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02 西 レインズ森林



※感想にてご指摘を受け、この02と07でデスペナの描写が違う事が判明しました。

よって、このページの該当部分を削除。

以降は07で描写したデスペナが正式なものという事で、よろしくお願いします。


 レインズ森林。


 オリジンの街の西門から出てしばらく行くとそのフィールドはある。

 配置されているMOBモンスターオブジェクトは基本獣型で、さっきクエストにもあったバレットラビット、狼タイプのブラックウルフ、狐タイプのフォレストフォックスがいる。


 ただしこれは入り口付近というか、森の浅いところだけで、深いところに行くと1段階強くなったモンスターが徘徊している。

 そこは『ウォレス大森林』という別エリアで、見た目にはレインズ森林と地続きになっているため境目がわからず、知らず知らずに入り込んでしまうプレイヤーがβ時代には多くいた。


 ウォレス大森林には、バレットラビットの気性を荒くしたバージョンのジェットラビット、ブラックウルフの上位存在のダークウルフ、フォレストフォックスの上位存在のカモフラージュフォックスがいる。

 どいつもこいつも中々に厄介で、ついでに言えば『ウォレス大森林』の適正レベルは15~なので、グリンズ荒野で楽に狩りが出来るようになったら来るのがベターだろう。


 ちなみに、ウォレス大森林にはオーガがフィールドボスという立場で配置されていて、レベルは25もありウォレス大森林の通常モンスターよりも強い。

 おまけに、いつもはウォレス大森林にいるくせに、たまにレインズ森林の方までやってくるので始末が悪い。もしレベルの低いうちに出会ってしまったら、諦めて大人しく死に戻りをした方が賢明である。


「……お、いた」


 さて、そんなレインズ森林で隠密のスキル《隠形》を使いながら歩いていると、早速目的のバレットラビットを発見した。

 バレットラビットは大体3匹でひとまとめの湧き方をするので、特性も加味して、1匹倒せれば上出来、2匹なら奇跡、3匹倒せれば言うこと無しだ。


 ちなみに。

 スキル《隠形》は、布装備または革装備の時のみにおいて、自身の気配を薄くし、自分の行動で発生する音を小さくする効果がある。

 ゲームを始めたばかりならどのジョブで始めても革装備か布装備なので、そういう意味では汎用的なスキルだ。

 また、このスキルを後から生やしたい場合は、とにかく抜き足差し足忍び足で、静かに、気配を消すように気を付けて動いていれば、いつの間にか勝手に生えている。


 ……まあ『隠密』だと初期スキルなわけだが。


「んー……よし、とりあえず撃つか。――と、その前に」


 のんびりと草を食んでいるバレットラビットを横目に、オレは課金ショップのマーケット画面を開いた。

 並ぶ課金アイテムの中から経験値ブースト系のアイテムを探し、早速1つ買う。


 GWOの経験値ブーストアイテムは、1つ1500円でリアル時間にして1週間の時間、経験値を2倍するアイテムだ。

 GWOではリアル時間と同じで、24時間が1日になっている。

 朝、昼、夜も現実のそれと連動して変化するので、時差を感じる事もなくプレイ出来る。

 昨今のVRMMOはゲーム内時間が引き延ばされているものも多くあるので、地味に嬉しい仕様だ。


 アイテム自体は映画のチケットみたいな感じで、点線から切り離せば半券が手元に残りあとは消滅。半券もリアル1週間が経てば消えるので、インベントリを圧迫する事もない。

 という事で、早速チケットを点線から切り離し、半券をインベントリへ。

 すると、視界の左上のゲージ群の横に、経験値ブーストバフのアイコンが表示された。


「これで良し。あとは狩るだけだ」


 ところで、GWOには致命傷システムがある。

 致命傷システムとは、例えば心臓や脳に攻撃されると即死するとか、脊髄に攻撃を受けると度合いによって身体が麻痺するというシステムである。

 これはMOB、プレイヤー問わず適用されていて、例えば、今狙っているバレットラビットの頭部を撃ち抜けば、即死、または致命傷判定で動かなくなるという事になる。


 説明されると結構怖いシステムだが、このシステムを上手く使えれば狩りがグンと楽になるので、頑張ってプレイングスキルを上げよう! というわけだ。

 ちなみに、先述のオーガを始めとした強力なモンスターには致命傷システムは働かず、せいぜいクリティカル判定としてダメージが増加する程度である。


「……まずは1匹」


 よーく狙って、3匹いるバレットラビットのうち一番奥側にいる個体の頭部を目掛け、引き金を引く。

 見た目はフリントロック式の癖に近代のオートマ拳銃のような『パァン!』という乾いた音を立てて弾丸が射出され、狙い通りにバレットラビットの頭部を撃ち抜いた。


 と同時に、残り2匹のバレットラビットが食事状態から一気に警戒状態になり、耳をピーンと立てながら辺りをキョロキョロと見回している。


 が、残念ながらオレが見つかる事はない。

 レインズ森林に生えている木はどれも成人男性2人でようやく一周という太さをしているので、そこに隠れながら《隠形》を使えば、バレットラビット程度にならまずバレる事はない。

