二十、過去の話
二十話目です!
___あれは三年前のことだった。
華楊はいつも通りに護衛の仕事を引き受けることになった。
今回の依頼は琉家と言われる家のご子息の護衛だそうだ。
要人の護衛には一層乗り気になる華楊はその時、とても喜んだ。
住み込みで護衛をすることになり、とても大きな部屋を与えられた。
分不相応な待遇に疑問を持ちつつ、華楊は仕事に集中することにした。
「千峰さま。何か御用でしょうか?」
いきなり、主人に呼ばれて部屋に行くと整った顔に気障な笑みを浮かべている主人の千峰がいた。
「お前、この毒について知っているか?」
「?」
首を傾げつつ、千峰が見せて来た紙を見る。
「一滴で致死量に達する毒ですよね。知っていますが、どうかしましたか?」
華楊が尋ねると千峰は険しい顔で言い放った。
「お前、毒を盛っただろ」
何を根拠に言うのだろうか。
証拠は?
華楊は眉を顰めて千峰を見る。
顔では悲しそうな顔をしているが、中身は何か企んでいるような男だ。
腹黒主人についてしまったのは、仕事だったので仕方ないといえ不運だ。
「俺の今朝の飯に毒が入っていて毒味が倒れた。それと、調理場からお前が出て来たと言う証言もある」
見間違いが大嘘だ。
というか、そんな証言でっち上げではなかろうか。
今朝はずっと私室か、ここの部屋くらいにしか来ていない。
「あんな良い部屋まで与えられて、分不相応な上に主人に毒を盛るとは…このクズが」
分かった気がする。
あれだけ、対応が良かったのも華楊を指名した理由も全て。
きっと、この分不相応と思われる対応はここの侍女たちがしたことではなかろうか。
今まで、この千峰の護衛をしてきた人たちはこの理不尽な扱いですぐに辞めてしまったのだろう。
だが、この千峰はすぐに刺客に狙われる。
主人を失えば、働くところもない。
だから、多少待遇を良くしてでも辞めて欲しくなかった。
そして、華楊の噂はお偉いさんの護衛だとより一層やる気が出るというもので、その執念で辞めないのでは、と。
「俺は後宮の軍の戦略を考え戦略官だ。そんな地位についている俺の護衛をできると言うのに…お前は馬鹿だな」
馬鹿はそちらだ。
華楊の人間性を分かっていない。
従連家の本来の仕事は皇帝の側近として働くこと。
だが、華楊は女で側近になれないと言われて来た。
だから、後宮に関わる人たちの護衛を引き受けたのだ。
なので、正直一人の主人にこだわる必要はない。
それが皇帝だとしても、必要としてくれているほかの人のために働く。
華楊は一人の主人に執着しない。
「そうですか…では、辞めさせてもらいます」
あっさりと言う華楊に千峰は驚いた。
きっと、泣きながら続けさせてくれと言うとでも思ったのだろう。
「要らないのか?今の立派な部屋が」
「私は派手、地味で左右されませんので。住めたらどこでも良いです」
「今の食事は?」
「貴方、私を辞めさせたいのではなくて?」
その言葉が逆鱗に触れたらしく、千峰は勢いよく立ち上がり、ズカズカと近づいてくる。
…馬鹿だなぁ。
華楊の目の前まで来た千峰は手を振り上げた。
そして、その手が華楊に触れる前に華楊はその手を止める。
「私は護衛ですので、ある程度強いです。歯向かうだけ無謀かと」
運動不足なこの主人は自分の身の安全は全て護衛に任せきりだった。
なので、華楊は勝てる。
千峰がそれでも更に攻撃を加えようとするので、それを防ぎ、華楊は千峰を気絶させて侍女に任せて護衛を辞めた。
___現在___
「と、いうことです」
「主人を気絶…」
爽に引かれている気がする。
だが、危険な主人からは早く離れた方が良い。
「琉家の息子の千峰っていうと、ちょうどそれくらいの時期に解雇されていたな」
「その後、また事件を起こしたようで」
その千峰が今回の刺客たちを送ったのだとしたら、矜持を侮辱したと言う理由だろう。
どんな矜持があるか知らないが、理不尽な男だ。
「主上、私の厄介ごとに巻き込んでしまい申し訳ないのですが…」
「二人で一人の護衛だろ?」
ニッと口角を上げた爽だった。
ありがとうございました!!




