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仲直り②

それより瞬、仲直り出来たの?」

「ああ、まあ、なんとか・・・」

「なんとか、って何?引っ掛かる言い方して」

「大丈夫、灯は怒ってなかったよ、ビックリしただけだからって」

「そう、なら良いけど・・・」

「一先ず安心して旅に行けるかな?」

「だな」

そんな話をして就寝した瞬達、対してエルは。



「お母さんお母さん」

「どうしたのエル、アリィも離さないでしょうからそのまま寝てしまいなさい」

エルは灯にガッシリ捕まってベッドから出られない、スヤスヤと眠る灯の顔色は良く、気持ち良さそうにエルに抱きついていた。

最近は顔色も悪く、食事もあまり摂れていなかったのだが

マタタビ草の効果であるならば今後日常生活が改善出来る可能性が出て来た。

異界還りで戻って来た子には本人が直接必要な手続きもあるし、会わせたい人も何人か居る、しかし灯の身体の変調の波が大き過ぎて中々実現していなかった。


「うん、そうなんだけど明日話したい事あるから」

「明日?分かったわ、ほらおやすみなさい・・・」

「おやすみなさい・・・」


そして早朝、瞬達は馬車で旅立った。

見送りはサイリ、リリス、セバスの三人、リリスがエルとアリィの様子を見に行ったが二人共眠りが深く、特にアリィは最近の体調不良を考えると起こすのも躊躇われた為、やはり見送りはできなかった。


瞬達は魔法都市内を時間を見つけては歩き回っていたのだが、皆変化を感じる事も無く、魔法都市出身はどうやら灯だけであったようだ。

「お世話になりました、灯の事よろしくお願いします」

「ああ、勿論だよ」

「気を付けてね、無理はしちゃダメよ」

「ありがとうございます」

「皆様、まだ教えたい事が沢山有ります、必ず帰ってくるように」

「いや、それは遠慮したいけど、無事には帰って来ます・・・」

「グレゴリさん、これを・・・」

サイリがグレゴリに銀貨のようなものを渡す

「これは?」

「ルナリア家の庇護を示す物です、何かあれば使って下さい」

「良いのですか?細工からしてかなりの貴重品では・・・」

「ええ、とても高価な物です、だから必ず返しに来て下さい、持ったまま居なくなったらアリィと一緒に地獄の底まで探しに行きますからね」

ニコリと笑ったサイリの目は全く笑っていない、意訳すると「灯が悲しむから必ず帰って来い」だなとグレゴリは理解する。

「分かりました、必ず返還します」

「では、お気を付けて」

ガラガラと馬車が出て行く、次に来るのはいつになるか分からないが近くも遠くもない未来には必ず戻る、そう思い旅立った。




「お母さん聞いてよ!アリィったらね・・・」

エルが昨夜の瞬とアリィの尻尾のやり取りを話す。


「ダメだ、まだ早い・・・」

「へえ・・・、アリィやるじゃない」

「ええ、とても奥ゆかしく、しかし熱い想いを秘めた表現ですね」

「セバス、こういうのは()()()()()と言うのよ、あの子ハッキリ言えないだろうから」

「ハッキリ言えるのも美徳ですが、こういった物言いも素晴らしいものですよリリス様」

獣人は全般的に率直な物言いを好む、それはサイリもリリスもだが、貴族である以上婉曲な表現も身に付けている

「私は許さないぞ・・・、アリィ、いやエルもだ・・・」

「サイリ、あなたその調子でアリィも嫁ぎ遅れにするつもり?エルの縁談も最近はサッパリ来ないじゃない!」

「う、いや、しかしだな・・・」

「サイリ?」

妻のひと睨みで黙るサイリ、主導権は常に妻リリスであった。

サイリは娘を愛する余りエルの縁談を片っ端から蹴り飛ばしていた、14歳の貴族令嬢となれば婚約者が居て当然の年齢、しかも公爵家と言えば引く手数多であるのだが・・・

そして、自分と同じ黒毛を持つ娘灯が帰って来た事で更なる懸念が生じていた、サイリがエルから見ても解る程に灯を溺愛していた、猫可愛がりと言っていい。

「アリィ、君に似合うと思う」

と言っては装飾品を買い

「これ、とても美味しいよ」

と言っては食べ物を持って来る

「お父さん、これ、あげる・・・」

貰ってばかりで気を遣った灯が、サイリにお返しとしてプレゼントをすると

「アリィ・・・、愛しているよ」

「にゃっ!?」

思い切り抱き締めて毛繕いを始めたり・・・

灯も灯で強く拒否も出来ない性格と、サイリの毛繕いがとても心地よく、ゴロゴロと喉を鳴らして黙って受けているものだからサイリも更に上機嫌に灯を構う、という具合にサイリは止まらなかった。

