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十五、刺客…犯人編

第十五話目です!!

___とある日の昼下がり___


「犯人は、あの店に出入りしていた人間で決まりですね」

華楊は断言した。

証拠はない。

雰囲気と話だけだ。


だから、その証拠を探さないといけない。


「どういう理由で後宮の人間を狙っているのかは分かりません。なので、私も刺客になろうと思います」


話についていけない爽は無言のまま唖然としていた。


刺客を見つけるために刺客になるなんて、どういった思考回路なんだろうか。


「やはり、私は潜入捜査が大好きみたいです」


「危険じゃないのか?」


「バレれば殺されますが、バレなければ殺されません。いわゆる危険というのは自分の演技力次第かと」


突飛な行動に、自分の危険を自分の力量次第だと割り切る姿勢は心配になってくる。

爽は椅子から立ち上がって、華楊のもとに歩み寄った。

「お前は護衛だが、妃でもある。危険すぎる行動は許可できない」


「妃以前に護衛です。それに、仕事を全うするのは私の信念ポリシーですから」



「潜入捜査はどこでするんだ?」


「もちろん、あの店の裏の人たちにお願いします。ここでとある噂を聞いたのですが、私も仲間入りしたいです、と」


「私の、護衛の最高な勘を信じて待っていてください!」

爽の手を取り、ニコッと笑う。

そのあどけない笑みが可愛くて爽は思わず、頬を微かに赤くした。



「…待っておく」


許可を得た華楊は意気揚々と潜入捜査に出かけた。




___潜入先の店___


「仲間に入りたい?お前は何の恨みがある?」

あらかじめ用意していたセリフを言って仲間に加わりたいと言ったあと厳つい男が言ってきた。



「それを…聞きたいですか?」



見たことないほどの醜悪な笑顔で男にそう言った華楊。

男は怖気付いたようで首を横に振った。



「なら、私も加えていただきたい。こう見えて役に立ちますよ?」

細身の華楊が言うと説得力がない。



「本当か?」


背後の客が立ち上がる気配がして、ごく自然に避けて後ろから凄い勢いで突き進んでくる槍を避けた。



その槍は華楊の一直線上にいた男に刺さりそうになるが男はそれを素手で掴んで壊した。



「その瞬発力は魅力的だな。度胸もありそうだし、加入を許してやろう」

あっさり…。


なかなか簡単に潜入できそうではないか。


華楊は楽しみになり、ニヤけてしまう。


度胸もありそうだが、それ以上に何か周りが恐怖になりそうなものを感じた。



店の奥に行った華楊はそこで驚いた。

なぜなら、そこにはさまざまな凶器と共に老若男女問わずたくさんいたからだ。


通りで統一性がないと思った。


「新人さん、貴方まだ若いわねぇ」


三十路くらいの女が言う。

「えぇ。ですが、強いですよ」


ここは、しっかりと言わせてもらう。

実際、強いから。


「さて、最初は誰を狙うんですか?」

華楊は懐から小刀を取り出した。

「やる気満々だな。それなら、早速だが大役を任せてやろう」


ニヤリと口角を上げると、男はこう言った。


「…この国の皇帝を狙ってもらおうか」






___後宮の外にて___


「いきなり大役ねぇ。凄いなお前」


華楊と同じように皇帝を暗殺する役目をもらった男が言う。


「それほどでも」


まぁ、好都合だ。

暗殺するフリをして、しれっと護衛ができる。



「どこから狙いましょうか?」

華楊が尋ねる男は後宮を書いた地図を取り出す。


「ここの警備が手薄なんだ。そこを狙う」

後宮の正門からしばらく言った場所を指差す。

正門の警備が強化されている分、警備が緩くなっているのかもしれない。


あとで衛部に報告しないと。


「分かりました」


笑顔で答えると、二人はそこに向かって走った。




「足、早いな」


「ありがとうございます」


あっという間についてしまった。

警備が手薄と言っても、正門に比べたらの話だ。


二人の門番が見張っている。


「どうやって隙をつくんです?」


「俺が引き寄せるからお前が先に入れ」

それは助かる。

華楊の顔を見られると終わりだ。


従連家の妃としてどれだけ華楊の絵が出回っているか…。と言ってもそれは後宮の話なので、この刺客たちには伝わっていなかったようで助かった。



男が適当に何か言い、門番の気を逸らしている間に華楊は忍び込む。




「侵入完了!って、私の場合顔パスで出入りできてしまうが…」


茂みを利用しながら爽の住む宮まで走る。

先ほどの男は門番を撒いた頃に来るだろう。




爽には出来るだけ隙を作るようにしてもらった。

いざとなれば、自分の身くらい守れるだろうし、何より護衛が刺客だ。


手加減のしようはいくらでもある。

そういえば…と華楊は何かを思い出して、先にその用事を済ませることにした。





用事を終わらせた華楊が走っていくと、丁度爽が一人で歩いていた。

「誰だ?」

爽がわざとらしく振り向く。


「皇帝の命頂いたぞ!」


華楊もわざとらしく剣を振り下ろす。



「…っ」

爽は自分の剣で受け止めた。


「やるではないか…」


華楊のいけない癖でつい、本気を出してしまった。



「受け止めてみろ!」


「うわっ」

力強く本気で華楊が剣で切ろうとしてくるので、爽は慌てて交わした。

そして、華楊の血走った目を見て思った。


今はヤバい…と。



「なかなか面白い!」

風切り音を鳴らして剣が顔面寸前を通過していく。


首を切るような体勢になったので、爽はしゃがんで避けた。

だが、そのしゃがんだ体勢を予想していたのか刃は爽の首に目掛けて飛んでくる。




「…っふぅ」

間一髪で爽は剣で抑えた。

刃先が傷ついている。


それだけの威力があった。

爽は力尽きて床に座ってしまった。


「新人、やるなぁ!」


門番を撒いて来たのか、塀の上から男がやって来た。

そして、地面に降りる勢いを利用して爽を切ろうとした。


体勢を崩していた爽は避けられないと思った。



「主人は私が守ります!」

元はと言えば華楊が本気で戦いに行ったため爽が体勢を崩したのだが、華楊が横から剣を伸ばして男の剣を止めた。



「すいませんね…私、こちら側なんです」

剣を払った後、男に向かって華楊は言う。


「裏切ったのか!?」



「裏切る…そうかもしれませんね。人聞きが悪いですが」

でも、これは護衛としての使命だ。

華楊は悪くない。




「今さら、仲間は呼べないですよ。先ほど頼んでおきましたから」華楊はここに来る前に軍部に頼んでおいた。


「今頃制圧済みですね」


無表情で言う華楊に怖気付いた男。



「これ以上、抵抗しないでもらいたい。後片付けが大変なので」



「…っくそ」

硬い地面に男は剣を突き刺した。



一件落着ということかな。

華楊は大きなため息をついた。



ありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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