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しっぽ。

道筋はある程度見えて来た、瞬、陸、鈴、グレゴリは異界還りの証明に旅立つ。

灯は魔法国サリア魔法都市サリュー、ルナリア公爵家に残り、療養と勉強、そして異界への移動は可能なのかを調べる。

エリス王国が魔族領への侵略の為の動きは未だに見せていないが、周辺国の見立てでは一年先とされていた侵略がどうやら先延ばしになった様だ、騎士団が何者かと戦闘して手も足も出ずに負け、万全を期すために延期されたとまことしやかに囁かれていた、当然この情報は魔法国でも把握している。


「灯、話があるんだ」

「うん・・・」

皆、顔を合わせるのは久し振りであった、灯は体調の変化と勉強で、瞬達は戦い方と連携をセバスさんから教えて貰っていた為である。

「俺達は親を探しに行く」

「うん」

「灯は此処に残れ」

「分かった・・・」

「え?」

灯ならば「絶対付いて行く!」と言って聞かないと思っていたので説得して残る様に言うつもりだったが、すんなり了承した灯に気が抜ける。

「良いのか?」

「うん、付いて行っても足引っ張るだけだし、お母さん達とも話していたからね・・・」

そうだ、サイリさん達なら俺達に気を遣う前に灯を気に掛けるのは当然の事だ、二人にとって何よりも大事な事は灯の安全なのだから先ずは灯の説得をしていて当たり前だった。


聞き分け良く言っているが灯の耳も尻尾もずっと萎えたままだ、今にも泣きそうで悪い事をしている気分になる

「灯、そんな顔するな、必ず帰ってくるから、な?」

「うん・・・」

「直ぐに、とは言えないけど待っていてくれ」

「・・・」

本心を言えば離れたくは無いのか黙ってしまう灯

俺も離れたくないが今の灯を連れて旅をするにはリスクが高く、俺達も人を守りながら戦うには未熟だ・・・

なんて言ったものかと悩む瞬

「ん?」

手にフワリと暖かい感触があり、見てみると黒い尻尾が絡み付いている、灯の様子からも離れたくないと思っているのは明らかで、その本心を現すように尻尾は動いているのだろうか?

「あっ、ご、ごめんなさい瞬兄、尻尾、まだ上手くコントロール出来なくて・・・」

「いや、いいよ、触っても良いか?」

「恥ずかしいけど、良いよ・・・」



実は瞬は灯の猫耳と尻尾を見てから触りたくて堪らなかった、ここぞとばかりに触り始める

「こ、これは・・・」

堪らない・・・、フカフカで暖かくて毛艶も良く手触りも滑らかでいつまでも撫でていたい。


さわさわ


さわさわ・・・


これは良い・・・


さわさわさわ


夢中で撫でる瞬、灯の様子に気が付いていない

灯は触られ始めてからずっと・・・

「んっ、瞬兄、ちょっと、」


「そろそろ、やめてっ、」


「瞬にぃ、」

未だに獣人の身体の感覚が落ち着いていない為に拷問に近いものがある。


「ちょっと・・・」

「これは酷いね・・・」

「まあ、その、なんだ、止めるか・・・?」

少し離れて灯に話をするのを瞬に全て任せていたグレゴリ達も傍から見ていて、流石に絵面が悪過ぎるので止めようと動き出そうとしたのだが


瞬は尻尾の根元の方はどうなんだろうと触る位置を変えた瞬間


「にゃっ!」

ビクーン!と耳は立ち上がり、尻尾は瞬の手からスルリと離れ、灯は尻尾を両手で握り抱き締めた。

「・・・えっち」

その顔は先程より更に赤く染まり、瞬が声を掛ける間も無く、灯は走って屋敷に逃げて行ってしまった。


「え?」

意味の分からない瞬は棒立ち

「ねえ瞬、今何したのよ・・・」

「いや、何も・・・、尻尾の根元の方を触ろうとしただけで」

「えっち、って言って逃げていったじゃない、尻尾のついでに余計な所触ろうとしたんじゃないの?」

「ばっ、そんな事する訳ないだろ!」

「えっち、って言って逃げたんだから何かしたに決まってるでしょ!」

「いや尻尾しか触ってねえよ!」

「待って待って二人とも、瞬はなんて言って尻尾触ったのさ」

間に陸が入って仲裁する

「いや、残れって言ったら、寂しそうな感じで尻尾が手に巻き付いて来てさ、灯はコントロール出来てないみたいで、でさ、ずっと尻尾触ってみたかったから、触らせてくれって言って」

