旅路③
昨夜は結局、身の回りに瞬が結界を張り直し、更に鈴が出来るだけ大きく結界を張って二重にする事で見える範囲にモンスターが居ないようにして過ごした。
「さて、少し行けば村だが」
「当たると良いね」
「こればかりはクジ引きと同じで引かねば分からんからな」
手当り次第に人の居る場所を巡るしかない旅だ、大きな街の方が当然確率は上がるが道程の都合上小さな所も回りつつ地道に行くしかない。
二、三集落を通ったが直ぐに見つかるなど上手い話は無い、だが毎回村や町に入る直前で皆顔が強ばっていた
理由は、先ず顔も名前も知らない相手を親と呼べるのかという問題、親子かどうかは会えば「理解」出来るという事らしいが
灯の様に最初から無条件で父母を受け入れるのはレアケースで、大体はぎこち無い関係から少しずつ認めて行くとの事だ。
そして、親も子も会って喜ぶ保証も無かった、何?今更・・・、と言われる可能性もあるし、立場のある人間なら跡継ぎのような政治的な問題や家自体に問題がある可能性もある、正直皆憂鬱な思いを抱えていた。
それでも灯を置いて旅に出たのは理由がある、少なくとも自分のルーツ生い立ちの確認は今後の人生を送るに辺り必要な事だ、例えば灯と瞬が今後上手く付き合いを続けて結婚へと至った時、後追いで瞬が実はどこぞの立場有る人の子供と判明し、そこから介入されると面倒な事になるので良くも悪くも己の身の上を知っておく事は必要だと言える
。
「灯のパターンだと嬉しいけどね、あの子程素直に受け入れる自信は無いけど・・・」
「そうだね・・・」
「最悪、犯罪者とか野盗とか・・・」
「死亡している可能性も」
「せめて生きていて、普通を望みたいけど」
「鈴の場合、エルフじゃないの?銀髪だし」
「キャラメイクで選んだ色がそのまま自分の容姿になると知ってたらもう少し・・・」
「ははっ!確かにな」
「それを言うならば俺は身長230cmになんてしなかったぞ・・・」
「ドンマイ、グレさん」
「グレゴリさんは巨人族になるのかな?」
「巨人族にしては小さいし、人としては大きいし、ハーフかクォーター?」
「あくまでも異界還りで世界を移動した場合の仮説だからな、それに当てはまらない単純にゲーム異世界転移の可能性もあるな」
「俺達は少なくとも地球の存在確認出来なかったのは瞬が見た通りだし、勇者や聖女みたいな異界召喚は文字通り他の世界から行方不明で来た扱いらしいから、変化する可能性は高いよね」
「それにしても見つかる見つからないに関係無く、期間で区切っていた方が良いかも」
「見つからないと言って、いつまでも灯を一人にしたくないしね」
「灯が獣人として安定するのは最長で二年か・・・」
「前例通りならね、灯って良くも悪くもこの世界に来てから規格外だからどうなるか」
「獣人化して身体能力上がっているなら、ステータスも向上しているよね?」
「獅子獣人は総じて能力高い上に、その中でも優れた黒を持つ者と言われているから、下手すると肉弾戦もこなせる支援魔法使いになっている可能性さえあるな」
「武闘派魔法使い?」
「サイリさん並、とか?」
「・・・」
「・・・」
「最強じゃね?」
魔法による索敵と獣人の聴覚嗅覚で先手不意打ちは取れない、相手の動きは筒抜け、即時展開魔法で鉄壁かつブースト可能、サイリさん譲りの化物じみた格闘能力?
「元々身体能力無くても敵に回したら厄介なのに、前衛能力付いたら、まあ・・・」
「サイリさんの事だ、灯より弱い奴と交際は認めない!と言い出しそうだな」
「嘘だろ・・・、俺、灯と戦うことになんの?」
「いや、そこはサイリさん本人と戦うんじゃない?」
「俺が戦うとしたら灯は避けたい所だな」
グレゴリさんが心底嫌そうな顔をしている、それもそうだ桁違いに強いと言っても単純に物理アタッカーなサイリさんと、あの手この手で搦手を使ってくる灯では、灯の方が何かとやりにくく厄介過ぎる相手だ。
「下手すると完封されるものね、完全隠匿魔法使われて捕捉する前に空でも飛ばれたら」
「何も出来んな、魔法自体にはステルス掛けられるのか?」
「そこまで仕様は確認してないから・・・」
「当たる瞬間まで攻撃魔法を認識出来ないまで有るな、それは」
「いや、でも灯は攻撃魔法使えないから」
「使ってたよ、森で」
陸が森で見た内容を話した、棘拘束で紅人狼を絡め取り棘で串刺しにした事を。
「モンスターにはマジで容赦しないな・・・」
「そもそも攻撃魔法無くてもだな、底無し沼とか作れるし重力で火竜も圧殺したぞ」
「俺、頑張ってサイリさんに勝つわ・・・」
そもそもの話として灯に攻撃出来ない瞬である、サイリも娘に怪我はさせたくないだろうから、やはりサイリと決闘するしか無かった。
「セバスさんの話ぶりだと、勝たなくても認められる力を示せば良いって感じじゃなかった?」
「どちらにせよ難易度高い事に変わりはないな、強過ぎんだよあの人」
自分達はLv100でカンストしていると言うのに、軽くあしらわれた記憶が蘇る。
「リリスさんは賛成してるみたいだから最終的に大丈夫な気もするね」
「んな情けない事出来るか、認めて貰う!」
「そう、頑張ってね」
皆、瞬を微笑ましく見ていた
灯がずっと想っていてもそれに気付かなかった瞬が、今は恋人となった灯の為に頑張ろうとしているのだから。




