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森を出る。

「エルちゃん一緒に寝よう」

「うん」

そう言って灯とエルは一緒にくるまって寝てしまった。

皆も寝入ったようだ


アルとグレゴリが焚き火を囲み話す

「アル、さっきのだが、俺にだけでも話せないか?」

「グレゴリ殿?」

「俺は自称ながら、こいつらの保護者のつもりだ、出来る限り幸せになって欲しいと思っている・・・」

「・・・」

暫く考え込んでいたアルが決心したのか話始めた、それは驚きの内容で


「そんな事が、有り得るのか?」

「私もこの目で見るのは初めてになります、が、魔法都市では年に何度か報告は上がっております」

「だが、それこそ神の・・・」

「ええ、未だに仕組みは解明されておりません、ですが事実として存在する現象なんです」

「ああ、だからか、瞬の・・・」

「グレゴリ殿?」

アルの話を受けて、グレゴリの中でも何か繋がったのか納得したような様子。


「すまん、聞き出しておいてなんだが、コレの結果が出た時に話す事になると思う、待ってくれ必ず話すから」

「いえ構いませんよ、グレゴリ殿達も訳アリなのは分かりますから」

「助かる」

「大人は気を遣いますね・・・」

「ああ、全くだ・・・」




鈴が朝起きると隣で灯とエルが丸まって寝ていた

灯が丸くなっている所にエルが頭を抱え込む様な体勢で灯を抱きしめている姿は、猫同士が寄り添って寝ているような微笑ましさがあった。

エルは獅子の獣人なのでネコ科ではあるのだが

「ん、んー」

エルが寝惚けて灯のおでこと髪の生え際を舐めている、その様子はどこからどう見ても猫の毛繕いというか

(グルーミング?獣人って人と獣の割合どれくらいなんだろ?)

灯はくすぐったいのか下へと逃げ、エルの胸元に潜り込み顔を埋めた

「んふー」

満足気に笑い、そのまま穏やかな寝息を立て始めた


(この娘達、本当に姉妹みたい・・・)

昨日会ったとは思えない早さで仲良くなり、お互い理由は分からないが一緒に居るのが自然だといった様子、一目惚れというものなのだろうか?

そんな事をぼんやり考えている内に、いつの間にか外がかなり明るくなっていたので二人を起こす

「ほら、灯、エルちゃん、朝よ」

鈴が優しく声を掛けて軽く揺すると、二人共起き上がり目を擦りながら

「おはよー、鈴姉」

「おはようございます、鈴さん」

と言って笑った

「っ!?」

灯とは何度も一緒に寝ていたから、朝起きてヘラリと無防備に笑う姿を知っている、だが一緒にエルも灯と似た顔で笑った、その顔が完全に灯と被って見えた事に鈴はドキリとした。

「どしたの、鈴姉?」

「?」

「な、なんでもないわ、ちょっと首を寝違えたみたい」

「え、大丈夫?」

「大丈夫よ、ヒールで治るし」

そう言ってヒールを首に掛けた、勿論寝違えてなどいないが一先ず誤魔化した。

世界には自分と似た人間が三人は居ると言う、きっとそれが灯とエルなのだろうと一人納得する事にした鈴。


食事を摂り、片付け、準備をして魔法都市へと森を移動し始めるが、昨日の浄化の影響かモンスターとは出会わないままあっさり森を抜ける事が出来た

「少なくとも通り道にはモンスター居なかったよ」

「多分、昨日の浄化で大半が消し飛んだか、格上を悟って近付いて来ないのでしょう」

「モンスターでもそんな事があるのか?」

「ええ、圧倒してしまえば動物と同じですね、ただ大半は死ぬまで戦いますし、自分より体の小さい者は弱い、といった具合の思考なので引いてくれませんが」

「モンスターの大半は人間より大型・・・」

「つまりほぼ逃げる事は無いけど、今回は浄化でビビったって事?」

「そうなりますね、二人掛りとは言えあの規模での浄化は噂の聖女とやらでも無理ではないでしょうか」

「・・・」

「も、もしかしたらもっと凄いかも知れんぞ・・・」

噂の聖女よりレベルが70も上ですとは流石に言えない。



「そう言えば、・・・で、・・・なんだけど!」

「え、じゃあ!・・・は、・・・だったんだ」

「・・・」

森を出てからは馬車を出して移動していた、御者はアルとグレゴリの交代でやっていたのだが、現在グレゴリを挟んで灯とエルがキャッキャッと仲良く話していた。

「なあ二人共、中で話したらどうだ?此処は埃も立つし・・・」

至極真っ当にグレゴリは正論を言って中に入るよう促したのだが

「邪魔?」

「いや、邪魔では無いが・・・」

「アルと交代でと言っても何か申し訳なくて・・・」

「いやいや、そんな気遣いは無用だ」

「そう言ってもゴリさん一人で頑張るんだもん、ゴリさんが気を遣っているのは分かるけど、みんな気にしてるんだよ」

「む」

確かにそれもそうだ、事ある事に瞬も陸も鈴も御者台に一緒に座っていたし、そう言えば会社の上司が言っていたな

「年上が先に休まないと下のもんが休めねえんだ、真面目なのは結構だがそういう意味でも上は気を遣わねえといけねえよ」

「・・・」

突然黙ったグレゴリを心配する二人

「ゴリさん?」

「グレゴリさん?」

「いや、そうだなこれからは皆に頼ろう」

保護者気取りで模範になろうとしていたが、教えられる事もある、一人で何でもやるのが立派な大人とは限らないのだ。


グレゴリはまたひとつ学んだ、そして改めて思う、本当に良い子達だと。



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