果ての街でこれから。
食事を頂き、用意された部屋で寝・・・
「灯ちゃん一緒に寝よう!」
マリと一緒に寝る灯、空は明るくなって来ているが、昨夜からの出来事の連続での疲れと、お腹を満たされた事により、人肌の心地良さも合わさりベッドに入ってすぐに意識を手放す。
先に目を覚ましたのはマリ
「ん、」
意識が覚醒するにつれ違和感を感じる、何か温かい・・・
目を開けてギョッとする、目の前には黒髪の美少女。
あ、そっか一緒に寝たんだったと思い出し、灯をまじまじと観察する。
可愛い・・・、ううん、可憐、ね。
本人は胸の大きさを気にしていたけど、そんな事は些細な程の美少女だ、漆黒の髪は艶やかで、睫毛は長く、顔は整っている、まだ幼さを残しているが将来はきっと美人になる。
私も十分美人と言われる部類に入るけど、彼女とはタイプが違うし・・・
それにしてもいい匂いね、この子、同じお風呂に入って、同じ洗髪剤を使ったのにこんなにまで違うのかと思う、柔らかくて温かく甘い
「んんっ」
思考に耽っていると、灯が動きギュッと抱き着いてくる。
はあー、もう!本当に違う道に進みそう、この子凄く良い!抱き心地が!
思わずマリもギュッとしてしまう。
「っていけない、そろそろ、灯、起きて、もうお昼よ・・・、灯。」
声を掛けると瞼がピクリと反応
「ん、んー?」
「ほら、起きなさい灯」
「んー・・・」
ポーとしながらも起きる
「お姉ちゃん?おはよー」
にへらと無防備に笑う灯
「っ!!」
何この子!もう止めてよね、タラシ?天然なの!?
1人悶えるマリであった。
グレゴリと灯は寝起きに昼食を摂り、客間で今後の話し合いをする。
「これからどうします?」
「大まかには消耗品を補充して、王都を目指す」
「ですね、時短移動使えたら一瞬だったのに」
「使えないものは仕方が無い、そもそもファストトラベルはゲーム的にカットしているだけで時間は進んでいるからな」
「だよねー、地道に移動するしかないか、ゴリさん何日掛かるか分かる?」
「いや、馬に乗って移動した事はあるが、ゲーム内の日付けの概念は意識した事ないからな・・・」
「ですよねー?日数はお姉ちゃんに聞いて確認しよっか」
「だな」
「何か買いに行く物ある?私は有るんだけど」
「俺もある、幸い此処は道具屋だから消耗品は最後で良いだろう」
「うん、私全身を覆えるマント、ポンチョ?欲しいな、昨日土埃が凄くて髪洗うの大変だったよ」
「確かにそうだな、俺も買うか・・・」
「あとゴリさん装備の見た目変えたら?街中で全身鎧はちょっと・・・」
「だよな、門番の視線からも分かっていたが、必要素材が生憎手元に無くてな、この際街着用に一式揃えた方が良いかなと思っている」
「そだねー、私も居心地良いのにして欲しいな、金属は痛くて・・・」
「・・・肩、やっぱり乗るのか?」
「そういう訳じゃ無いけど、移動用としても、一式×2セットは要るんじゃない?ゴリさん他の装備持ってないでしょ」
「実は、この黒精霊銀鎧シリーズ買うのに全部・・・」
「散財したんだ・・・、まあ高いもんね黒精霊銀、モンスタードロップを除けば最高の装備だし、なんならお金貸そうか?」
「・・・良いのか?情けない事に正直助かる・・・」
「良いよー、私最終装備になったし、お金は元々余ってたからね、1億カネーで良い?」
「何っ!?1億!どれだけ持っているんだよ・・・」
「今、24億とちょっと、かな」
「多分だが、その「ちょっと」で十分だ」
「そう?じゃ、はい2000万カネー」
「・・・」
「どしたの?ゴリさん」
「課金か?」
「ううん、ずっと遊んでいたら貯まってた」
「貯まってたって、学校とか生活あるだろう、どれだけプレイしてたんだ・・・」
「・・・、学校、行ってないもん・・・」
場が静まりかえる、学校に行ってない、と。
「行って、ないのか」
「うん・・・」
「聞いても良いのか?」
「うん、聞いて・・・」
「ああ、聞こう、話してみろ」
「うん、あのね、黒龍討伐4人でやったって言ったじゃん」
「ああ」
「皆、幼馴染でね、昔から一緒に遊んでたんだ、鈴姉と陸、瞬兄と私の4人でさ、あ、瞬兄と陸が兄弟でね、鈴姉と陸が1つ上、瞬兄が2つ上なの、鈴姉は怒ると怖いけど優しくてね、陸はいつも落ち着いてしっかりしてて、凄いんだよ瞬兄何でも出来るんだ、足速くて、頭良くて、優しくてね、頼れるんだ・・・」
「そうか」
「でね、中学生になった時も同じ学区だから一緒で嬉しくて楽しくて、あの時が1番楽しかったな、でも瞬兄が卒業して2年生になってからさ、持ち物無くなったりしてね、探すと見つかるんだけどボロボロになってたりして・・・、鈴姉と陸が気付いて助けてくれてね・・・、まだ大丈夫だったんだ、でも鈴姉と陸が卒業してから・・・」
「・・・」
言葉が続かない灯に、じっと待つグレゴリ。
「3年生になってから、直接叩かれたり色々言われてね」
「言われた?」
「うん、「あなたなんかが瞬先輩達の周りをウロチョロして何様のつもり」って言われてさ、私鈍いからさ知らなかったな、瞬兄と陸があんなに人気有ったなんて、カッコイイもんね、当たり前か、へへっ・・・」
