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顔合わせ。

「アリィ今日は私のお下がりになるけど、今度服作ろうね!」

「間に合ったのが下着だけなの、すぐ仕立て屋呼ぶから今日はエルが着ていたドレスで我慢してね」

「う、うん、ありがとう!」

服を作る、仕立て屋を呼ぶ、と言う辺りレベルの違う話に冷や汗をかく灯、庶民出身には少し気が引ける・・・


「初めてだから手伝うよ」

「え、でも、」

「人間の下着とは少し違うから、ドレスも着た事ある?」

「う、無い・・・」

下着は兎も角、ドレスはどうにもならないと思う

お姫様が着るようなものが用意されていた。


「はい、下着!」

「紐!」

まさかの紐の下着に驚く灯、リリスとエルが説明をする

「人間用のだと尻尾が当たって擦れちゃうんだよ」

「尻尾は繊細だし、傷付くとかなり痛いから獣人専用なの、ほらこうして、こう・・・」

「な、なるほど」

尻尾の付け根を上手く躱すように作られている、紐がどうにも心許無いが・・・

別の下着も見せられたのだが、色々と浅過ぎて見えてしまいそうなので止めた。

次に薄いタイツの様なものを渡される

「素足を晒すのはとても端ない事なのよ、特に年頃の女の子はね」

「うん」

「私はもっと動きやすい物の方が好きなんだけど、貴族だから仕方ないよね」

貴族!そうだ完全に忘れていたけど、リリスお母さんもエルも貴族だった、爵位は公爵って言ってたっけ?

え?私も貴族になるの??

公爵ってどれ位なんだろうとのんきに考える灯だが、王族を除けば貴族の頂点である、サイリもリリスもエルもエクスも砕けた口調なのであまり感じないのだが由緒ある家で貴族、灯も公爵家の一員になったが実感するような事がないためにどれだけ凄い家なのか理解していない。


最後にドレスを着るのだが、

「エル、アリィに手を貸して」

「うん、はいアリィ掴まって」

「ん?大丈夫だよ?」

そう言って立ち上がるのだが、足に力が入らず床にへたりこんでしまった、足の、身体の感覚に違和感を感じる・・・

「アレ?」

「獣人の身体に慣れてない内は歩くのも大変よ、力の加減が利かないし今は獣人化してすぐだから体力が落ちてるのよ」

「当分私が手伝うから安心して」

「あとアリィは魔法得意と聞いたのだけど」

「うん、支援系統特化だけどね」

「ならまだ良いけど出来るだけ魔法は使わない様に」

「え、なんで?」

「身体のコントロールが利かない様に、魔力のコントロールも利かないの、獣人の身体になったばかりでまだ発作が来る可能性もあるから、安定化するまでは私かエルと一緒に居ないとダメよ、痛いの嫌でしょ?」

「うう、あの痛みは無理・・・、でもどのくらいの期間になるの?その安定化には」

「そうねえ、これまでの記録によれば数ヶ月から長い人で二年近く掛かった人も居るみたい」

「数ヶ月から二年!?」

予想以上の期間の長さに驚く灯、それもそうで灯達はこの世界から帰る方法が()()事を確定させる為に情報を求めて魔法都市に来た、これから当然異世界への渡り方や異界還り人の記録も確認させて貰う。

灯本人は獣人化した以上地球に帰れるとも思っていなかったし、恐らく自分はこちらの世界が主体の存在で夢の中の父と母に会えたのが最後だと思っていた。

魔法都市が一番そう言った情報が集まっているから来ただけで、此処に留まるとも何も決めていない。

へなへなと尻尾と耳が萎えた、自分でコントロールは出来ないが感情にはリンクしているらしい

「アリィ、これからの事は何も決まってないのでしょう?しっかり納得するまで話すと良いわ」

ある程度察しているのかリリスが優しく撫でてくれた。

「うん・・・」

この時点で灯も予想はついていた、自分に両親が居て種族も変わった、ならば瞬、陸、鈴、グレゴリにも異界還りの洗礼がある可能性は十分に考えられる。

「取り敢えず着替えてそれから考えようよ!」

エルの一言で着替えを再開したのだった。



ドレスの着付けが終わり、髪を編み込んで後ろでまとめていると

コンコンコン

「リリス、良いかな?アリィは・・・、ん?」

サイリが部屋に入って来て灯を見るとピタリと止まった

付き合いの長いリリスはサイリが止まった理由が分かるのだろう、クスクス笑いながら灯の背中越しに耳元で呟いた

「・・・・・・」

「え?でも・・・」

「私に言えたんだから、ね?」

「うん・・・」

未だ止まっているサイリに、エルとリリスが灯を補助して近付いた。


「大丈夫?お父さん・・・」

声を掛けられてハッとして動き出すサイリ

「ああ大丈夫だよ、アリィがとても愛らしくてびっくりしたんだ」

「あ、愛らしい・・・」

ポ、と照れる灯、その仕草さえも愛しい・・・

「・・・ん?」

サイリが再び止まる

「どうしたの?」

「アリィ、今なんて言ったの?」

「「どうしたの?」?」

「いや、その前、」

「「愛らしい」?」

「もう一つ前・・・」

「大丈夫、お、、おとう、さん・・・」

そう言うとサイリがバッとリリスを見た、リリスはクスクス笑いながら頷いている

「アリィ・・・」

「何?」

「もう一度呼んでくれないか?」

するとピクンと耳と尻尾が反応してピーンと伸び、すぐに耳を伏せた、モジモジとして上目遣いになり

「おとーさん・・・」

「う」

これは堪らない!リリスを愛してるし、エクスもエルも大事にしている、勿論アリィもなのだがやたらと庇護感を刺激してくるアリィに心の中では悶えているサイリ。

家の中はリリスの金の髪を受け継いだエクスとエル、自分は黒の髪で一人なのだが、それを受け継いだ娘のアリィが帰って来てくれた、それだけでも嬉しくて仕方が無い所に「お父さん」

