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無彩色の狩人 外伝  作者: 塩辛
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海の女王

 メレン・クニンガタール号は、初陣を飾るために北の国ノースマンを出港して中央国ミッドガルドの西海岸へと向かっている。船はあと1日もすればマルセル領へ到着するだろう。その前に一戦交える予定だ。にも関わらず、ほとんどの船員はだらけてうたた寝を続けていた。この船に設置されているシェーズロングは、長くなだらかな曲線を描いている長椅子で、その寝心地はベッドとは違っていい感じに寛げると評判だ。

 最新の考えが詰め込まれた戦艦、最高の室内環境と設備、そして革命をもたらす武器。ハーラル王は今までにない最高の気分で船のラウンジに寝転がっていた。

 戦争前だというにまったく緊張感の無い船室を見たロギは一人イラだっている。体の大きさに反して意外に細い指で長い黒髪を掻き毟った。


ロギ「うぅ~~~むぅ」


 ちょうどやってきたクラウスは、その様子を見て察してやるつもりだった。


クラウス「sweet(スウィート) berries(ベリーズ)はいかがかな?」


 まったくもって感情を察せていない彼の言葉に、ロギは不満そうな顔を浮かべて言った。


ロギ「お前なぁ、クラウス。ミッドガルド本体を叩くのではないのだぞ」


クラウス「知っておる。」


ロギ「お前には“家”を守る義務があるだろうが」


クラウス「ギュミルとミルスキにやらせたではないか。」


ロギ「それだ。なんであいつらにやらせた」


クラウス「エーギルも我慢していたでな、その代わりである。」


ロギ「あいつらに政治がわかるか」


クラウス「させるわけなかろう。NMGの者から代理を置いておる。案ずるな。」


ロギ「くそう、そうじゃなくてだな。……だから、なんでお前まで来た」


クラウス「臣も我慢しておったのだ。たまに船旅もしたい。」


 クラウスがあっけらかんとした表情でそう言うと、


ロギ「うぅ~~~っ、むぅ」


 ロギはまた髪を掻き毟った。



カンカンカンカンカンカンカン!!!!



 警鐘が鳴る。素早く起き上がる船員たちだが、どこか「さてと」と間を感じる起きかたをした。


ロギ「まあいい! この戦艦ならお前を送り帰すのに不安はないからな」


 クラウスは短く返事して甲板へ出た。空は雲がかっているが気温は初夏のそれだ。戦闘員の十数名が甲板にいて帆の操作をしている。ハラルドものんびりと出てきた。ハラルドの巨体でもすんなり出入りできる扉は音を立てず開くと、勝手にすうっと閉じていった。


ハラルド「くぅ〜〜〜〜っ!!」


 気分良さそうに背伸びをして、海の先と左側にある陸地を眺めた。


ロギ「おいデカブツ、防衛からだからな」


 ゴキッと首を鳴らして、ハラルドは片目でロギを見る。


ハラルド「エーギルにやらせとけ。おれはあのホースが気に入っとるんだ」


 エーギルがこの場にいたら「あれはおれのだ」と言ってひと悶着起きたろう。だが、エーギルはまだ眠っている。


クラウス「臣がやろう。実戦もせねば腕が鈍る。」


 やりとりのあとロギは淡々と配置を促し、進路をそのままに敵船へと向けた。


 歴史において帆船最強と謳われることになるメレン・クニンガタールから“名誉ある敗北”を初めて受けるのは、中央国ミッドガルド所属マルセル西海岸警備隊の艦隊だ。

 過去にノースマンとは何度か艦隊戦を繰り返してその全体数は3分の1にまで減ってしまっているというのに、西海岸を取り戻したことと新しい船が追加されたとのことで浮き立っているのだろうか。83隻、全艦隊をあげてやってきた。


