(2)復鋼再生
スペースポートの片隅、使われなくなったコンテナ置き場。そこを作業スペースに借りて、俺はロードラストの修理を始めた。
だが、現実は甘くない。意気込んだものの、工具の扱いすらままならず、溶接は失敗続き。継ぎ目はガタガタで、固定したはずのパーツはすぐに外れる。汗だくになりながらも、手探りで作業を進めたが、ロードラストが動く気配はまるでなかった。
それでも、こいつをもう一度歩かせたい——その想いだけが、俺を支えていた。けれど、どうやっても俺一人では無理だと悟るまでに、そう時間はかからなかった。
だから俺は、幼馴染のアヤカを頼ることにした。同じスペースポートでバイトをしているが、あいつは高専に通う本格的なメカオタクだ。知識も腕も俺よりはるかに上。何か突破口を見つけてくれるはずだと思った。
「…これさ、本気で動くと思ってるの?」
ロードラストを一瞥したアヤカは、呆れたように眉をひそめた。
「ボロすぎるし、関節部は錆で固着してる。そもそも電源周りが完全に死んでるんだけど?」
的確すぎる指摘にぐうの音も出ない。
「まあ…どうしてもやりたいなら、手伝ってあげてもいいけど?」
その上から目線にイラッときたが、正直、助かった。
そこから、俺たち二人の修理作業が始まった。放課後やバイトの合間を縫っては集まり、ロードラストの復活に没頭する日々。
最初は俺の溶接も散々な出来だったが、アヤカの指導のもと、少しずつ形になっていった。火花が散るたび、アヤカの茶色のショートヘアが一瞬きらめく。ロードラストの躯体が少しずつ修復されていくたび、胸の奥から高揚感が込み上げた。
気づけば、あの春休みから三カ月が過ぎていた。
季節はすっかり夏。ついにロードラストの初起動テストの日がやってきた。俺たちが選んだ場所は、誰もいない砂浜。もし暴走しても、最悪の場合は海に沈めればいい。
アヤカがトレーラーを運転し、ロードラストを砂浜へ運び込む。
「ほんと、助かったわ。俺一人じゃ絶対無理だった。」
「でしょ? あんたみたいなヘタレには、あたしみたいなのが必要なのよ。」
相変わらずムカつく言い方だが、否定はできない。
俺はハシゴをかけ、ロードラストのコクピットに滑り込んだ。震える手をスイッチにかける。
頼む、動いてくれ。
祈るような気持ちでスイッチを押し込むと、機体全体に低い振動が走った。
ロードラストが、目を覚まそうとしている。
ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!
@chocola_carlyle