表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リトルライト ~僕は終わりを望む者~  作者: 旭ノ景
第一章 欲望から生まれるモノ
1/9

第零話:分岐点

「……。これ、は」


 黒い影に覆われた青い球体を、一人の男が見つめている。


「どうしたのさ。ああ、今回はホントひどいことになってるねぇ? 世界が、殆ど真っ黒だ。何度も何度も、誰かさんがやり直しを行った、その返しが今来てるのかねえ」


 その様子を見た女は、不敵な笑みを見せ男にそう声を掛ける。


「私は……」


「いい加減にしな!」


 言い出そうとする男に、女は怒り始める。


「どれだけその大規模な試行を繰り返しても、ヒトは完全な無償の愛には目覚められない! ろうそくの火がモノで覆いかぶさられて消えるように、“限りある自我”によって、愛は“生命の渇望”に飲み込まれてしまうんだよ! それでも、アンタは!」


「私は、それでもあの時、私の心を照らしてくれた、灯火を。その小さな灯火が照らしたその可能性を、信じているんだ」


 怒りを顕にする女に対し、男は言葉を絞り出すようにそう答える。


「……はあ。“神様”がここまで愛に固執するとはね。けれどもう、保たないよ。またリセットす、る……。っ!?」


 その女は目を疑った。青い球体のその黒いモヤが一瞬にして消えたのだ。いや、消されたのだ。何者かによって。


 黒い曇りが晴れたそこは、中心地がくっきりと見えていた。


 そこは、列をなした島国だ。


「なあ、アンタ、これは」


「私は、取り返しのつかないモノを生み出してしまったようだ。……遥か昔の私と、瓜二つの存在を」


 女の質問に、男は拳を握りしめそう答える。


「……どうすんだい、これ。このままだと全てが消えちまうんじゃ」


「私が、人間となって生まれる」


「ってはぁ!? あ、ああんた正気かい?! 自分が何しようとしてるか分かってるのかい!? 世界を管理する者が居なくなったら、この星は」


「私以外にも管理者はいる」


 そうして男が指を指したのは、彼女だった。


「……はあああっ。冗談じゃねえ」


「君が、管理をして欲しい。頼む」


 舌打ちをする女に、男はその白い瞳で真剣な眼差しを向ける。


「つーか! 仮に! アンタが地上に狩出したとして、上手くいく保証なんて無いだろ!」


「だとしても、私が責務を最後まで全うしなければならない。“彼”が本当の“破壊”に蝕まれたら、私以外では止めることは無理に等しい。頼む、最初で最後の願いだ」


 頭を下げる男を見たその女は、頭を限り大きなため息を吐くと、その青い球体に手をかざす。


「……時間座標は頑張っても、人間で言う50年後だ。それより早くは無理だ」


「ああ、構わない。アルファ、ありがとう」


「ホント、あんたって奴は……。まあいい、準備に時間がかかる。ほら、そこに例の装置用意したよ」


 装置が、何も無いところから音を立てずに現れる。


 それは、棺桶に似たカプセル状の物だった。


「入ったら体質変化の作用で意識が昏睡状態になる。……まあ、最後の別れだ。あんた、何か言いたいことは?」


「アルファ、銀河に住まう全ての人類、君達が在ることに一条の煌めきを、希望の光あれ」


「……相変わらずだね、安心したよ色々と。無事に、使命を果たしてくれよ、創造主」


 装置の蓋が、男が近づくと自動で開いていく。


「ああ、必ず。ではおやすみ、そしてさようなら」


「さようなら、愛すべき愚かな主様」


 装置が光り始めると、装置全体が粉のような光の粒子となって宙に浮き、静かに音を立てず消えて行った。


「……あの方のお陰で、まず時空の分岐が多数生まれたってことになるな。もう一つの可能性、パラレルワールド。そのいくつかある内の一つだけでも、この星に残せれば……。あるいは、アタシがアタシとしての役割を果たし、この世界に助け舟を出すか。……ふう、いずれにせよ」


 女は頷き、男が残した球体に目を向け、その列島国に手を伸ばした。


『「信じてみよう、小さな光を」』


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