クラウス「よい艦隊編成であるな。実に崩しにくい形を組んでおる。…………今までならばな。」


 敵を称賛しつつも、予想通りといった相手の出方を見て彼は皮肉を交えた。


ロギ「クラウス、お前からの情報は正確すぎて気味が悪い。まぁいい。全部壊すか略奪するぞ、ハラルド」


 望遠鏡を覗き込んで様子を確認していたハラルドは不満げだ。


ハラルド「全部ボロでは奪う気にならん。何隻か新品があるようだが…………あれは旧い型だろう?」


 旧式の船だが戦艦は戦艦、それなりにモンスターとも戦える。だが結局、敵の指揮官は向こうの最新戦艦に乗ったままだし、旧式ではいくら新造船といってもたかが知れている。輸送船にするなら悪くはないが、今では大して価値があるわけでもない。


ロギ「それにしても造るのが早い。やはりミッドガルドの国力は侮れないな」


クラウス「何年も前から戦争を繰り返しておるのだ、ストック分を出したに過ぎぬ。輸送船として奪うならやはり指揮官機は抑えたい。あれは、良い船だ。」



ウゥ〜〜〜〜ンっ!!



 サイレンの音が鳴り出した。これも最新設備の一つだ。良く響く。


アオォーーーー…………


 部屋の中から狼の遠吠えも聴こえてきた。


ハラルド「ものども! 戦闘準備!」


 威勢のいい返事が沸き起こる。最新とはいえたった一隻の戦艦のみ。相手は83隻。生きた伝説がひしめくノースマン本隊が乗る船とはいえ、海の上ではそうもいくまい。敵の大多数はそう考えていたことだろう。

 実際のところ何人かニヤニヤと笑っていた。何人かはあからさまな罠だと言って(はばか)らない。また何人かはただの漁船と間違えているのではと疑った。


クラウス「さて、大砲はいかなものか。」


ハラルド「ボロいのだけ狙えよ!」


 海の女王号のメイン甲板には、一門の大砲が取り付けられている。それは、現代で言うところの戦車の砲台と仕組みは変わらない。木で出来た甲板の上で光る金属の塊は、一見するとバランス悪く映っている。キュルキュルと機械音を立てながら回り、角度を小さく変えて向こうの敵船を狙った。


ロギ「撃てぇっ!!」


ドォウンッ!!


 放たれた砲弾は正確に目の前の敵船に直撃。当たりどころが良かったようだ。早くも一隻が沈んだ。


ドォウンッ! ドォウンッ! ドォウンッ! ドォウンッ!!!


 連発される大砲は正確に敵に直撃し続けて、指揮官機の左右に陣していた戦艦4隻が航行不可能に陥った。指揮官機もそれに邪魔されて身動きが取れない。


クラウス「波が穏やかなのもあるか。よく当たるものだの。」


ロギ「…………敵になっていたらと思うとゾッとしないな」


ハラルド「ハッハァ! ここまでとはな! おいクラウス、これを(おか)でも使うのだろう?」


クラウス「うむ。城壁を崩すのもさぞ爽快だろう。」


ハラルド「がっはっはっはっ!! ミッドガルドを丸裸にしてやろう!」


ロギ「おもかぁじ!!」


 東側にある陸地から遠ざかるように船首を西へと向ける。女王の脇腹から鈍く光る筒が覗き込み、異様に出っ張ってギョロギョロと動いた。


バドゥンッ!!


 連続して放たれる新型の大砲は、中央国ミッドガルド所属マルセル西海岸警備隊の数を減らしていく。

 敵陣から見ると、メレン・クニンガタールから煙がポンと上がると共に恐ろしく速く正確に鉄球が飛んできて、次の瞬間には衝撃とともに激しい揺れが始まって船が動かなくなる。展開している魔法防御陣がなんらの意味もなく、分厚いはずの装甲など積み木のように崩れてなくなっていった。


