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十一、刺客…安眠の夜編

第十一話です!

___華楊の部屋にて___


刺客…それを意識しすぎてこの頃眠れていない。


いや、一日交代で護衛をしてきたはずなのだが海蘭が何やら護衛につけなくなってしまったとのことで今、なぜか皇帝が隣で眠っておられる。


「…」


眠れない…いつも以上に眠れない。

華楊は顔だけ動かして隣を見る。


すやすやと気持ちよさそうに眠る爽は赤ん坊みたいだ。

隣にいても守れるかどうか…。


「…う、んん…」

暑さで寝苦しいのか眉間にシワを寄せた。

爽の額を拭おうとすると、暑いはずなのに爽に抱きつかれてしまった。



護衛が隣にいて安心しているのかぐっすり眠れているみたいだ。


にしても、爽は何を思って抱きしめているのだろう。

いや、何も思っていないのだろうけど…。

暑い。暑苦しい!


すると、そんな華楊から何かを感じ取ったのか爽の目がゆっくり開いていく。


「華楊…わ、悪い!」

隣で寝ている時よりもさらに近い距離に華楊がいたことによって、すぐに思考回路が繋がったようで慌てた様子で寝台の隅まで後退りした。


いつもの爽にしては珍しく可愛らしい顔で照れている。


「ようやく起きましたか…」


「…すまなかったな。ちょっとした夢を…」

その夢の内容を思い出したみたいでさらに顔を赤くした。

月明かりくらいしか光がない状態だが、爽の顔がとても綺麗で美しく見えた。


寝起きでこの美貌とは、すごいものだ。



「悪魔だった…うん、不謹慎だな」


新婚夫婦かのような距離感の二人は再度寝ようとは思えなかった。

「俺だけ寝ていたみたいだな」


「まぁ、最近寝れていなかったので」


刺客という単語ワードが頭から離れない。




「俺が見張っとくからゆっくり寝ろ。寝ないと戦えない」

「…そうさせてもらいます」


と言っても眠れない。

皇帝といえども男。殿方が隣にいる状況でそう簡単には眠れないだろう。



横になった華楊は目だけを閉じた。


「…寝れないだろう」


「……はい」



爽は毛布越しに背中を優しく撫でてくれる。


「ここは安心だ」

それは知っている…この手が安心させてくれる。



「ありがとう、ございます」

次第に眠くなってきてしまった華楊はそのまま睡魔に身を任せた。




___明け方___

「起きろ、朝だ」


爽の眩しいかんばせが寝起きの目を痛ませる。

「朝…」


久しぶりにぐっすり眠れて気分が良い。


爽はすでに着替え終わっていて、いつもの皇帝の姿だ。

「着替えるので出て行ってください」


「女性の着替えを覗く趣味はない」



爽が外に出て行った。

本来なら、一人にすることはダメなことだろうが、着替えを見られるのは流石に嫌である。



パパッと着替え終わると外で待っていた爽に声をかけた。

「おはようございます。昨夜はありがとうございました」


「別に何にも…」

昨日のことを思い出した爽は微かに頬を高揚させた。


「申し訳ない」


「そんな風におっしゃるならば今宵も抱きついてこないでください」

海蘭の帰りはまだしばらくかかるらしい。


仮にも妃だが、それ以前に護衛だと自負している。



「善処する」


「そーしてください」


軽く答えるといつもの護衛としての華楊の表情に戻る。

「護衛としてしっかり守り抜きます!」

華楊の自身に満ち溢れた声が朝の空に響いた。


ありがとうございました!

次回もお楽しみに!

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