 気を付ける事があるとすれば、攻撃のタイミングでは《隠形》の効果が切れてしまうので、それくらいだろうか。


「――そろそろいいかな?」


 時折チラチラと木の陰からラビット達を確認し、警戒から食事に移行したタイミングで、今度は両手の銃それぞれで1匹ずつに狙いを付け、撃つ。

 射出された弾丸はまるでそうなるのが当然だと言うかのようにラビット達の頭部に吸い込まれ、そばに浮かぶHPゲージを真っ黒に染めた。

 それはHPの全損。――すなわち、即死である。


 GWOの良いところの1つとして、HPの視覚化が挙げられる。

 プレイヤー、NPC、モンスター問わず、通常のフィールドにいる存在はHPゲージが必ず表示されるのである。

 これによって回復役(ヒーラー)の負担軽減はもちろん、護衛クエストでの護衛対象を守りやすくなったり、強力なボスモンスターとの長時間の戦闘での徒労感がなくなっている。

 本当に……本当にありがたい仕様だ。


 そしてもう1つ。

 ドロップアイテムの自動回収だ。

 モンスターを倒せば、たとえそのモンスターがどれだけ遠くにいたとしても、インベントリにドロップアイテムが入っている、

 パーティを組めば、パーティメンバー全員が通常ドロップ品を獲得出来るのだ。

 ただしレアドロップは、パーティメンバーの誰か1人がランダムで獲得、という事になる。レアドロップはドロップ率も低いので、リアルラックに頼るしかない。

 ……まあ、大抵の奴が悲しみを背負うが。


 ……いやまあ、天鱗ほど低確率とは言わんけど、大体そんな感じだ。

 ソシャゲのガチャで最高レアより1つ下のレアが出るくらいの確率と思って欲しい。

 要するに、『出る時はめっちゃ出る』だ。


「……とりあえず3つか」


 ともあれ。

 3匹のバレットラビットを狩って得たのは、《弾丸ウサギの皮》《弾丸ウサギの肉》《弾丸ウサギの骨》の3種類と《弾丸ウサギの魔石》だ。

 この『魔石』というアイテムは全モンスターの通常ドロップで、《召喚術》というスキルを使って使い魔を召喚する時の触媒になる。

 召喚される使い魔は触媒に使った魔石を所持していたモンスターの種類と強さに準じるので、カッコよくて強い使い魔が欲しい場合は、それなりの魔石を用意する必要がある。


 そして――。


「うん。レベルもいい感じに上がってるな」


 メッセージログを確認して、流れたメッセージを見ながら独りごちる。



 ――《ゼロ》のレベルが3に上昇しました。

 ――《換装士》のレベルが4に上昇しました。

 ――《隠密》のレベルが3に上昇しました。

 ――スキル《銃撃術》のレベルが3に上昇しました。

 ――スキル《隠形》のレベルが4に上昇しました。

 ――スキル《気配遮断》のレベルが3に上昇しました。



 経験値ブースト込みでこれなら中々の効率だ。


 ちなみに。

 プレイヤーレベルが上がるとステータスが成長し、ジョブレベルが上がると剣士ならSTR、魔法使いならINTにとジョブ毎に特定のステータスの成長にボーナスが付く。

 スキルレベルが上がるとアーツを習得し、一定のレベルまで上がれば派生スキルが習得出来るようになったり、スキルが上位のものになったりする。


 オレのジョブで言えば、《換装士》は残念ながらどのステータスにも補正が乗らない。その代わりと言えばいいのか、平均的な、穴のないステータスに仕上がる。

 良く言えば万能、悪く言えば器用貧乏。それが《換装士》だ。


《隠密》はSTR、DEX、AGIにボーナスだが、特にAGIに多くボーナスが付く。

 これは、隠密が《忍者》や《軽業師》の前提ジョブであるが故だ。まあ、それらのジョブになるには、他にも前提になるジョブをマスターしなきゃならないんだが。


 それから、プレイヤーレベルが1つ上がる毎にスキルポイントというのが5ポイント貰える。ステータスポイントってヤツも5ポイント貰える。


 スキルポイントは既に持っているスキルに規定の値を振り分けてレベルを上げられる他、パッシブスキルを取得するのに使える。

 パッシブスキルには《STR上昇》とか《VIT上昇》とかのスキルがあるので、取っておいて損はない。より特化したい場合は、ジョブに合ったパッシブを取るのがベストだ。


