(40)銀輪昇華
静寂が訪れる。無重力空間には音はない。ただ、爆散したテロリストの機体の破片が静かに漂うのみ。敵機の活動が完全に停止した瞬間、宇宙アリーナを包む観客席から歓声が弾けた。
音のない宇宙に響き渡る熱狂。通信回線越しに轟く興奮。その声は、まるで戦いの終焉を宇宙そのものが祝福しているかのようだった。
アリーナの片隅。アメリカチームの三人がコックピットから降り立ち、疲れた体を引きずるようにして集まっていた。ジョナサンが額の汗を拭い、苦笑いを浮かべる。
「Damn, 結局、月の男に全部持ってかれちまったな。」
サラが軽く肩をすくめ、ジョナサンの背中を叩く。
「Ha! でも、ヒーローっぽいとこは見せられたでしょ? 無人機を倒して人々を守ったってだけでも、十分じゃない?」
ライアンは悔しげに拳を握りしめる。
「Hell yeah, それでも、俺たちはまだ足りない。生き残れたからには、次のために自分も機体も鍛え直すさ! 月の奴らに勝つまで、俺たちの挑戦は終わらない!」
三人は力強くうなずき合い、次なる戦いへの誓いを胸に刻みつけた。
その時だった。
黒銀の巨体――オルフェウス・オメガが静かにアリーナの中央へ降り立つ。その動きは威風堂々としており、観客たちは再び熱狂の声を上げた。だが、その喧騒を切り裂くように、ルシウス・ヴァルドの静かで冷徹な声がオープンチャンネルを通じて響き渡る。
「テロリストは完全に殲滅された。この事件が、私個人とルナヴァルド社を狙ったものであることは明白だ。」
その一言に、観客たちの歓声がさらに高まる。しかし、ルシウスは一切動じることなく、冷静な口調で言葉を続けた。
「今回の被害については、全てルナヴァルド社が補償する。」
会場がざわめく。驚き、そして称賛の声が入り混じる中、ルシウスは迷いなく言葉を紡ぐ。
「さらに、月面大会への参加資格についても、この状況を踏まえた調整が必要だろう。これまで入賞者のみに与えられていた資格を、ベストエイトに拡大することを私は提案する。」
会場全体が驚きと興奮に包まれる。その提案は、戦い抜いた挑戦者たちを鼓舞するものだった。
ルシウスは静かに視線を上げ、最後にこう語りかける。
「月面大会は、人類の新たなフロンティアを象徴する舞台だ。この提案が、次世代を切り開く挑戦者たちの一助となることを願う。如何かな? 月面評議会の文化交流担当官、セレナ・ラグランジュ殿。」
ライアンが思わず息を呑み、低く呟く。
「Damn right, 月の男…痺れ過ぎるぜ!」
ジョナサンとサラが静かにうなずいた。
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