遠征ハンターの銃猟カタログ2023年12月10日
次に、いかにも遠征ハンターのイメージ(だと私は思う)な銃猟の実像(体験、伝聞両方)について見ていきたいと思います。
なお、遠征ハンターを長距離で行う場合は高速代ガソリン滞在費食費その他で必ず1万~2万円かかるものと割り切ってください。
特に週末の夕方に東京方面に向かう道路は渋滞するのでその負担についてはあらかじめ折り込みましょう。体力残さないと事故を起こします。
これら交通関連のコストは相乗りで軽減できます。単独行動の場合公共交通機関の併用も検討しがちですが荷物をなくして一発アウトとなるのでお勧めしません。
もしそうしたコスト軽減の策を打っていてもイレギュラーが起こって出費しがちなのでこれらは先に割り切っておくほうが精神と財布のトラブルを回避できます。
狩猟とどう付き合うかというのは突き詰めるとどうありたいか、何をやりたいか、何を重視するかということになりますので
ここではいくつかの観点で簡単でそれぞれを評価して整理しようかと思います。手法ごとに詳細を調べる際のヒントにしていただけると幸いです。
観点:★が多いほど快適。3段階評価。
・捕獲の期待(単位出猟日数当たり大量捕獲ほど★追加で表現)
・実働の楽さ(運動しないほど★追加で表現)
・追加金銭コスト(低コストほど★追加で表現)
・追加調整コスト(低コストほど★追加で表現
・訓練コスト(訓練研究の大変さ★追加で表現)
・社会的評価(地域貢献を認識される等自己満足以外の肯定)
東京神奈川埼玉あたりから隣県で定例の地域を決めて出かけた経験や伝聞をもとにまとめています。
猟期以外の捕獲業務に関する活動もわかる範囲で言及します。
シカ・イノシシが念頭にあります。獣種でかなり変わりますが今回はある程度丸めて表現します。
(1)流し猟
・捕獲の期待 ★
・実働の楽さ ★★★
・追加金銭コスト★★★
・追加調整コスト★★★
・訓練コスト ★★★
・社会的評価 ★
車で移動しながら獲物を探し、降りて撃ちます。
関東で猟期にやるのは現実的じゃないです。
理由は簡単で、遠征の人に手軽な方法は地元の人にはもっと手軽で既に取られているからです。
また、林道にカギがかかっていて猟友会だけが借りられる、などの場合もあります。
一方で時間帯や時期がかみ合えば一番楽に捕獲できる方法ではあります。
実は場所選び、運転テクニック、銃選び、気配の消し方等奥深いのですが上手かろうが居ないものは撃てませんので見かけ上の熟練度は求められません。
(2)単独忍び猟と渉猟
・捕獲の期待 ★★★
・実働の楽さ ★
・追加金銭コスト★★★
・追加調整コスト★★★
・訓練コスト ★
・社会的評価 ★★
都市在住の単独遠征ハンターといえばこれ!一人で山を歩いて見つけて撃つ方式です。
入林申請などの基本的手続きさえ踏めば割と自由に場所を設定できるので「生息密度が高いところに行けばよい」です。
どこが生息密度高いかは環境省や自治体の情報でわかる程度のところから調査を始めてもよく、
単純に過疎地域や車から距離が離れた山林にチャンスがあります。
長距離移動、捕獲後の個体輸送に解体が必要で移動速度と隠密移動の切り替え、銃選び、射撃スキル、痕跡追跡スキルなどが求められますので鍛錬し甲斐があります。
基本的に地域住民から見えないところで活動することと、団体行動のしがらみにとらわれた猟友会にいい顔をされないなど地元の評価は低くなりがちです。
一方でSNSに映える報告をとることとは親和性が高いので同好の士にはアピールしやすいです。
生息頭数が少ない場所で目標を追い詰める場合さらに高い追跡スキルや生体への理解を求められますが、普通は高密度生息地域に行くほうが満足度高そうです。
(3)一銃一狗
・捕獲の期待 ★★
・実働の楽さ ★
・追加金銭コスト★