そう、灯の嫁ぎ遅れも容易に想像出来る状況となっている。


「まあいいわ、この話はまた今度・・・、それにしてもアリィも意外と貴族には向いていそうね?」

「そうだね・・・」

「で?瞬君はなんて答えたの?」

「「分かった、灯以外のは触らない」って!」

「あらあらまあ、これは決まりねサイリ」

「ダメだダメだ・・・、早いんだよ・・・、いやずっと家に居ていいのに・・・」

「サイリ、いい加減にしないと・・・」

ミシ、とリリスが持つ扇が軋む。

「・・・」

黙り込むサイリ、何だかんだでエクスとそっくりの親子だとセバスは苦笑していた。

「瞬君の何が不満なのよ」

「私より弱い!私より強くないと認めない・・・」

「なら貴方に勝つ人なら誰でも良いの?」

「ダメだ!強いだけなんて娘達が不幸になる、気遣いが出来て愛してくれる人じゃないと」

「瞬君はアリィを大事にしているし、貴方にかすり傷と言っても傷を負わせたわね?十分強いと思うけど」

「ううっ」

「決まりね?」

本人の預かり知らない所で全てが決まりつつあった。


「良いなぁアリィ、瞬さん格好良いもんね・・・、私にも格好良い人居ないかな」

はあ、とため息を吐いたエル、サイリの一存で縁談を蹴られていた為婚約者は居ない、当然恋人も出来る筈が無かった。

「陸君は?」

「ダメだよ、鈴さんが絶対許さないよ」

「あら?あの二人付き合っているの?」

「うーん、勘だけど、多分」

獣人の()は当たる、スキルや特異能力と言っていい程の精度を示すのだ、第六感と大雑把に類されているが一説には獣人の優れた嗅覚と聴覚で対象の鼓動や分泌物を感じ取り判断している、とも言われていた。


「エリューシア様も瞬様に娶られては?」

「セバス?」

「サイリ様の条件を満たす方など居ませんよ、そもそもサイリ様が強過ぎます、その癖手加減出来ない、私が知る限りサイリ様に勝てる見込みがある人物は瞬様、陸様、グレゴリ様、皆様とてもお強いですが」

「陸君には鈴さんが居るし、鈴さんは一夫多妻を許しそうにない、グレゴリさんは?」

「あー、グレゴリさんには悪いけど単純に好みじゃないかなー?強くてカッコイイとは思うんだけどね」

「瞬君は?」

「魔法も剣も凄いのって格好良いよね、アリィに優しいし、知ってる男の人では一番好きかも」

「エル!?」

獣人の判断基準で「強さ」は重要な要素で、貴族で家格が劣っていても強さで婚約者の座を得る事は少なくない。

「あら、なら善は急げよセバス?」

「馬車ならさほど遠くへは行っていませんね、サイリ様?」

「いや、だがな・・・」

「サイリ、腹括りなさい、娘の幸せを守る貴方が一番の邪魔になってどうするの」

「ぐ・・・」

「お父さん・・・」

「分かった・・・、でもアリィの了解を得るのが条件だ・・・」

「ありがとう!お父さん、アリィに話して来る!」

「無理に起こしちゃ駄目だぞ・・・」

「大丈夫!アリィそろそろ起きるの分かるから!」

そう言うと走って部屋へと行ってしまったエル

「私もアリィに伝えたい事あるから行くわ、サイリお願いね?」

「分かってるよ・・・」

「サイリ様、子は巣立って行くものですよ」

「分かってる!」

ガクリと肩を落とすサイリ、リリスもセバスも仕方の無い人だと苦笑いを浮かべた。



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