 逃げるどころか舵を取る暇もない。開戦からたった30分ほどで83隻中42隻が航行不可能、3隻が完全に沈没した。

 編隊はバラバラ、指示を出すどころではない。航行不可能になった味方の船のせいで行き場を無くした船が多数。完全に混乱していた。

 指揮官機で全体指揮を取るマルセルの息子は逃げの一択以外が思い浮かばなかったのだが、参謀はそうでもないらしい。


マルセルの息子「この事態に突撃だと!?」


参謀「いくら敵の最新魔法が強力とはいえ、あれだけ連射してもつはずも有りません。事実、距離が縮まってから砲火は止みましたし、相手は一定の距離を保とうとしているのが先程から伺えます。あれだけ強力で遠距離向けの大砲だと、近距離では扱いにくいのです。それになにより、この船だけを落とさないのは腑に落ちません。やつらの性格から言っても、この船だけは奪いたいはず。ならば近付いての砲撃戦でなら勝機は十分あります。」


 バサッと巨大な魔石のベールが脱がされ、魔法陣も顔を出した。


マルセルの息子「なんと!?」


参謀「今回ミッドガルドに要請したところ、早く手を打てるようにと新型の中級魔法を頂いたのです。船上への攻撃では大いに役立ちます。これをもって、早くあの海賊どもを大ミッドガルドの名の下に処罰せねばなりません」


マルセルの息子「大ミッドガルドの名の下にか…………そうだな。編隊を組み直せ! 南側へ脱出したのち二縦陣(にじゅうじん)で敵船の側面を襲う!」


 まっとうな判断だといっていいだろう。相手は単機。縦列で進んで相手の側面から囲み、近距離砲撃で一気にたたむ。いくら強力な火器を積んでいるとはいえ、見た目に木造戦艦であるのは間違いない。攻撃さえ当たれば、向こうも自分たちと同じ目に合う。

 相手の位置がほどよい遠さにあるのも良かった。再編成を組む余裕と、ぐるっと回って相手の北側から西側に付け、東の陸地を使って逃げ場を塞ぐのも容易だ。場が落ち着いて、38隻中37隻が脱出できたのも運が良かった。あまり密集しない最初の陣形は正解だった。

 航行不可能になった船と船員は残してそのまま出航、彼らは現地でどうにか陸地へ戻る術を探る。マストが折れたくらいで船は浮かんではいるし、幸いにも天候が味方しているので修繕作業は楽だ。




 メレン・クニンガタール号の船長室では要人が集まって今後の作戦行動を確認していた。


ロギ「防衛後の指揮はクラウスだ。代理でもハラルドにやらすなよ」


ハラルド「ふんっ。エーギルの船だ、誰がやるか」


 彼は悔し紛れの言葉を放ったが、そのことがエーギルをさらに愉快にさせた。


エーギル「むっはっはっはっ!」


 戦闘が始まって作戦会議をやると聞いてから起き上がってきたエーギルは有頂天になっていた。

 戦果は見ての通り。単機で80を超える敵船を30分ほどで半滅させる火力を持ち、航行速度も従来では考えられないほど速い。夢の戦艦だ。見た目の豪華さも含めて海の女王という名前がこれほどぴったり合う船はない。

 ギュミルオルグのメンバーだけではない、ノースマンにいる全員がこの船の所有権をもつエーギルを(うらや)んでいた。ハーラル王も例外ではない。


ロギ「お前がやっても同じだと言っているのだ。エーギルにろくな操舵ができるか」


エーギル「妬くな妬くな、あの指揮官機を奪ってくれてやる。っだっはっはっ!」


 ロギも、ノースマン親衛隊隊長という名誉ある肩書や、ノースマン1の剣士だと自負する心を持つものの、やはり海賊業をやる限りは自分の船を夢見る一人である。内心は嫉妬に燃えていた。


ロギ「ぐぬぬぬ。ともかく後は任せたぞ」


 こうして、ロギ率いる隊は航行不可能になった船を回収するために小舟で移動する。適当に暴れて残っている敵兵を屈服させ、使える船を修繕させたのちノースマンかオリーブ村へ還す。いつもの手順だ。


