プロローグ「ここまでとこれから」
王国ベルスーー封樹の力の利用で長い間の繁栄を築いてきた王国である。
封樹の力ー商売、軍事、宗教などあらゆるものに関わる大樹のエネルギーである。この封樹の力は人々の発展に寄与すると共に、封樹の力の獲得が国家間のバランスに緊張を与えるものであった。
「ルーファー、卒業おめでとうございます」
その言葉を聞いた瞬間、ルーファーの息が数秒とまった。
椅子と机から体が徐々にほどかれていく感覚に陥った。
そして、肺に詰まった空気を静かに吐き出した。
「ッハァー、やっとか…」
喜びというよりは、安心した気持ちがこみあげていた。
首都にある『エル商士学校』に入学して5年目での卒業。気づけば17歳である。一般的に3年で卒業できることから考えても、ルーファーは明らかに落ちこぼれた側である。
入学時は「真面目な女学生」としてふるまう覚悟をしていたが、いつしか怠惰になっていった。卒業が遅れたのは、当然であるとルーファー自身は自覚していた。
一人そんな物思いに耽りながら、他の学生も淡々と呼び出されていくのを聴いていた。
「にしても卒業する人少ないなぁ。卒業するの厳しくしすぎだよ…」
悲喜こもごもの教室で、捨て台詞のようにつぶやいていた。
すべての卒業生が発表された。流れ作業のように証書授与の準備が始まる。
卒業できなかった学生は、とぼとぼと教室の外へと向かっていく。
ルーファーの名前が呼ばれた。
姿勢を正し重い腰を上げた。思った以上に足取りは軽く、カエシ先生のいる教壇へと颯爽と向かわせる。
「よく頑張ったね。改めておめでとう。証書の裏にあなたを獲得したいという商隊が記載されているわ」
「ありがとうございます先生。いろいろお世話になりました。」
終始儀礼的な態度で自席へ帰ってきた。
卒業の文言と形式的な文字列を確認し、ゆっくりと裏面を確認した。
「ベルス第一商隊…どこ⁉」
思わず周りも見返すほどの声で口に出していた。
その後3周ほど見返したが、全くどこの商隊なのかわからないないまま証書を畳んだ。
「まぁ、どこでもいいかぁ」
ルーファーには、稼げさえすればどこでもいいと心の底から思っていた。
母が暮らす異国へ向かうには通常の稼ぎでは下手したら一生無理とわかっていたからである。
「お母さん元気かなぁ…早く会いたいなぁ」




