二十八、琉千峰
二十八話目です!
爽が馬を走らせること五時間。
途中、少し休憩を挟みつつ進んだ先は、隣国。
爽たちの連国を戦いに巻き込んだ張本人だ。
爽が自らここまで来たのは、戦争をやめてほしいという直談判のためだった。
もちろんただでやめてほしいとは言わない。
領地の一部を差し出すのが条件だ。
その土地は連国のものではあるが、使われておらず荒れ果てている。
そこを差し出すのだ。
「荒れている…」
街は荒れており、民の表情にも暗い影が指す。
「……国民をこんな顔にさせるなんて…」
今は同情よりも民にこんな顔をさせるこの国の頂点に失望した。
「いや、そんなものとっくの昔にしていたな」
この戦争が始まるずっと前、あれは爽が十七歳の時…つまり爽が即位して間もない頃だった。
___8年前___
「爽さま、お休みになられてください」
部屋には激しく咳き込んでいる爽がいた。
海蘭はその頃から爽に仕えていたのだが、その頃の爽は病弱で医官が住み込んで看病しなければならないほどだった。
「…ダメ…だ、ゴホッ、俺が、ゲホッ…しないで、ゲホッ…誰がするんだ?」
弱々しい声で爽は言う。
即位したての爽は書類仕事だけで手一杯だった。
だから、さらに無理をして体を壊していた。
「それは他のものがしますから…」
「皇帝ではないと許可できない内容もあるし…何より…妃のもとへ行かないと」
お茶を飲んだことで少し楽になったらしく体を起こしても咳が悪化しなかった。
「そのような状態で来られても妃が困るだけですよ」
正論…だけど、
「この国の未来を琉千峰には任せられない…」
琉家の戦略官として有名な琉千峰は爽に嫌われていた。
何故かというと…千峰は今まで後宮が出した軍…つまり禁軍の戦略を考える仕事をしていたのだが、その全ての戦略が謀反を疑われても仕方がない綱渡りのようなものばかりだった。
結果としては謀反は起こってない。
だが、あの千峰のことだ。
部下に嫌われ、仕えている者たちには手を上げ、と散々倫理観に欠けることばかりして来た。
あの卑しい醜悪な笑みを思い出すだけで腑が煮え繰り返る。
「…国を乗っ取られないように…ゴホッ、俺が…今のうちからしっかりと、、」
そこまで言ったところで爽は気を失った。
「…また、気を…失った…みたいだな」
爽の体は今とてつもなく重かった。
まるで自分の体じゃないみたいに動かせない。
すると、扉を叩く音がして侍女が薬を持ってやって来る。
「爽さま…しっかり休んでくださいませ」
「…みんなして、同じことを…」
「それは心配してる証拠です」
侍女が差し出してくる薬を飲むとふっと眠気が襲って来たがそれに抗えるだけの気力は今、持ち合わせていなかった。
と、その時皇帝がほぼ私室から出られないことをいいことにとある人物は動いていた。
「今が機会だ」
その人物、琉千峰の後ろ盾となる可樹は忍び笑いを零したのだった。
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