エーギル「さあ、やつらをおびき寄せてやるとしよう」


 不敵な笑みを浮かべ、エーギルは舵を取った。わざとらしく東側の陸地に近づき、それとわからないくらいの速度にして相手が来るのを構えて待つ。


エーギル「向こうにはモンスターも居るな。オリーブ村の北西だったか」


クラウス「ほぼブオリ山の麓と言ってよい。あの切り立った崖を見る限りでも、開拓は難しいであろうの。」


 半数になったとはいえ大部隊の敵が迫っているというのに、まだ余裕で他のことを考えている。


ハラルド「ほおお……よくもまぁ足並み揃えて来れるものだ。艦隊指揮能力も相当に高い。さすがにミッドガルドの西側を任されているだけあるな」


 今までも艦隊戦では苦戦させられていた。その理由が目に見えてわかると、ハーラル王は素直に敵を称賛した。


クラウス「統制力というより、その統制を取らせるまでの教育方法が理に叶っておるのだと臣は考えておる。その仕組みがわかればノースマン軍でも教育できるのだがの。」


ハラルド「またわけのわからんことを」


 二人が話す横で、エーギルは望遠鏡から顔を離した。


エーギル「いい距離だな。そろそろ始めるぞ」


ドォウンッ!!


 一番後方に構えている敵船を狙ったが、やはり横に動いている的には当てにくい。マストを破壊するつもりが、大きな帆だけが破られた。それでも、被弾した一隻はスピードが落ちてやや戦列から遅れているように見える。

 マルセルの息子はちょうどその様子を見ていた。


マルセルの息子「参謀の言ったことは正しいのかもしれん。どういう原理か知らんが、威力が高すぎて突き抜けていったようだ。さきほどと違って連射はしてこないし、命中率が嫌に悪い。確かに近距離では勝算があるやも」


参謀「間違いありません。また次が来るでしょうが、この様子なら犠牲は後方のみと見えます。側面の大砲を潰せば攻撃手段など限られております」


マルセルの息子「ようし。進路そのまま! 多少バラけていいから速力を上げろ! 一気に側面を取る!」


 足の速い船から次々に抜き出てきた。それを見ると、慌てたようにメレン・クニンガタール号から大砲の連射が始まる。

 しかし、狙ったのは後方にいる足の遅い船ばかりだった。今度はきれいにマストを折ったが、残り21隻はピンピンしている。


ズンッ!!!


 指揮官機の甲板に衝撃が走った。


マルセルの息子「直撃か!!?」


参謀「帆を掠めたようです。船は動きます」


マルセルの息子「海賊め! こちらもそろそろ射程距離だ! 準備でき次第放て!」


 そう言い放った刹那、



ブッシャアアアアアッ!!!!



 メレン・クニンガタール号の後方から勢いよく水飛沫が舞う。すると飛ぶように巨大な戦艦は前へ前へと進み、一瞬で遠くへと行ってしまった。水飛沫が終わると180度くるんと向きを変え、甲板中央に備え付けられた大砲をギラリと光らせてこちらに向けた。

 何が起きたのか皆目検討もつかない。しかし、次の瞬間から起きることは今までと何ら変わらない。


ズドゥンッ!!!


ヒューぅルルル……バスッバスッバスッバヂンッ!!


 たった一発で、縦列していた3隻の帆がいっぺんに撃ち抜かれ、4隻目のマストに当たって折れた。今までと比べて距離が近いこともあり、メイン大砲は本来の性能を発揮した。そう、これまではわざと遠くの的を狙う実験をしていただけだ。

 似たようなことがこのあと10数回繰り返され、最後は見事に一隻を半分に割って沈没させた。


エーギル「だっはっはっはっ!!」


 残された21隻のボロ船は、女王が通るのを膝まづく兵士のように留まって見ている。


敵船長「こっ、攻撃だ! これだけ近いんだ! 魔法でも弓でも、とにかく撃て!!」


クラウス「その混乱も致し方なかろう。同情する。」


 クラウスは甲板に立って、次々に迫る魔法攻撃を魔法で相殺。そして試すように様々な種類の魔法を飛ばしては、敵の甲板にいる兵士を一人ひとり丁寧に狙って倒していった。技が優雅すぎて派手さに欠けるとハラルドは言うが、一人ひとりを正確に殺すこのほうがより恐怖心を煽るものだ。

 女王は厳かに歩を進める。甲板の上で同じ光景が7回続くと、いよいよ指揮官機の前に鎮座した。


参謀「ばかめ! 気取ってゆっくり進んできたおかげで詠唱は終わっているぞ!」


マルセルの息子「(魔法名称未定)!!」


ゴバーッ!!


