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現状④

「ただいま」

サイリが帰って来た、出迎えはリリス、エル、灯の三人

「おかえりなさい」

リリスがサイリと獣人式の挨拶、頬を合わせ続けてエル、灯と触れ合う、

「?、お父さん血の匂いする」

灯の一言にギクリとするサイリ、まさか帰宅早々に瞬君を殴って来たなんて言えない

「サイリ、首筋に擦り傷」

リリスの指摘で自分からは見えないのだが、どうやら首に擦り傷がある様でホッとするサイリ。

全部躱していたつもりだったが瞬の一撃が掠めていたようだ

「あ、ああ、()()()()()を少し鍛えて来たんだ」

「そうなんだ」

灯はエクスの事だと思ったが、サイリは普段エクスの事を「お兄ちゃん」などとは呼ばない為、リリスとエルはある程度事情を察した。

「これくらいなら舐めておけば直ぐに治るよ」

痛みも無いくらいの擦り傷だ、放っておいても何も問題はないつもりで言ったら

「じゃあ私が舐めてあげる」

そう言ってアリィがペロっと擦り傷を舐めた

「・・・」

「・・・」

「アリィ、お父さんが言ったのはそういう事じゃないよ・・・」

「え?そうなの?」

エルが指摘すると、自分の行動が恥ずかしくなったのか照れている。

「さあさあ、アリィは早めに寝なさい、エル、アリィをお願い」

「うん、アリィ今日は私といっしょに寝よ」

「うん!」

「「おやすみなさい!」」

「おやすみ」

「おやすみなさい」

リリスに言われ、エルがアリィの手を取って声を揃えて部屋へと向かって行った。



「リリス」

「ええ、行動が幼いと思っていたけど、アリィの世界では家族でもハグや触れ合いは殆ど無い国から来たそうよ、なのにハグも獣人式の挨拶も気にしない所か、毛繕いにも抵抗ないみたいだし・・・」

「うん、どちらかと言えば獣人の、獅子と人の割合で獅子の面が強く出ているようだね」

「トール先生には診てもらったのだけど・・・」

「うーん、黒を持つ者の獣人化は記録が無かったからな、アレクにも会って話を聞いてもらうか?」

「アレクに会わせちゃうの?うるさいわよ、きっと・・・」

「14年経って帰って来た娘の健康には替えられないさ、元々どこで嗅ぎつけたのか会わせろとも言われていたし」

「一人ではだめよ?」

「勿論、私が立ち会うよ」

「なら良いけど・・・、瞬君達はどうなの?」

「倒して来た!」

「・・・誰が誰を?」

「私が瞬君を」

「・・・何故?」

「私達にアリィを預けるのが不安だって言うから、つい、お手並み拝見で、」

「アリィにバレたら嫌われるわよ・・・、どうせ加減も無く殴り倒して来たのでしょう?」

「まさか、加減はしたよ?殴り倒したけど・・・」

「だから血の匂いを指摘されて焦っていたのね」

「いやはや、掠っていたとは助かったよ」

「瞬君達は?」

「セバスに任せて来た、私は人を鍛えるのに向いてないからね」

「そうね、でもセバスも向いているとは思えないのだけど・・・」

「私かセバスなら、セバスの方が経験ある分マシじゃないかな?」

「まあ、そうだけど・・・、それより話は?納得してくれたの?」

「私より弱いのにアリィの心配をしている余裕があるのかね?と言ったら任せてくれたよ」

「意地悪ね、あなたより強い人なんてそうそう居ないのに」

「実際アリィは王国に狙われているからね、私達と一緒の方が権力的にも物理的にも守れるよ、彼らは彼らで異界還りの証明をしたいみたいだし、人に構う余裕も少なくなるだろ?」

「そうね、アリィは幸い獣人という種族にも私達家族にも馴染んでくれたから良かったけど、彼らの親が良い人とも限らないし、彼ら自身も種族が変わるかどうかも分からず、それを受け入れられるかも分からないものね」

今回異界還りによって灯は種族が変わったが、当然こちらの世界の親が人間族なら種族は変わらない、その場合は寝込む程の変化は無く、それでも多少の不調は現れるのだが異種族変化程の苦痛は無い。

異界還りからの変化が始まるにはいくつか条件がある、血を分けた者と出会う事、産まれた土地に居る事、これらの仕組みは地脈の気と家族の気に反応して変化が始まると言われている。


「他人を思いやれるのは自身の余裕があってこそだ、アリィだけでも沢山抱えているのに、自分達が手一杯になってはお互いに良いとも言えないからね、アリィは寂しがると思うけど自分の時間を過ごして見直す事も必要だよ」

サイリは心配している、皆子供だ。

子供達が子供を守るのは至難の業だ、保護者代わりの大人のグレゴリさんも居たが子供を四人見るのと三人見るのでは手間が全く違う、しかもその中でアリィは幼く弱いので一人減るだけでもケアする手に余裕は生まれるだろう。


戦闘能力に関しては瞬君の方が弱いと()()つけたが、並の敵には先ず負けない程の強さは十二分にある、聞けばアリィの魔法も相当なもので支援していたらしいがそれが無くとも大丈夫。

こう言ってはなんだが気遣う人が一人減れば彼らにも違う余裕が生まれるだろうし、アリィが魔法都市に残れば、最悪ここに帰れば良いと思えるだろう、彼らもまた家族を失ってこの世界に渡って来ているのだから、後ろを振り向いて戻れる場所位には成れると思う。


勿論、14年前に消えた娘が異界還り、帰って来たので直ぐに別れたくないという気持ちもこちらにはあるが・・・



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