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魔法都市で。

朝早く出発した事で昼前には魔法都市へと到着した、今日灯は調子が良いのか日中にも関わらず起きていた。

「灯、大丈夫なのか?」

「うん、なんか今日は普通に調子良いみたい!」

「そうか無理するなよ、すぐ医者に診てもらうからな」

「うん」


魔法都市の検問はアルとエクス、エルの特権なのかあっさりと優先して入れた

「ルナリア家の者だ、こちらはエクス様とエル様」

「は、どうぞ!」

完全に顔パスで素通しだった、その様子からしてエクス達は相当地位の高い者だと判断出来る。


「スグにウチへ行こう、すげー気が進まないけど・・・」

「なんでそんな事言うの?灯苦しんでるのに!」

「いや、治したくないって言ってるんじゃない、こっちの話だよエル・・・」

「んん??」

「エル様、エクス様はこの旅のヘマを知られて怒られるのが怖いんですよ」

と、横から耳打ちするアル

「あー、下手を何回も打ったもんね、お兄ちゃん」

「ぐ、エル、助け、」

「やだ、これに懲りて心入れ替えなよ、最近お兄ちゃんさ、お兄ちゃんに寄り付く人達みたいになってたし」

「マジか・・・、マジか・・・」

何か思い当たる節があるのか、エルに指摘されたエクスは出会って一番衝撃を受けているようだ。


御者台にはアルが座って馬車を動かす、やはりと言うか貴族街へ、しかもかなり立派な屋敷の多い区画へと進んで行く。

「エクス本当に偉かったのか」

「本当にって何だよ兄貴!ルナリア家の次期当主だぜ!?」

「いや、知らないし」

「知らないな」

「知らん」

「知らないねぇ」

「ぐ、お前ら、不敬が過ぎるだろ」

「不敬も何も、エクス様のは身から出た錆ですよ」

「うるせっ」


そんな話をしている内に貴族街の中でも格段に立派な屋敷の前で止まる馬車、すかさず衛兵が警戒する

「そこの馬車!どういう・・・」

「私だ」

「アル様!失礼しました、この馬車は?」

「道中助けて頂いた者の馬車だ、すまないが急ぎだ通してくれ、あとリリス様とサイリ様に取り次いで欲しい、要件は・・・・・・」

内容をアルが伝えると衛兵が顔色を変えた

「それはっ、本当に」

「まだ確定はしていないが・・・、急げ」

「はいっ!」

衛兵二人の内一人が走って屋敷に消えて行った。

馬車は屋敷の目の前まで通され、馬車を降りて中へと入った瞬間

「アル!本当なの?アリィが()()()来たと言うのは!」

金色が目に飛び込んで来た、髪、獣耳、尻尾、全てが見事な金色で優しげな瞳にエルに似た容貌の美人、一目で分かるエルとエクスの母親、先程リリスとアルが言っていた人物だろう。

「エルちゃん、家ではアリィって呼ばれてるんだ?」

「ううん、違うけど、お母さん?」

リリスがエルを見て、そして手を繋いでいる灯を見た途端

「アリィ!!」

「はえ?」

リリスに思い切り抱き締められる灯

エクス、アル、グレゴリ以外は皆唖然としている。

「「「「はあっ?」」」」

「うわ、決まりか・・・」

「でしたね・・・」

「となると、やはり・・・」

三人は何か確信した様子だった。


「ああ、アリィよく還って来ました、これも神のお導きね」

リリスは言いながら灯にキスの雨を降らせている

「あ、あの?え?、え?」

「お、お母さん?」

灯は為されるがまま、エルは混乱している、母が言うアリィとは?何故灯を抱き締めてキスをしているのか、これでは、これではまるで自分の子供に対しているような。

「え?え?」

「エル、落ち着け」

「お兄ちゃん?何か知ってるの?」

やたらと冷静な兄を不思議に思ったので聞くと、驚きの言葉が飛んできた。

「あー、なんて言うか、灯はな、妹だ」

「え?」

「はあ?」

「妹っ!?」

エル、瞬、陸、鈴はあまりの展開に驚くばかりでついていけない。

「灯は獣人じゃなくて人間なんだけどっ?」

()()な、母上!エルも灯の仲間も困惑しているし、本人もだ、場所を変えて説明しよう」

「ああ、、アリィ・・・」

「?????」

リリスは未だに感極まっているのか灯を抱き締めている、灯本人は完全に固まってされるがままだ。

「リリス落ち着いて、アリィ、いや灯さんにも説明しないと分からないだろう」

落ち着いた声の男性がその場を治める、黒髪の獣人

「サイリ様、只今帰還致しました」

アルがサイリという男性、エクスとエルの父なのだろう。

「うん、お疲れ様、後で報告は聞くけど、取り敢えずこっちだね、リリス・・・」

「あなた、だってアリィが・・・」

「気持ちは分かるけどね、当の本人が完全に置いてけぼりだよ、まずは説明しないと」

リリスを宥めながら灯を見つめるサイリの眼差しはとても優しく今にも泣きそうに見える。

「あ、あの・・・」

「妻がすまないね、決して君を困らせるつもりは無いんだ、それだけは理解して欲しい」

「いえ、その、どういう事か説明して頂けるのですよね?」

「ああ、取り敢えず皆さんサロンの方へ・・・、セバス」

「はい、畏まりました」

サイリが言うと如何にもなロマンスグレーの執事が現れ、案内した。

部屋へ移動する時もリリスから逃れられず抱き締められたままの灯、チラリとアルさんの方を見ても首を横に振っている、これは誰にも止められないのかな・・・、と諦めた灯。


サロンへと入るとグレゴリは壁沿いに立つ、瞬、陸、鈴はソファーに、対面にサイリ、灯、リリス、エクス、エルが座り、後ろにアルが立った。

立場上、主達と座る事は出来ないのだろう。


「なんで私、リリスさんの膝の上に座ってるの・・・」

「・・・」

エクスとエルは顔が引き攣り、サイリも流石に苦笑している。

「アリィは私の子供だからよ」

「リリス、あまり事を急いては嫌われてしまうよ」

「あなたは何故そんなに冷静なの?アリィが還って来たのよ?」

「努めているけど私も興奮しているよ、一先ず私から説明するから、良いね?」

「はい・・・」


そうしてサイリから説明された事は俄に信じられない事であった。



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