 螺旋を描いた赤い炎がメレン・クニンガタール号の甲板を襲う。だが、その炎を食べるように暗黒の炎がクラウスの口から放たれた。


クラウス「こほっ! こほっ! ……ふぅ、ブレス系魔法は好かぬ。喉が焼けた。」


 マルセル側の陣営から、もはや言葉は出てこなかった。これ以上どうすればノースマンの海賊たちに勝てるというのか。


ハラルド「ぐひひひひ」


エーギル「ハラルドめっ! おれのホースをっ!」


 仕上げは、直径8センチの極太ホースから放たれる海水だった。甲板の上にいた敵乗員たちは全員押し流されて海に飛ばされてしまう。

 マルセルの息子と参謀だけは船室へと戻って行ったが、マルセルの息子は勇ましくも一騎打ちをせんと飛び出してきた。


マルセルの息子「海賊めっ! この私と一騎打ちをしろっ!」


 そう口上を述べようとしたのだが、ドアを開けて一歩出た瞬間に放水されて吹き飛ばされ、柵に当たって気絶してしまった。ついでに、うるさかったエーギルにもたっぷりと海水を浴びせた。


ハラルド「だははははは! 爽快っ!!」


エーギル「ちくちょう……デカブツめ……」


 甲板の上が片付くと敵船に乗り移り、あとはなるべく船を傷つけないように慎重に敵兵だけを屠っていった。そうして、要人と思われる者だけ捕らえ、無抵抗の者は奴隷として使役して船の操作をやらせた。


 完璧な勝利。


 メレン=クニンガタール号の初陣はこうして(つづ)られた。ただ勝利するのではない、圧倒的で揺るぎない完璧な勝利こそ女王の象徴だ。


 主な戦利品は、ミッドガルド最新鋭の通信魔法が仕組まれた指揮官用の戦艦、ほか傷の少ない最新戦艦が数隻、先程放たれようとした最新の中級炎魔法、ミッドガルド大陸西側の海図、それから交渉材料になるマルセルの息子とその愛人たちだ。


ハラルド「なんだ、いじめ甲斐のないやつだな」


 取り出そうとした武器は役に立たなかった。マルセルの息子の愛人たちにちょっかいを出すぞと言うと、自分の領土の情報を語りだした。主に基地の場所などの情報だったのだが、クラウスたちはそれらも事前に全て知っていることなので驚きは無かった。

 全て喋ったあとは同伴していた愛人らと同じ檻に入れてやった。彼が自害するのを危惧する声もあったが、それはそれで構わない。何せ人質としての価値もそれほどあるわけではないからだ。


クラウス「それにしても殺さず済むとは。ホースは陸でも導入しておきたいものだの」


ハラルド「ああっ、そいつはいい。最近では勢い余って全員殺してしまうからな」


 強くなりすぎた弊害というやつだ。手加減したつもりが殺してしまうことが起こりがちで、彼らは真面目にそのことを考えていた。


 さておき、たった一隻の帆船が八十三隻もの船を相手に完勝したという伝説は、新型大砲の革命的技術を物語る史実として未来永劫語り継がれることとなる。

 ハラルドの水遊びは絵本の中でもとくに男の子の人気作として、おもちゃの水鉄砲などと共に親しまれるのだった。

 物語の構成上、史実にするか? という点では悩んでいます。今のところは息抜きで書いたスピンオフ作品として位置づけています。


 いずれにせよ、メレン=クニンガタール(海の女王号)、現代的な戦艦用の大砲、水を高圧縮して放つホース、『ハラルドの水遊び』という絵本などは本編でも登場予定です。

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