これは死ぬ!私は明日死ぬのでは無かろうか、そう思える程の歓喜に包まれていたサイリ。

「アリィ!」

「きゃん!」

ぎゅっと抱き締めて猫耳の毛繕いを始めたサイリ

獅子の獣人の愛情表現なのだろうか、嬉しいのだが現在敏感な灯にはたまったものでは無かった

「や、、」

元々神経が集まっているのか耳も尻尾も空気の流れさえ感じられるというのに・・

流石に可哀想だし、髪を編み込んでセットしたのに崩されては、とリリスが灯を取り返した。

「サイリ!折角可愛くセットしたのに乱さないで、それに感覚が落ち着いてないみたいだから」

「あ、ああ、ごめんよアリィ、可愛くて止まれなかった・・・」

「お父さん、なんか変態みたい・・・」

エルが突っ込む、確かに「可愛いから止まれなかった」とは犯罪者の言葉に近い、愛するもう一人の娘の言葉が真っ直ぐサイリに刺さった。

「う!?変態・・・」

「おとーさんのえっち・・・」

「エッチ!!?」

更に灯の涙目での追い打ちにガクリとするサイリ

灯は先程、男の人に触れられないようにと言われたので怒っただけなのだが

「アリィ、男の人でもサイリはお父さんだから触らせても良いのよ?毛繕いくらいならね」

「そうなの?」

「ええ、嫌なら断って良いけどね」

「そうなんだ・・・、お父さんごめんね?勘違いしてた」

「いや私も強引だったね、ごめんよ」

「さ、瞬さん達に顔見せに行こうよ、心配してたよ!」

リリスのフォローを受け素直に謝る灯にサイリは少し心配になる

(無垢過ぎやしないか?いや、素直でいい子なのは良いのだが、屋敷に来た時は年相応な様子だったのに・・・)

先を歩くアリィとエルは仲良く手を繋いでいる、アリィもエルもとても楽しそうで見ているこっちも温かくなる。


「リリス・・・」

「分かってるわ」

「アリィ、精神年齢下がったか?」

「多分だけど、人間の14年と獣人としての1年目が混ざり合っているんじゃないかしら・・・」

「そんなことが有り得るのか?」

「分からないけど、14歳と言うには言動が幼いし、1歳と言うにはしっかりしてる」

「これは異界還りと獣人化、過去録洗い直した方が良いな」

「ええ、このままでは危ういわ、それに」

「それに?」

言葉を区切った妻リリスを見てギョッとするサイリ

あまりにも恐ろしい形相をしていたのだ。

「どうしたリリス」

「髪が伸びたからハサミで髪を切ろうとしたら、アリィがとても怯えたの、理由を聞いたら・・・・・・」

聞いた内容をサイリにも伝える、サイリはグレゴリからこれまでの事と灯の境遇を聞いていた、勿論虐められて学校へ行かなくなったとも聞いていたのだが、髪の行は聞いていない。

グレゴリさんはアリィ本人と瞬君達からアリィの事を聞いたと言い、瞬君達には言わないでと言ったアリィの話からするとグレゴリさんにも髪の事は話していないのだろう、確かにリリスが激怒しているのも分かる。

髪を後ろから切って脅すなんて卑怯な手段を許せる訳がない

「弱い者を虐げて、排除して、そうして弱い者が居なくなり、自分がその集団の中で一番弱い存在になったらどうするつもりなのかしら」

「リリス、君がアリィに寄り添っている間にグレゴリさん達から色々と聞いたけどね、王国に召喚された勇者と聖女、少なくとも聖女は・・・」

これまでの事を聞きリリスから殺気が漏れ出した

「おい・・・」

「あ、ごめんなさい」

「手を出すなよ、アリィの中では決着がついている」

「分かってるわよ、()()()()()()に関しては何も言わない、これからの事に関しては別だけど」

「それは勿論だよ、私個人としてはこれまでの事も許せないけどね・・・」

これまでの事は「灯」の時の事だから仕方なく我慢するが、しかし獣人化したこれからは「灯」であり「ルナリア公爵家の次女アリィ」でもある、それに対しては親である自分達が全力を持って対処するつもりだった。


「エクスもエルもアリィも必ず幸せにしてあげるわ」

「ふ、なんだいそれ、まるでプロポーズの台詞だね」

「特にアリィは苦労して来たみたいだし、帰る家を一度無くしているのよ、あの子にはこれから幸せしかないわ!」

そう言い切ったリリスは強い、そしてそれを可能にするだけの力と優しさを持っていた。

「そうだね、此処が家だと思ってくれると良い・・・」

「大丈夫、お母さんって呼んでくれたからね」

「そうだね・・・」

前を歩く子供達を優しく見守るリリスとサイリであった。





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