・追加調整コスト★(チーム内での話し合いの手間やストレス)
・訓練コスト ★
・社会的評価 ★
私が実体験したのは自分の育てたビーグルとの一銃一狗ですが、犬の頭数は随意に変わります。
また、今回の主眼はイノシシ、シカ、クマですが、まったく別ジャンルで鳥撃ちもあり、全く違う分野でロマンがあります。
捕獲の期待は当然犬の種類が技量に依存しますし、季節依存がとても大きいです。
身軽に生息頭数の多い地域に出猟できるという点で捕獲の期待値は地元近隣縛りの巻き狩りより分がいいです。
多少足の速い猟犬なら身重の小鹿や母鹿に対しては必殺モードになり、そうした獲物が探索範囲にいればあっさり討ち取れます。
一方参加条件は悲惨で犬並みに走り、犬を養い、車必須、しつけにミスって近所犬を噛めば治療費、GPS等の装備も一定額必要で、
猟場で猟犬を使っていて知り合いでない地元ハンターに会えば確実に素性を正され、嫌がらせを受けるようなこともあるでしょう。
(お互い、それなりに捕獲するだろうとか犬同士のケンカになるとやばいという理由で縄張り意識が強化されるのです。)
訓練コストは犬も人もMAXです。社会的評価については、偉大な先達ではなく捨て猟犬や飼い犬噛んだりでイメージが最悪です。
(4)巻き狩り
巻き狩りについては猟犬を追い出しに使うものと人を使うものがあります。
一般的に巻き狩りというと猟犬を使うほう(飼い主以外にも歩く人がいる場合多数)を思い浮かべると思うので犬アリで挙げていきます。
巻狩りのチームによって全く違うので私が見聞きした範囲からで標準的なものについて書きますが、今回は遠征ハンターなので
大まかなイメージは単独の都市在住ハンターが地元ハンターの同好会にゲスト参加するイメージです。
当然、地元民ではないので日頃の付き合いはありませんし、親戚や出身地チートもありません。
銃砲店、射撃会、直接の問い合わせ、山の中で偶然出会って勧誘などひと手間かけて輪に加わることになります。
個人的経験から言うと、新人のやらかし防止と既存参加者の力関係を考慮して後見人(師匠)を決めてその付属品の立場から始めることになります。
これは基本的なマナーや知識を集団行動の中で教えるのが難しいという側面と、1:1で模倣させつつ監視するのが新規参入者を見定める上でも、
連絡体制を組む上でも、地元のハイコンテクストなやりとりを翻訳するうえでも極めて有効だという理由によるものです。
逆に言えば、鉄砲持った余所者が危険人物だと困るという当然の警戒でもあります。
これはゲスト一人を扱うには非常に有効である一方、ゲストが増えてきた場合や一定程度実力をつけてからも言動が大きく制限され、
報連相の混乱をもたらす土壌にも一役買っています。つまりチーム全体としてのオープンな議論ができず、
2-3人の極めて小さな集団による全体10~20人程度の集団の中の派閥争いが発生するわけです。
地元のハンター集団に参加する場合はこうした要素をある程度踏まえて動きましょう。師匠以外のメンバーと話すことを制限するようなチームもあります。
猟の性質としては一定以上の人員を配置することと、立ったままの待機時間長すぎて退屈になることを避けると、自然と集落付近、車からの到達性が良好な場所を選ぶ傾向があります。
よって、捕獲が上手く行くと生息密度が下がり、どんどん捕獲効率も下がります。
(4-1)巻狩タツマ
・捕獲の期待 ★
・実働の楽さ ★★★
・追加金銭コスト★★
・追加調整コスト★★
・訓練コスト ★★★
・社会的評価 ★★★
待機射撃の射手です。
案外待機場所にたどり着くのが大変な場合もありますが勢子や長距離や険峻な場所での忍び猟に比べれば楽です。
また、待機時の防寒具が完璧なら待機中は消耗しないので楽です。たまに数時間待つ羽目になって苦行ですが。