「・・・」
くだらない、嫉妬などと、しかも人に当たるなど、本当にくだらない話だ・・・
「最初は我慢してたんだ、でもすぐに耐えられなくなっちゃって、1ヶ月ももたなかったよ、4月の終わりくらいかな、学校サボっちゃってね・・・、すぐバレちゃってさ、お父さんに「行きたくないなら行きたくないと言え!突然居なくなったら心配するだろ」って怒鳴られちゃって、お母さんは無言で抱き締めてくるし、悪い事したのは私なのに泣いちゃって、行きたくないって言ったら「行かなくていい、家に居ろ!」っておかしな親だよねー」
「ああ、だが優しい御両親だ」
「うん、で、そこからはずっと学校行かないで家事をしたり、自習したり、何もしなかったり、そうしたらお父さんが「これやれ!面白いから」ってVRギア買ってきて、普通引きこもりの子供にゲーム与えないでしょ、って笑っちゃってさ、それからはずっとゲームばかりで、アークオンラインって魔法創れるでしょ、お父さんとお母さんプログラマーやってるんだけど、それまでは何も教えてくれなかったのに魔法のソース見せたらアレがダメだコレがダメだ、ってプロがダメ出ししてさ、悔しくて頑張って魔法創っていたらその内「凄い」「これは売れる」とか言い出して、私も嬉しくてどんどん魔法新しく創ったり、作り替えたりしてたらある日「灯、これ、アルバイトやらないか」って、本職の仕様書持って来てね」
「凄いな」
「うん、お父さんとお母さん、私の魔法のソースを見せて会社の社長に言ってアルバイトの仕事回してくれたんだよ」
いや、凄いのは灯の事なんだが、まあいいか・・・
「ゲームやって、アルバイトやって、夢中になってたら、いつ間にか夏休み前になってて、まあ休みなんて関係無いんだけど、みんな家に来ちゃってさ、凄い気まずくて・・・」
「・・・」
「鈴姉が「灯、何があったの?」って、私意地張っちゃって、「何も、つまんないから行ってないだけ」って言っちゃって、陸は黙っていたんだけど、瞬兄が「学校行ってないのに何も無い訳ないだろ!」って、初めてだったな、あんなに怒った瞬兄見たの・・・、言える訳ないのにね、瞬兄達を好きな子達にいじめられた、そのせいで学校行きたくない、なんて」
「っ・・・」
そうだ、言える訳が無い、灯は優しい、そんな幼馴染が気にするような原因を言える筈がない・・・
「私が悪いんだ、きっと・・・」
違う、悪いのはいじめた奴らだ、いじめられる者にも原因があるだなんて巫山戯た話あるものか!
「ずっと黙る私に呆れたんだろうね、そのままみんな帰っちゃってさ、勝手に1人で落ち込んで・・・
そしたら次の日もみんな来て、何も無かったように遊んで、また次の日も、その次の日も来てくれて、折角の夏休みになっても来てくれてさ・・・」
「優しいんだな」
「うん、みんな優しいんだ、ゴリさん知ってる?優しさって溜まるんだよ、毎日毎日みんな来て、暖かくて、嬉しくて、ある日溢れちゃってみんなの前で号泣しちゃってさ、突然泣き出した私を鈴姉が抱き締めて撫でてくれて、それも嬉しくて涙止まらなくて、そのまま疲れ切って寝ちゃってさ・・・」
「うん」
「あっという間に夏休み終わっちゃって、寂しいなって零しちゃって、我儘だよね私。」
「いや」
そんな事は決してない。
「そしたら、みんなアークオンライン始めてね、安い物じゃ無いのに、ソフトとギアも必要だし、専用のナノマシンプログラムを病院で入れて貰わないとダメでしょ?」
「ああ」
アークオンラインはVRギアと体内のナノマシンを使ったフルダイブVRMMOだ、体内には産まれた時に医療用ナノマシンを入れられているが、最近になってその技術と管理が民間へと解禁、ナノマシンに追加のプログラムを付与する事で色々な事が可能となった。
文字通りネットの海へと意識を飛ばす事の出来るこのゲームは、圧倒的な擬似体感を実現している。
「それからは楽しかったな、みんな凄い速度で上達するんだもん、特に瞬兄は・・・」
瞬とやらの話が多い、好きなのか?
「・・・、多分、みんな知ってたんだ、ううん、きっと調べた」
「学校行かなくなった原因か?」
「うん、あの瞬兄が気になったことをそのまま放置する事なんてしないもん、多分・・・」
「だが、その時には学校なんてどうでも良かったんだろう?」
「え、あ、うん・・・、そうだね、アルバイトも上手くいってて、社長さんが直接家に来た事があってね、在宅で良いからアルバイト続けて、18になったら正社員にならないか?って、それまでは会社潰れないように頑張るから嬢ちゃんも頑張れや、って・・・」
バンッ!突然扉が開かれてビックリする
「あがりーっ」
ぶわわっと号泣したマリが飛び込んで来る
「ぐえ」
飛び込んで来た勢いそのままに力の限り抱き締められる灯。
「わだじは、あなだをうらぎっだりしないがらー」
「ぐええ、苦し、聞いてたのお姉っ」
「いづでもぎなざいっ、ごごもあなだのいえだがらっ」
「落ち着け、マリ・・・、灯が落ちるぞ」




