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11話「長すぎた一日の終わり」

主な登場人物

ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公

ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。

カレス:ベルス商議会の老議員。森の中である集団に襲われていた。

タカン:ベルス商議会の議員。王国内で悪だくみをしている噂がある人物。

~言葉~

封樹=エル。大樹のこと

封樹の力=エルマ。エルから採られて使われるエネルギー。あらゆるものへの活用がなされている。

ベルス王国=ルーファーたちが暮らす大国

 コルデン議員宅の巨大な門が見えてきた。

 入り口付近には屈強そうな守衛が沢山おり、遠目に見える邸宅はまるで王宮であった。


「とんでもない金持ちなのね…」


 ルーファーは思わず呟いた。


「結構質素な人だぞ」


 ルーファーは、ダンがまた意味のわからないことを言っていると感じた。

 するとカレスが補足してきた


「この邸宅は、元々この地域を治めていたとある王様が住んでいたところなの。

今はここら辺を警備する国の一つの拠点になっているの」


「そうなんですね…どおりで守衛が警備隊と同じ紋章をつけているはずだわ」


 諸々の手続きを行うため、ダンが車外へ出た。

 カレスもいち早く遺体の回収をしてもらうため、警備隊の方へ向かった。

 そして、再び車両が宮殿のほうへ向かう。


「何度来ても、でかいな」


 ダンがドアを開くと、赤じゅうたんのホールには巨大な階段がでてきた。警備隊の一人が『少々お待ちください』といって、どこかへ消えた。

 すると、階段の上から浅黒の巨大な体躯の男が現れた。


「コルダン議員!」


 ダンが大きな声で巨大な男に呼びかけた。


「おー、ダン!」


 その巨大な男は声も低く、頭もスキンヘッドで、ルーファーは少し慄いた。

 階段をゆっくりと降りてくる。


「カレスも無事そうで良かった、話は聞いたぞ警備隊にちゃんと回収に向かわせたから安心しろ」


「申し訳ない、私のせいで」


 カレスは申し訳なさそうな顔をして謝った。

 コルダンも同情するような表情で見つめていた。


「まぁあの地域は特段警戒地域とかでもないからな。直接お前を狙ったものだろう」


「検討はついているのよ」


「タカンか?」


「そうね、まず間違いないわ」


 カレスは大きく頷き、険しい表情をした。


「厄介な奴に狙われたな。封樹(エル)の利権は面倒ごとを引き起こす、まぁ今は一旦ゆっくりしろ。そういやダン、お前の用件もタカンだよな」


 コルダンは、大きな体をダンのほうに向けた。


「そうです。アルスの話などを総合して判断すると、今度来るキース様を狙っているのはタカンとダルムス共和国です。なかなか後手に回ってしまい対応に苦慮しています」


 ルーファーはやたらと丁寧な口調をしているダンを気味悪く感じたが、ダンはいつも通りという表情をしている。


「おおむね予想通りか、だが状況が思った以上に芳しくないな。いったん状況を整理しよう」


「はい」


「ところでその嬢ちゃんは新団員か?それともカレスの孫か?」


 コルダンはルーファ―の方をぎょろりと見つめた。


「いえ、本件の協力者です。話を聞かせても問題ございません」


「なんだそれ、不思議な物言いだな。ま、ダンがそういうなら、大丈夫か。悪いが会議室までついてきてくれ」


 ルーファーは顔を引きつりながら3人の後ろについていった。


 3人の話し合いが行われたーー

 ルーファーは、一通りの会話を聞き大体の状況を把握できるようになった。

 どうやら今度来るお偉いさんの『キース』は、ベルスと同盟関係にある『ベクタード』と呼ばれる小国の国王であった。そして、その命を狙っているのがベクタードと長年敵対状態にある『ダルムス共和国』の連中であった。

 今回特にダルムス共和国がキースの命を狙うのには理由があった。ベクタード領内の封樹(エル)の採木権をベルス王国に譲るからである。開発するには小国の力では難しく、ベルス王国の力を借りて共同開発で利益を得る算段らしい。その採木権を譲るにあたっての契約を行うためにキースはベルス王国へやってくるらしい。ダルムス共和国にとって今回の採木によってベルス王国の国力が向上するのを避けたいのである。


「ダルムスはお前も知っているだろうが、ベルスの超敵対国だ」


 ダンは、ルーファ―にも時折話を振ってきた。

 ルーファーも少しは知っていた。ベルス王国の北側で国境を接する敵対国である。ベクタードはその国境沿いの山間部にひっそりと存在している小国なのである。ダルムス共和国にとって今回の採木によってベルス王国の国力が向上するのを避けたいのである。


「ここは、必死に止めに来る。キース様の命を守ることは当然だが、採木中も最悪ベクタード領内で開戦なんてこともあるな」


 コルダンは険しい表情をして言った。

 カレスも同様にこれから起こりうることを想定しているようであった。

 

「そうね、何としても防がないと…」


「タカンの奴は商売仲間を守るためにキースを狙うということだな」


「はい。タカンは、王国北側に自分の商売範囲がございます。ベクタードとも盛んに交易しております。ベクタードの重役とも仲が良いらしく、もはや敵国の人間といっても過言ではありません。キース様は、ワンマン国王で政すべてに関与し、決定します。キースさえ殺せば…っていうところでしょう」


 ダンも報告口調ながら語気を強めている。

 ルーファーは仮にも議員であるタカンに対してかなり強い物言いをするものだと感じた。

 それほどこの二人の議員は信頼に足るのだとも同時に感じた。


「貿易自体は禁止していないからな、こういう連中も生まれてくるな」


「なんとしてもタカンの陰謀を防がねばならないわね」


「だが、今のままでは別段タカンがやっている決定的な証拠はない。しばらくはこのまま証拠集めをするしかないな」


 その後も今後の方針が話し合われたが、ルーファーは蚊帳の外であった。

 時折、窓の外を眺めて天気の具合を見ていた。雨が強くなっているのが分かった。

陽もすっかり沈んでいる。長い一日が終わろうとしていた。


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