六、本当の性格
第六話です!
「あー疲れた」
爽は色っぽい仕草で髪をかき上げる。
「爽やかですね」
海蘭がニヤッと笑顔を浮かべる。
「疲れたと言っているのに爽やかはないだろ」
「名は体を表しますね」
爽は吹き出す海蘭を冷めた目で見た。
「表さない!」
「その姿、華楊にも見せたらいかがですか?」
「なぜ、そんなことをしないと…」
声色がいつもよりも優しく、柔らかい。
いつもの冷たい感じとは正反対だ。
「うちの妹…猫被りまくってますよ。あの状態を続けたらいつ爆発するか…。それに、冷たい時よりもモテますよ?その爽やかな方が」
爆発したら、兄に似て怖そうだ。
て言っても猫被り…本当の姿は一体どんなのだろうか。
「気になる…」
思わずボソリと呟いてしまったのだが、見事に聞こえていたらしい。
「え、もしかして華楊がですか?娶ってしまいます?」
「お前…性格変わったな」
その発言につい、家での性格が出ていることに気づいた。
今までもボロは出したことがなかったのに。
少し反省する海蘭。
「失礼しました」
___華楊の部屋にて___
「は?皇帝が私を気になる?意味が分からない」
「お前の素が見てみたいそうだ」
仕事が終わった後、海蘭は華楊の部屋を訪れていた。
「訳がわからないな」
「皇帝に気にかけてもらえるなんて喜ばしいな」
「何を他人事のように。后になど、なるつもりはないわ」
ツンッと華楊は言うが、実際爽はどんな感情を浮かべているかは知らないが気になっている。
妃としてはこれ以上なく嬉しいことだ。
なのに嫌がる華楊はつくづく護衛向きだ。
「兄貴が仕事をとるせいで私のやることがない」
「妃としての仕事をすれば良いだろ」
簡単なことではないのに。
皇帝となんらかの関わりを持つと大変なことしか起きない。
それに夜の護衛はやっぱり必要になるだろうから、海蘭が見張りになってしまう。
自分の兄を夜伽中の護衛につけるのは絶対に嫌である。
「ま、あの方もまだ素を見せきれてないようだからな…」
小声でひとりごちた。
時間がかかるなぁ、と本当に他人事だ。
「兄貴、後宮の事情を弄ぶでない。不謹慎だ」
「分かっている。何より弄んだ記憶などない」
すると、部屋の外から足音が聞こえる。
「皇帝だ」
華楊はすぐに気づいた。
護衛対象の足音を覚える。
それが、護衛の基本だ。
敵と味方の足音は見分けないと不意打ちされる。
細かい癖でも覚えるのは大切だと小さい頃から叩き込まれた。
「起きてるか?」
「はい」
そう答えると爽はすぐに入ってくる。
「なんだ、海蘭。お前もいたのか…」
あからさまに嫌そうな顔をする。
もちろん、空気を読めないわけではないのですぐに退出する。
後は、皇帝と妃の時間だ…。
「粗相のないように気をつけろよ」
妹に労いを入れると海蘭は部屋を出た。
“我が家”のためにも頑張ってもらいたいところだ。
ありがとうございました!