休養日②
グレゴリは冒険者ギルドを訪れていた、道中引き受けたモンスター退治で手に入れた素材やクエストの精算をする為だった。
「ではギルドカードを」
スッとギルドカードを提示する、Aランク以上の冒険者が珍しいのか、金のカードが珍しいのか受付は一瞬だけ固まり手続きを始めた、そしてカードで冒険者情報を確認、
「ひっ、S!?」
受付がそう言った瞬間、ギルド内の空気が変わる
周囲もヒソヒソと遠巻きにグレゴリの様子を伺っていた。
「おい、あいつ金のカード出したぞ・・・」
「金のカードなんて初めて見た・・・」
「Aオーバーの奴なんて本当に居るのかよ・・・」
「Sつったか!?」
「偽物か?」
「いや、受付で何も言わずに処理してる、本物だ・・・」
「ん?」
ひそひそ話の中で気になる言葉がいくつかあった、Bランク以上がそんなに珍しいのだろうか
「お待たせしました、素材は裏の解体場でお願いします、その後こちらでの精算となりますので・・・」
「ああ、ありがとう、所で聞きたいのだが少し良いかな?」
「はい、どうぞ?」
「金のカードは珍しいのか?」
「そ、そうですね、私はこちらのギルドに10年程居ますが、それでも見たのは数える程です」
「こちらのギルドの規模だとかなり大きいと思うのだが、それでもそんなものなのか?」
「はい、こちらは魔法都市にあるギルドに次ぐ規模でいます、そもそも魔法国内でAランク以上の冒険者が30名程ですので中々・・・」
「Aランク冒険者とそれ以上の割合は分かるか?」
「金のギルドカードで登録されている冒険者全てがAランクとなっております、なのでSは私も初めて見ました・・・」
「お、おお・・・」
これはまずいとグレゴリに嫌な汗が流れる、
「ち、因みに参考までに聞きたいのだが、S+はどういった存在になるんだ?」
「S+ですと単独での大型竜種討伐、若しくはパーティーでの龍種討伐が条件となりますので、正直に申し上げまして化け物、かと・・・」
おずおずと言う受付の様子からしてSの時点で十分化け物と言っているように受け取れた
「S+は何人なんだ?」
「S+は、魔法国に一人、王国には少し前まで二人居りましたが他国へと、近隣の国でも大体は一人か二人です」
単独で大型竜種を討伐出来そうな人に心当たりがある、つい最近世話になったばかりの・・・
「魔法国のS+は、まさか貴族では無いのか?」
「あ、はい!そうですね、魔法都市に居られるルナリア公爵家現当主サイリ・ルナリア様です」
「・・・」
あの人、単独で大型竜倒しているのか・・・
貴族なのに何してるんだ、と呆れるグレゴリ。
「あ、あの?」
「ああ、ありがとう助かったよ」
冒険者ランクも悪目立ちしそうだ、今更ながら気付くとは気を付けよう・・・
その後解体場で素材を全て取り出すと道中で倒した大怪鳥には賞金が掛かっていたらしく報奨金800万が追加で支払われ、合計1200万程の収入になった。
「怪鳥のようなモンスターらは倒しても実入りが弱くて空を飛ぶから手間も掛かるしで、中々冒険者も倒そうとしないから国で賞金を掛けているのです、同じ飛ぶモンスターでもワイバーンやドラゴンは素材が良いのですぐ討伐されるのですが・・・」
と、受付は嘆いていた。
確かに手間がやたらと掛かるからな飛ぶモンスターは・・・
だが、これだけの収入となるならば、例えば数年専門で討伐してしまえばかなりの金額になる、早めに貯蓄を貯えて冒険者を引退してゆっくりと過ごすのも悪くないか?
いやしかし倒す手間がな、同じ狩り尽くすならドラゴンをやっていた方が楽だし儲けも良さそうだし、飛行モンスターを狙うなら是非とも灯に手伝って貰いたいが・・・
灯は金に困っていない、現金もモンスター素材という潜在的な資産もかなりの、いや下手をすると世界一の資産家の可能性もあるし、今や灯は公爵家の娘、金稼ぎたいから手伝ってくれと言うのは無礼にも程があるだろう。
「やるなら竜種だな・・・」
瞬、陸、鈴、グレゴリ
中衛、物理前衛、回復、盾役、高ランク冒険者でこの構成なら危なげなくドラゴンは狩る事が出来る。
討伐時の安定感、身入りも良いし、空を飛ぶモンスターを相手にするより余程楽な相手だ
いやいや、モンスター討伐に固執せずとも手持ちでも十分家を買い、商売するだけの資金はある、そういう道もアリだな。
「今度皆と話し合おう・・・」
歳のせいか先の事をアレコレ考えてしまう、旅も悪くないが自分の年齢34を考えると数年内にはどうにかしないといけない問題だ、40過ぎて冒険者では中々辛いものが有るだろうし
「サイリさんの所で護衛か御者として雇って貰えないだろうか」
自分の固さを考えれば並の襲撃者は歯が立たないだろうし、今度売り込んでみようか?
若者は若者で先が不安であろうが、おじさんもおじさんで悩み事はあった・・・




