しっぽ②
「瞬、エルちゃんに聞いてきたわよ」
「おお、なんだって?」
「結構大変な事だったわ」
「は?」
「・・・どういう事?鈴」
「何やら意外に深刻だったのか?」
「深刻もなにも、エルちゃんの話を総合すると獣人権の侵害みたいな行為らしいわよ」
「獣人、権?」
「んん?」
「何を言われたんだ?」
「瞬が尻尾の先端を撫でて、そのまま根元付近を触ったのって、お腹を撫でていたら近くに胸があったからついでに撫でたみたいな行為らしいわ」
「は?」
「つまり、なんだ、その・・・、エッチと言ったのは完全にセクハラ行為されたから、か?」
「エルちゃんが言うには、ハグされて気持ちよく幸せに浸っていたのに、お尻を揉まれたみたいな・・・」
「うわ、それは最低だ・・・」
「ムードもへったくれも無いな・・・」
「いや、知らなかったし・・・」
「知らなかったなら何しても良いの?胸もお尻も揉んで良いの?瞬さんがした事はそういう事ですよ、ってエルちゃんから伝言を賜っていますが、瞬さん?」
「う」
「まあ世界も国も文化も違うし、まして種族が違えばそういう事もあるでしょ、アリィも獣人成り立てであるように、獣人アリィの幼馴染にも瞬さん達は成り立てですからね、アリィには言っておきますから、だってさ」
エルちゃんがフォローはしてくれるらしいので一安心の瞬だが、それはそれとしてやはり謝らないといけないだろう。
「そうだよな、灯はもう人間じゃなくて獣人なんだもんな・・・」
「ちょっと、言い方」
「分かってる、別にマイナスイメージで言ったわけじゃないし」
「俺達も獣人・・・、いや他種族の事、世界の事を学ばないといけないな」
「そうだね」
今後、この世界で生きて行く場合、最低限の知識とマナーは必須だった。
「次のセバスさんの特訓の時に聞いてみようか、せめて各種族の特色と最低限のマナーは必要でしょ」
「だね」
「特訓しながら話しますから覚えて下さいとか言いそうなのだが・・・」
「グレさん、それは流石に」
「無いでしょー」
「流石にな」
「ええ私が教えましょう、グレゴリ様、瞬様、陸様は組手をしながら覚えてもらいます」
「「「げ」」」
「一つ間違う度に特訓の難易度を上げていきますので」
「うわ、マジか!」
「おやおや、戦闘中にも後衛と周囲に気を配るくらいはやらないと取り返しがつかない事になりますよ、訓練中くらいは頭を使いながら戦えるようになって頂きます」
「あの、私は・・・」
「鈴様には本をお渡ししますので、後程テストさせていただきます」
「はい」
「皆様、幼馴染で仲が良いと言っても、そう何度も無礼は許しませんよ?親しき仲にも礼儀ありです、獣人の尻尾と耳は神経が集まっていてとても繊細なので丁寧な扱いを進言致します」
((((バレてた・・・))))
「また、各種獣人にも言える事ですが、種族の象徴であるそれは彼らの誇りでもあります、決して「獣」とは言わないように、最大の侮辱になりますからね」
「はい」
「人間国最大のエリス王国では、人族は見下す傾向が強いです、特に獣人に対しては・・・」
「奴隷、ですか?」
「はい、獣人は身体能力に優れ、体は頑丈ですからね、グレゴリ様達が此処に到着なさる道中でそういった場面を目にしなかったのは幸運な事でしたね・・・」
セバスさんの表情は厳しい、やはり思う所はあるのだろう
「灯には・・・」
「御安心下さい配慮しております、時期を見てサイリ様とリリス様から御説明なさるでしょう」
「ありがとうございます」
「いいえ、子は宝、配慮は当然の事で御座います」
獣人になって奴隷の事を突然するのも酷な話だ、寧ろずっと知らなくてもいい事とも思えるが自衛意識は必要になる、安全の為にも必要な話にはなるだろう。
「それから皆様にサイリ様から伝言が」
「え?」
「サイリさんから?」
「はい」
サイリさんは多忙だ、貴族当主でもあるし灯の事で何やら手続き等もあるそうで瞬が負けてからは会えていない。
「私は親だからアリィの心配は当然の事、君達の事も心配している、困ったら此処に帰って来てゆっくりするといい、勉強と仕事を選べるくらいの支援は喜んでするからね、です」
「本当に有難い」
「とても助かりますけど、どうしてそこまで・・・」
「灯の幼馴染だから?」
瞬達の疑問にセバスは答えた
「アリエット様の御友人という事も一要素ではありますが、単純に皆様が困って居られるからです、世界を転移して来て家族も家も無くしてしまった、少なくともアリエット様と同じ境遇の皆様も放ってはおけませんから」
「そう、なんですか・・・」
強い上に優しい、そんな人が灯を庇護してくれるなら安心して旅に出られる。
自分達も仮と言っても帰れる場所を得られるのは本当に有難い事だった。




