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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
序章 廃鋼の叛逆機
3/190

(3)月機起動

 ロードラストの振動が次第に強まり、操縦席全体に広がる。ただの機械の動きじゃない。まるで長い眠りから目覚め、自らの存在を主張し始めているような感覚だった。


 背中に伝わる微細な震えが、俺の全身を包み込む。


「…これが、動き出すんだな。」


 自然と声が漏れる。目の前のパネルが薄く光を帯び、暗闇に沈んでいたコクピットが徐々に青白い輝きに染まっていく。その光は、単なる機械の発光ではなく、まるで命を宿したかのような力強さを感じさせた。


 ディスプレイに文字が浮かび上がる。


 『LUNAR DRIVE: INITIALIZATION SEQUENCE STARTED』


「…英語オンリーかよ。」


 思わず苦笑する。読める単語は「LUNAR DRIVE」くらい。でも、画面に流れる数値の変化や警告の点滅から、この機体が確実に動き始めていることは伝わる。


 喉を鳴らした。

 もし動かなかったら?

 一瞬そんな考えがよぎる。しかし、ここまで来て迷う理由なんてない。


「頼む…!」


 俺は祈るような気持ちでスロットルを押し込んだ。

 低く重い唸りが響く。


 『ブゥゥゥン……』


 足元の砂がかすかに震え、小石が跳ねる。確かな「変化」が、機体の目覚めを告げていた。胸部のパネルから溢れる青白い光が、砂浜に柔らかな波紋を描き出す。息を呑んだ。


「……すげえ。」


 俺の手で、こいつは目覚めた。

 手のひらに汗が滲むのを感じながら、操縦桿を握り直す。すると——


 『OUTPUT AT 50%. SYSTEMS OPTIMAL.』


 また英語だ。細かい意味なんて分からないが、一つだけ確かなことがある。

 ロードラストは、動いている。


 『ドゥン……ドゥン……』


 低く響く振動音が地面を揺らし、砂が舞い上がる。

 その直後——


 『ギュイィィィーン!』


 鋭い回転音が炸裂した。

 脚部がわずかに浮き、ロードラストの巨体が重心を変える。


「——動いた。」


 俺は目の前で確かに“生きている”この機体を見つめた。

 ディスプレイがさらに輝きを増し、中央に最後のメッセージが表示される。


 『MOON GEAR: ACTIVATED』


 瞬間、画面全体が青白い光に包まれた。

 轟音とともに、機体がわずかに前へ傾ぐ。

 この瞬間——俺の手の中で、ロードラストは確かに「生きている」と感じた。


 外からアヤカの声が響く。


「やったじゃん、あんた。」


 その声には呆れが混じっていたが、どこか誇らしげな響きもあった。

 俺は青白い光に包まれた機体を見つめる。


 操縦桿を握り直した。

 目の前に広がる光景が、まるで「次」を示しているように思えた。

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@chocola_carlyle

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