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最終話


 リズリットの言葉にショックを受けたようにディオンはゆらり、と揺らめくとそのままドシャリ、と床に膝と手のひらを着いて項垂れる。


「──何故っ、どうしても見守りは駄目なのか……っ、リズリット嬢!?」

「だ、駄目な物は駄目です……っ! そ、そんなっ、離れた場所で見られているなんて……っ、そのっ、怖いです、し……っ」

「怖い……!? リズリット嬢の恐怖を取り除く為に俺は見守りを続けているのに……っ、リズリット嬢の安全を確保する為に見守っているんだ……! 今ではリズリット嬢を見守る事は既に俺の毎日の生活の一部だ……!」


 堂々とストーカー行為の重要性を声高にディオンは叫び、リズリットを何とか説得しようとしているがディオンが口を開けば開く程に墓穴を掘っていき、リズリットがディオンの行動や行為に顔色を悪くさせて行く。


「もっ、もう……! どうしてディオン様はそんなに"見守り"に拘るんですか……! 折角ディオン様が居るのに、隣同士一緒に歩けない方が私は嫌です……っ!」


 思わず、と言ったようなリズリットの言葉にディオンは瞳を見開き。

 二人のやり取りを見守っていたハウィンツや精霊王は、リズリットの告白めいた言葉に目を丸くする。


 結局は、リズリットもいつも自分を助けてくれるディオンに、少なからず恋心を抱き始めていたのだ。

 親友であるハウィンツの妹だから、と何かときに掛けてくれているのだろう、と勘違いをしてしまわないように。

 自惚れてしまわないように自分に言い聞かせていたが、先程ディオンからしっかりと気持ちを告げられている。


 好感を抱いていた相手からそのように言われて嬉しく無い訳ではない。

 ただ、ただディオンの行動が些か行き過ぎている部分はあるが、その部分は自分と共に過ごしてくれれば、その必要は無くなるのだ。


 離れた場所で、リズリットの身を案じるのでは無く、傍で、出来れば隣で。共に過ごす事が出来れば、リズリットはそれだけで嬉しいし、それ以上を望まないのだ。




 未だに二人は不毛な言い争いを続けており、その様子を横目で見ながらハウィンツは、先程この部屋から出て行った鶺鴒の精霊が戻って来た事に気付くと、国王陛下ウィリアムから戻ってきた書状を確認する。


「──あ。精霊王。我が国の国王が、直ぐにでも花の精霊をお返ししたい、との事です」

「まことか? それならば、これから王城に行こうかの。先程ハウィンツから聞かれた事も、妾の口からしっかりとウィリアムに説明してやらんとな」

「お気遣い痛み入ります……。精霊王のお言葉でご説明頂ければ、国王も安心致します」

「うむうむ、そうさの。ならば、王城へと行くとするかの?」


 精霊王の言葉に、ハウィンツは頷きかけてあっ、と小さく声を出す。


「も、申し訳ございません精霊王。その、馬車を手配致しますので、暫しお時間を頂戴しても宜しいでしょうか?」


 白麗に乗って移動出来るのは契約者であるディオンと、彼の精霊に気に入られているリズリットだけだ。

 ハウィンツが申し訳無さそうに精霊王に対してそう説明すると、精霊王は「問題無い」と言葉を返して、先程までの愛らしいうさぎの姿から一転。

 瞬時に白麗のような銀龍の姿に変わると、鶺鴒の精霊が戻って来た際に空きっぱなしになっていた窓から出ようとそちらの方向へと移動する。


「──ディオンと、リズちゃんは取り敢えず話をしておれば良い。王城へは妾とハウィンツで向かうのじゃ。妾の背に乗せてやるのは特別じゃぞ? 後世まで語り継ぐが良い!」

「あ、ありがとうございますっ」


 精霊王はふふん、と得意気な表情を浮かべるとそのまま窓からひょい、と飛び出して体の大きさを変化させると、庭園で巨大な龍の姿になり、ハウィンツを待つ。

 精霊王は何かを思い出したかのように「あっ!」と声を上げると、焦ったようにリズリットが居る部屋へと視線を向けて何か言葉を自分の口の中で唱える。


「──いかんいかん、忘れておった。妾の愛しのリズちゃんに気配を付け忘れておったわ。このままでは何も知らぬ他の精霊が祝福を与えてしまう所であった……!」


 精霊王は、ふいーと安心したように息を吐き出すと慌てて下へと降りて来たハウィンツに視線を向けて、ハウィンツが背に乗りやすいように首を地面へと下げたのだった。




 一方、その頃ハウィンツと精霊王が居なくなった部屋では、未だにリズリットとディオンの不毛な会話が続いており、父親は諦めたように自分の仕事を再開し始めている。


「お、お願いだ! リズリット嬢っ、たまにでいいっ、たまに、十日に一度っ、いや! 二十日に一度で良いから少し遠くからリズリット嬢を見守らせてくれっ」

「でっ、ですから先程から言っているのに……! 一緒に居て下されば良いのに……っ! もうっ、本当にっ、ディオン様のそのストーカー行為はお断り致します!」


 リズリットのもう嫌! と言う悲痛な叫びを耳に残し、精霊王の銀龍の体がふわりと体を持ち上げて空高く舞い上がったのだった──。





こちらで、いったん一章が終了です。

二章からは、もう少し恋愛面多めで再開予定です。


長らくお付き合い頂きありがとうございました!

また、宜しくお願い致します!


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