「うん」

「そしたら「恥ずかしいけど良いよ」って言うから・・・」

「尻尾を触り始めた、と」

「ああ、で、すげー触り心地良くてさ、マジで夢中になって触ってたら、根元の方はどうなってんのかなーって」

「根っこの方を触ったら「えっち」と言って逃げた・・・」

「ああ・・・」

「・・・」

「グレさんどう思う?」

「まあ、獣人なりのルールかマナーの様なものがあるんじゃないか?例えば尻尾の根元を触るのはエチケット違反であるとか」

「だよね、誰かに確認して灯に謝りに行った方がいいんじゃない?瞬」

「リリスさんかサイリさんで良いんじゃない?」

「いや待て、なんかヤバそうな気がするから違う人に・・・」

「違う人って、セバスさんかアルさん?」

「いや、セバスさんもアルさんもヤバそうな気がする・・・」

「エクスさんかエルちゃん」

「エクスは魔法騎士団に放り込まれて帰って来てないぞ」

「エルちゃんだな・・・」

この判断は後に正解だったと気付く瞬、仮にサイリかセバス辺りに事の次第を話、聞いた場合無事では済まなかっただろう・・・



灯がリリスと勉強している隙を狙いエルに話を聞いてみた。

「聞きたいのだけど、獣人の習慣について・・・」

「何かあったんですか?」

かくかくしかじか、事の始まりを説明するとエルは言った

「それは、えっちですね!」

「やっぱりエッチなんだ・・・、どうエッチなの?」

「え?どう、って・・・、うーん、そういうものだからとしか言えないんだけど」

「人間に例えられると有難いのだけど、その、つまり恐らく私達は認識がかなりズレてると思うの、これまで灯とは一緒に居たけど獣人になってから結構な齟齬があると思って」

「ああ、まあ幼馴染が突然種族変化したらそうなりますよね、うーんと、・・・うん!

仮に瞬さんがアリィのお腹を直接触らせてくれって言ったらどう思います?」

「それはちょっと年齢的にも性別も考えるとセクハラじゃ・・・」

「うん、うん、なるほど、じゃあお腹を触っても良いよ、となって触らせました、これでも本人は十分恥ずかしいですよね?」

「まあ、そうね・・・」

「お腹を撫でていた瞬さんが、お腹のすぐ近くに胸があるからって触ったらエッチじゃありません?」

「それはエッチね、・・・え?そういう事なの?」

「そういう事ですね、尻尾を触らせる時も恥ずかしいとアリィは言ってたんですよね、これは獣人として真っ当な感覚です、尻尾は余程親しくないと他人には触らせませんから、位置関係で言えば尻尾を触って良いのだからお尻も触って良いだろ?とは普通なりませんよね」

「ならないわ、つまり同じ尻尾でも先端と根元では意味合いが変わるの?」

「変わります、根元まで触れるのは家族、同じ家族でも特に娘に対して男親はとても気を遣いますし、あとは恋人か婚約者くらいしか触っちゃダメです」

「なるほど、だから灯は走って逃げて行ったのね・・・」

「他人が突然尻尾の根元に触れて来たら、殺されても文句は無い程の失礼ではありますからね」

「え、そんなレベルなの!?」

「貴族としての話ならそうなります、端的に言って喧嘩を売ると言いますか、獣人権の侵害みたいな」

獣人権・・・

思っていた以上に失礼かつ辱める行動だったと判明して鈴は驚く、サイリさんとリリスさんに聞かなくて良かった・・・

「そ、そうなんだ、ありがとう、灯が逃げちゃうのも仕方ないわね」

「アリィには私から言っておきますから機をみて話して下さい、なので鈴さんは、」

「分かった、瞬に言っておく」

「お願いします、流石にこんな別れ方はちょっと酷いですからね」

そう言ったエルは苦笑いしていた。


別れの挨拶が瞬のセクハラ行為だなんて、いくらなんでもあんまり過ぎる。

鈴も想いは同じなのだろう、何とも言えない微妙な表情をしていた・・・




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