は見つけたけど、ここがタカンのアジトである証拠にはならないよね~」


 リンは『地図の場所はここなのかな~』など言いながら、自分の体に地図がないかを探っていた。

確かにタカンと関係のないアジトなら、ただのならず者のたまり場である。

 すると商戦車から何人かの男が下りてくるのが見えた。


「あ、あいつ…」


 ルーファーは、以前にアルスの様子を見るために、ある男の記憶を覗いたのを思い出した。

 その時に卑しい笑い方をしていた男がまさに車から降りてきたのだ。

 そのことをリンに話すと


「なるほどね、あいつはダルムスの人間か。ダルムスが地下で怪しいことをやっているっていう段階で捜索許可が下りるレベルの話にはなるね」


 ルーファーはこのことを聞いて少し安堵した。


「おい、お前らなにしてんだ…」


 背後から声が聞こえた。


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