金銭コストは比較的かからないですが、チーム内での犬への保険の積立やお礼料金、ゲスト参加の場合は案内料的なものを包む場合があります。
実際のところ事前の猟場の調査選定、猟犬の訓練や飼育、メンバーの日程調整はかなりの労力がかかるので
受け入れ側の視点から見ると当然ゲストにも負担してほしいところです。
負担の話は勢子とタツマの関係でも同様に発生し、地元勢でもタツマが特に猟犬を出す勢子にお犬代を払うチームは散見しました。
※特に一人が複数の猟犬を出すチームで全体の運営もその猟犬を出す勢子に頼っている場合この傾向が強くなります(当然ですね)
これら人間関係や負担に関する話し合いのコストはかなり高く、システム化されていない場合の話し合いはそれなりの調整コストです。
訓練コストは比較的低いですが、待機場所の解像度はかなりケースによって変わるため、現地での微調整やシカが見えてから
命中させるまでのテクニックには「立ってるだけではない」かなりの重要性があります。
チームにある程度受け入れられて仲間内の行事に加わる良きゲストとして定着できれば社会的評価はチーム内に留まらず
近隣農家や自治体担当にまで広がり快適な活動をできる場合があります。
一方、こうした地元のつながりで受け入れ側が良くしてくれるのも条件と動機があり、条件としては継続参加で過疎化対策してくれることと
人数の必要な年中行事、例えば収穫祭や除草、近隣の他チームに人数や年齢構成でマウントをとる等の効果を期待される場合を散見しました。
※町から来た若者を連れているのは実力者として「他人を世話できるほど立派」というステータスが得られるようです。
(4-2)巻狩勢子(犬あり)
・捕獲の期待 ★★
・実働の楽さ ★
・追加金銭コスト★
・追加調整コスト★
・訓練コスト ★
・社会的評価 ★
追い出し役であるとともに、巻き狩り運営の中心的役割(指揮官か、エースか、両方兼務)を担うポジションになります。
巻き狩り本体やタツマで触れたとおり、政治的駆け引きと狩猟本体の成果を出すための直接的活動を求められる極めて大変な役回りです。
追い出す過程で獲物が迂回や散開して追い出し側に戻ることが多々あり、それに対して撃つチャンスが一定頻度で発生します。
特に猟犬が先行した場合の鹿の「ラウンディング」(検索してみてください)で回ってきたところに居合わせるのが分かりやすい例となります。
当然、リーダー各またはエース格としてリーダーから叱責される立場なので上手く行かないときはかなりしんどく、
上手くいっていても出しゃばりだなんだと叩かれるので遠征ハンターがやるポジションとしては不適当でしょう。
(5)番外編:北海道のガイド付き流し猟
・捕獲の期待 ★★★
・実働の楽さ ★★★
・追加金銭コスト★
・追加調整コスト★
・訓練コスト ★★★
・社会的評価 ★★
こちらは完全に伝聞で私は未参加なのですが、二日の出猟で1~2名で20~30万円(ふるさと納税にもあります)くらいでガイド付きハンティングができます。
そこに飛行機と前後等の宿泊、飲食等が加わり二人組で行って一人20万円3泊四日くらいのようです。
単純にシカが増加していて視界が開けており射撃に関する条件のよい北海道での流し猟ということでかなり捕獲の期待値が高く、
地元のガイドのプロがつきっきりで教えてくれるので静的の命中だけ訓練しておけば非常に快適ということです。
やや野蛮でブルジョアすぎるイメージも付きまとい部外者からやり玉にあがることもありますが自治体も噛んで公認された活動であり
ハンター同士の土産話としても鉄板、狩猟スキルの棚卸にもよいようです。もちろんガイドの当たりハズレ(相性)にはご留意ください。
以上、都市在住遠征ハンターの目線で見てきたいろいろな銃猟を紹介してみました。
やってみたい、調べてみようというきっかけにしていただけると幸いです。