第5話:境界に揺らぐ街
銃声と叫びが交錯する廃ビルを中心に、街の景色がぐにゃりと溶け出していった。
住宅街の街灯が、異形の赤い目のように点滅し、アスファルトが影の波に飲み込まれていく。
「——これが、夢と現実の融合……!」
マコトが絶望の声をあげた。
ビルの外にまで異形が溢れ出す。怯える住民たちが窓から顔を出し、悲鳴が響いた。
「チッ……ここで止めなきゃ、街ごと呑まれる!」
ハヤトが銃を構え直す。
蓮は汗をにじませながら短剣を強く握りしめた。刃はまだ赤い炎を宿している。
(俺が……止めなきゃ……!)
——そのとき、仮面の男の声が頭の奥で響いた。
『見えるか? お前は力を持っている。だが、それは夢の力だ。現実に戻れば……誰も救えない』
「黙れ!」
蓮は頭を振るが、再び脳裏に映像が差し込む。
——泣き叫ぶ子供の姿。
——その横で、虚ろな目をした大人が影に飲まれていく。
「これは……現実の……?」
カナメが冷静な声で遮った。
「蓮、惑わされないで! 目の前にいる仲間を守ることに集中しなさい!」
彼女の一言で蓮の意識は繋ぎ止められる。
「……ああ、わかってる!」
ユイが前に飛び出し、光弾を放つ。
「ここは私たちが守る場所! 行くよ、みんな!」
光が仲間の身体を包み込み、傷ついた身体を癒す。
ハヤトは二丁拳銃を乱舞させ、カナメは狙撃のような正確さで異形を撃ち抜き、
マコトは携帯端末を操作しながら異形の出現パターンを解析し、次々と指示を飛ばす。
「右側の路地に集中してる! あそこを突破すれば押し返せる!」
蓮は短剣を構え直し、仲間と共に前進する。
影の怪物たちが群れをなして押し寄せる。
「来い……!」
刃が赤く閃き、夢と現実の狭間を切り裂いた。
——その背後で、仮面の男が薄笑いを浮かべていた。
「いいぞ。もっと力を使え……お前が選ぶのは、夢か、現実か——」
街とビルがきしみ、戦場は混沌の渦へと沈んでいく。