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一話 世界を超えるほどのコーヒー②

 南城烈来はどこにでもいる普通の大学生である。彼がこの店で働き始めてから、丁度ふた月が経ったある土曜日の朝、それは突然降りかかった。


「マスター、千影ちゃん、もうそろそろ店開けますよね、看板出します。」


「あっ、アカンよ。いや、開けるんはええけどドアはそこやない、こっちや。」


 そう言ってマスターが指さすのは、昨日までご近所さんたちを迎えていたドアではなく、

「そのへんのドアって絶対開けるなって言ってませんでしたっけ。開けていいんですか?」

「ええよ、逆に今日からはこれ以外開けたらアカンねん。」

「れっちゃん、世界の間にまっさかさまになっちゃうよ。ちゃんと間違えずに開けてくださいね。」


 まったく何を言われているのか分からない哀れな烈来は、だがしかし、雇い主の言葉には逆らえない日本人であった。


「詳しい話は後や。はよその看板こっちのドアに出して店開けんと、待っとる人もおるやろし。」

「あ、はい。」

 訝しく思いながらもマスターの言葉に返事を返してから、今まで開けていた茶色のドアではなく紫色のドアを開けると……




まるで中世ヨーロッパのような世界が広がっていた。




「お! 開いたぞ!」

「よっしゃ! 待ってました!」


 烈来が看板を出した途端、ローブを着たり三角帽子をかぶったりしている男たちが四、五人わらわらと店に入って来る。


「マスター、久しぶりだなぁ!」

「いやーほんまにお久しゅう。」

「チカゲちゃんは相変わらず癒されるねえ。」

「えへへ、そうですか? ありがとうございます。」

「看板出してたのは新入りか?」


まるで常連のように話し始める彼らに、マスターと千影もニコニコと対応している。烈来が一人で混乱していると、


「いやー、やっぱりここだよなぁ。急に休みになっちまうのが残念だよ。もっと長いこと開けるのはどうしても無理なのかい?」

「他んとこもありますさかい、ここばっかりゆう訳にはいきませんのや。堪忍なぁ。」


という会話が聞こえてきた。

結局営業中はまともな説明を受ける間もなく接客に追われることとなった———


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