9話「命のはばたき」
主な登場人物
ルーファー・カリン:記憶を読み取る特殊な能力を持つ少女。この物語の主人公
ダン:ベルス第一商隊の隊長。ズボラな適当人間。銃身が長すぎるライフルを武具にしている。
~言葉~
封樹=エル。大樹のこと
封樹の力=エルマ。エルから採られて使われるエネルギー。あらゆるものへの活用がなされている。
封樹の戦士=エルズ。エルマを用いて戦う人間。
鈍い銃声が鼓膜を押してきて、反動で腕がとばされそうになる。商士学校で扱う銃のそれとは威力が違った。
ルーファーは弾丸があの男の進行方向と重なることが分かった。
そして、すぐに弾丸が男の位置と重なる。
男を囲っているエメラルド色の粉末と弾丸の干渉が始まった。すると弾丸の速度がみるみる減衰していく。
あっという間に威力がなくなった弾丸は、男に「コツン」とぶつかった。
「あ”~?だれだ~?」
男は、右斜め後方、ルーファーの方向に首をぐるりと巡らせて睨んだ。
すると男は、またしても体の向きを変えて、ルーファーの方へ突進してきた。
ルーファーは商士学校の知識で知っていた。封樹の戦士に通常武器の攻撃はほとんど有効性がないことを。
体を取り巻く粉末が、その威力をほとんど奪ってしまうのだ。
しかし、ルーファーは条件反射的に発砲してしまった。
ルーファーはこの後起きるであろう最悪の事態を悟り、茫然自失となった。
「逃げろ!!」
ダンも大きな声を上げながらこっちへ突っ込んできた。
ルーファーは、その声に我を取り戻した。そして走って逃げ始めた。足は震えている。肩は先ほど銃を撃った反動で硬直しているのを感じた。
木々を抜けていくと急に斜面が表れて、バランスを崩しそうになりながらも急いで下る。
ルーファーは振り返らなかったが、すぐ後ろまで男が来ていると直感した。
すると目の前から巨大なフクロウが、ブワッと斜面を滑空しこちら側へ上ってくる。
やたらと長い棒状のものを咥えているのが分かった。そしてルーファーの足元に紙で包まれた謎の球体を落とした。
『ザザッ』後ろの茂みが大きく揺らいだ。
「知られると色々ややこしいんで、見物人は死んでくれ」
男が姿を現した。ルーファーは、男が後ろに来たことに気付かなかったため、ハっとした。
「オラァ!!ぼーっとすんなぁ!」
男が切りかかってくる。
ルーファーは避けようと後ろに下がろうとすると、木の根に足が引っかかる。
思わず体勢を崩し、転げる。横目に、フクロウが落とした球体が転がるのが見えた。
「運がいいなあ。オラぁ!!」
ルーファーは、この時突然母のことを思い出した。『お母さんは強い人だからな』とルーファーの父が言っている情景が浮かんだ。勇敢さなど持ち合わせていないルーファーだが、その父の言葉で心には力がみなぎってきた。
男が更に追撃をしに、剣を振ってきた。ルーファーは、無我夢中で謎の球体をつかみ、男に向かって投げた。
すると真っ白な粉が舞った。
思わずルーファーとその男はむせて、大きな咳をした。
その瞬間
「ドォンッ!!」
地面が揺れる。男の体勢も崩れた。男の体と左腕が分離して、それぞれが宙に浮いた。
ルーファーもあまりの勢いに、更に地面を転がった。
「お、当たった?当たったよね!今日調子いいかも!」
腹の立つ大声がするとルーファーは思った。
撃たれた男は、左腕側の胸の部分がえぐられている。もう絶命していることがわかる傷である。
ダンがゆっくりと『アブな』とつぶやきながら斜面を降りてくる。
そこに先ほど飛んでいたフクロウが付いてくる。
「ボロボロだな」
へらへらしながら話しかけてきた。
「おかげさまでボロボロで、死にかけたわよ」
「そりゃどういたしまして」
ルーファーは、ダンの冗談に言い返す気力すら失っていた。
自身についた土や葉をとりながら、尋ねた。
「そちらの鳥さんは?」
「こいつか?ミカゲっていうんだ。商戦車に普段住んでるんだ。今回は武器を運んできてくれたが、モノを届けたり、色々やってくれる仲間だ」
「助かったわミカゲ。何かエサを買ってあげる」
ルーファーはミカゲなる鳥を撫でようと立ち上がろうとした。
「なめるなガキ」
「え?」
「エサごときでなびくとおもうなよ」
フクロウがしゃべりだした。このことにルーファーの思考が停止した。
「ちなみにミカゲは普通に話せるぞ」
ダンが冷静にミカゲの紹介をし出した。
ルーファーは苦笑いを浮かべた。
「あ~、えー、そう。よろしくね。そして色々ありがと、ミカゲさん」
「ああ」




