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episode3 不信

「まずはラーメンで腹ごしらえからじゃね?」


ため息が出たが、山瀬が学食にいると粕井が聞き込み2人目で調べたので、学食に向かうことにした。


山瀬は先日より、雰囲気が暗いような印象だった。おそらく前髪を上げていないからだろう。


「ここ座っていい?」


「探偵の人……今日はどうしたんですか?」


「聞きたいことが2つあって。それ聞いたら帰るから。」


「一つは女子高生の雪ちゃんが階段から落ちたのを、最初に見つけたのは君なんだよね?その時の状況を教えて。」


肺に空気を入れ込む。


「あの時は、雫とまた仲良くなりたくてプレゼントを探しに行ってたんです。実は雪ちゃんにも相談したことがあって。どんなのがいいかなって。そしたら、今自分が使ってるヘアブラシがおすすめって言われたから探しに行ってたんです。その帰りに、雫に電話したら切られちゃって。拒絶されてるのかな…って落ち込んで歩いてたら、階段の下に雪ちゃんが倒れてるのを見つけたんです。」


「ちなみに雪ちゃん今日退院らしいよ。さっきお母さんに聞いた。」


いつの間に連絡先を知っていたのか不明だが、粕井が山瀬に伝えた。


「良かった……とにかく無事で……」


「次の質問。三崎に最後にあったのはいつ?」


「見かけたのは昨日です。ちゃんと話したのは、お二人と初めて会った日です」


三崎が僕らを見て逃げた日だ。


「何話したの?」


「あの二人知り合い?って聞かれて、君が何か依頼してることは聞いたって伝えたら、何を話したとか、依頼内容はなんて聞いてるとか……僕が知ってる雫でした。不安なことがあると勢いが強くなるというか……大学での雫ではなかったです」


改めて大きく深呼吸をする。


声のトーンや紹介されたヘアブラシを買いに行くことなど、ゾーンを使わなくても山瀬と雪の関係がわかる気がする。


「雪ちゃんは君のことが好きだったんだな」


「えっ…」


「実際に買ってるなら、君は三崎が今でも好きだ。ただ、雪ちゃんは君に好意を寄せている。というよりすでに気持ちを伝えられたりしているんだろ?」


山瀬は下を向いたまま、少し頷いた。


「三崎が思っていた関係と、あながち間違っていなかったんだな」


「でも!僕は雪ちゃんにちゃんと伝えました!好きな人がいるし、君はまだ高校生だから付き合ったりできないって!」


嘘じゃなさそうだ。


「三崎のことが大好きなんだな。別れてもまだ」


「好きです……」


山瀬がストーカーという証拠はない。

ただ、別れた恋人に強い未練がある。

自分に寄って来た女子高生のせいで別れる羽目になった。

ストーカーをするような人なら、その邪魔な女子高生をどうするだろうか。

三崎の会員情報でドレスを買ったことが後々わかれば、精神的に疲れてしまった三崎自身になる。

山瀬がストーカーならそう思う可能性がある。


深い海のような場所の中で、情報という光る点を繋いで、ある形にする。

星座を考えた人は同じような感覚だったのかなとも思う。


「わかった。ありがとう」


粕井の肩をたたき、学食を後にした。


事務所に戻り、粕井に先程の話をした。


「あの男前がやっぱりストーカー?」


「現状そう思うのが、一番理にかなってる」


「捕まえる?」


俺は無言で首を横に振った。

わかったとだけ言ってくれる粕井に感謝しながら、この後の動きを考えていた。


コンコン…と優しいノックの音が事務所に響き、粕井がドアを開けると、三崎が立っていた。


飲み物もいらないという三崎は、机を挟んで俺らの向かいに座った。

そして、少し黙った後、三崎から話し始めた。


「遼と何話したか前に聞きましたよね…?実は遼って完璧主義なんです。付き合うまでは優しかったんだけど……付き合ってからは、遼の理想の彼女じゃないと気に入らないみたいで……」


「例えばどんな事か話せる?」


「遼はボーイッシュな服を着る人がダメなんです。パーカーにキャップとか着てたら、パーカーをはさみで切られたことがあったり……スカートをはくのは女の子なんです。特に自分の彼女は。気にいらないことがあって、言い返すと殴られたり、蹴られたりします。でも好きだったんです。でも一緒にいたら常に自分を作らないといけなくて……そんな生活をしていたら、遼と一緒にいる時間の記憶がなくなることがたまに起こって、その時間が増えてくるようになったんです。まるで私じゃない誰かが、遼の彼女を演じているみたいな……」


「なるほど……そりゃ辛かったな……」


粕井が俯きながら呟いた。


「今はまだ連絡とってるの?」


「たまに連絡が来ます。勇気振り絞って別れてもらったので、返事はしないようにしてますけど」


「事情は分かった。あとは調査が確定するまで待ってくれ」


「おい……やっぱ早く山瀬を突き出した方がいいんじゃね?」


いや、まだダメだ。


「あと少し時間をくれ。俺の予想通りなら動くのは今じゃない」


「わかった…信じてるからな」


「あの……遼がストーカーの犯人かと思ってはいたんですけど、確証がなくて……実際どうなんでしょうか」


「今の時点では何とも言えないな。ただ、山瀬には気を付けてくれ」


「そういえば、山瀬が家庭教師で担当していた女子高生知ってる?」


「話は聞いてました。遼の事気に入ってる子ですよね」


「そうそう。その子と山瀬は今デキてるのかな?なんか知ってる?」


「……いえ知らないです」


「そうか~なんかあそこの関係がつかめないんだよな」


「遼は年下に興味ないので、何もないんじゃないですか?」


「粕井!女子高生に口説かれて嫌な男っているのか?」


「いない!!」


「だってよ。どうなんだろうね」


「私は知りません!遼とデキてればいいんじゃないですか!私のストーカーもいなくなるし!」


「おいおい。山瀬がストーカーって決まったわけじゃないんだぜ?」


「早く証拠を見つけて下さい!」


そのままの勢いで事務所を飛び出した三崎の姿を目で追いながら、動くときはこの後だなと考えた。






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