三、夜の護衛
第三話目になりました。
「だから、気にするな…と」
爽はそんな風に言うが何かあってからでは華楊が責められるのだ。
「大丈夫です。こう言う危険な勘はよく働きます故…何か起きるでしょうから」
全く大丈夫ではないことを言ってのける華楊。
本当に頭のネジが外れているとしか思えない。
「ならば、私の安全は任せる。それよりも今から妃の元へ行くんだが、護衛ならついて来い」
他の妃の元へ行くのに妃を連れて行くとは普通考えられないが、そもそも華楊の立場が普通の妃ではないため何も不思議なことではない。
「分かりました」
今日向かうのは四夫人の一人だそうだ。
正直、妃たちと馴れ合う気はない華楊は名前すら覚えようとしない。
その妃の宮へ着いた時、侍女が部屋まで案内してくれたが、華楊のことは睨むような目で見ていた。
それも仕方ない。
仮にも華楊は妃だ。
宮に入られるのは嫌で仕方がないと思う。
「お前はここで待っていろ」
言われなくとも。
皇帝と妃がしっぽりしているところで平然と見張りをできるはずがない。
出来れば喘ぎ声さえ聞きたくないのだが…。
部屋の前に立っている手前、それは無理だろう。
___それから数時間後___
「眠い…」
一人で護衛とはかなり重労働だ。
それを一人でこなしていた海蘭は凄いと思う。
あくびを噛み殺しつつ、まだまだ暗い中で光が灯る窓を見る。
この光を使って本でも読もうか。
暇すぎる。
皇帝が部屋に入ってから、部屋からは何も聞こえてこない。
囁くような声も聞こえないので何をしているのかと思う。
ただ単に防音なのかと思う時もあるが物音は聞こえる。
中で何をしているのか気になる。
いや大方予想はつくが…。
もしかしたら、毒でも盛られて倒れるかもしれない、その確認ということで中をのぞいても良いはず。
相当無理やりな言い訳を用意して、窓から中をのぞいて見ることにした。
(それに皇帝の閨ってなんか凄いの見れそう…)
ゆっくり、音を立てぬように窓を開けて行く。
あと少しで中が見えそうになった時、窓の隣の扉が開いた。
そして、そこからは鬼の形相をした爽が出てきた。
「何しているんだ?お前は」
「い、い、いえ、その…」
人の閨を覗き見ようとするなんて人として最低な行動を取っているのは自分でも理解してるが故に反論の余地もない。
「お前、人の閨を見るのは流石にやめた方がいいぞ。護衛でも流石に許されん」
ピシャリッと勢いよく扉を閉めた。
これは…怒らせてしまったかもしれない。
華楊は爽が入って行った扉に手を伸ばすような形で固まってしまった。
___朝___
「何を寝ている?帰るぞ」
部屋から爽が出てきていびきをかいている華楊を起こす。
「は、はい」
あくびをしながら華楊は爽について行った。
それから、しばらく皇帝の華楊を見る目つきが変質者を見るような目線に変わっていた。
ありがとうございました!