 ステータスポイントは、その名の通りステータスに割り振れるポイント。1ポイント消費でいずれかのステータスが1上昇する。

 レベルが低いうちは5ポイントだが、レベルが上がると6とか7とか貰える。地味に嬉しい。

 低いステータスを補うも良し、高いステータスを更に伸ばすも良しである。


 ちなみに、新規でパッシブスキルを取る時は一律で5スキルポイントが必要。

 スキルレベルアップには現在のレベルに応じてスキルポイントを消費する必要があるので、スキルポイントは新規に取得する時だけ使う方が賢明である。


 後の事も考えて、オレは《STR上昇》《AGI上昇》を取得。

 換装士/隠密で始めるとSTRがあんまり伸びなくて火力不足になりがちなので、これが現状ではベストな選択だ

 ステータス【AGI】は行動速度や回避率、アーツの硬直時間、アーツのクールタイム短縮に関わってくるから、二挺拳銃を使うなら必要になる。


「よし、これでいい。《隠形》を使いながら狩りまくろう」


 兎狩りの始まりである。




   ◆




「――っし。これで54匹目だな」


 視界の奥。目算で大体30メートルは離れている場所にいる3匹のバレットラビットが光の粒子になって消えていくのを見ながら言う。

 最初の3匹を狩ってから約1時間半が経過した今、オレは、18グループ目のバレットラビットを討伐せしめていた。



【基本情報】

 名前:ゼロ

 レベル:8

 種族:人族

 メインジョブ:換装士Lv9

 サブジョブ:隠密Lv8

 STR:42

 VIT:40

 INT:38

 MND:36

 DEX:49

 AGI:51


【称号】

 なし


【戦闘系】

 剣術Lv1 大剣術Lv1 短剣術Lv1

 槍術Lv1 杖術Lv1 棒術Lv1 鎚術Lv1

 銃撃術Lv10 格闘術Lv1 刀術Lv1

 盾術Lv1 投擲術Lv1 武技の心得Lv1


【魔法系】

 火魔法Lv1 水魔法Lv1 地魔法Lv1

 風魔法Lv1 光魔法Lv1 闇魔法Lv1

 治癒魔法Lv1 生活魔法Lv-- 詠唱短縮Lv1

 魔導の心得Lv1 


【特殊系】

 気配感知:Lv1 敵意感知Lv5 魔力感知Lv6

 鑑定Lv6 暗視Lv2 隠形Lv8 気配遮断Lv8

 速読術Lv15 高速理解Lv16 語学Lv12

 換装Lv-- 


【生産系】

 採取Lv1 採掘Lv1 

 調合Lv1 錬金Lv1 鍛冶Lv1

 生産の心得Lv1


【能力上昇系】

 俊足Lv11 整息Lv10 回避Lv8

 精密動作Lv13 STR上昇Lv7 AGI上昇Lv8


 お金:2000コール



 この約1時間半の成果がこれである。

 ラビットを狩る途中でブラックウルフやフォレストフォックスも狩ったりしたが、レベルが5になったあたりから経験値がしょっぱくなった。

 それでもレベル8まで上げられたが、ここからは東のマルファ湿原に行かないとロクに経験値が入らない。


 ついでに。


「もうお昼だしなぁ……。兎も結構狩ったし、オリジンに戻ってログアウトだな」


 そう。もう昼食の時間なのだ。

 だから、一旦ログアウトするという意味でも、オリジンに戻る必要がある。


 ちなみに、戦闘状態でなければ基本どこでもログアウト出来る。

 が、ログイン中からGWOへのダイブが完了するまではアバターは無防備なので、なるべく街やフィールド内のセーフティエリアでログアウトするのが望ましい。

 ログイン直後に死に戻りとかシャレにならないので。


「うん。オーガに出会(でくわ)さないうちに帰るか。倒せなくはないだろうけど、火力しょっぱいから時間かかるだろうし」


 彼我のレベル差は17。

 プレイヤースキル的には問題ないかも知れないが、ルーキー装備じゃロクなダメージにならんので戦闘にならないのが望ましい。


 さあ、帰ろう。

 昼御飯は何を食べようか……?


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