瞬の場合。
VRギアを外す
「ふう、やっと揃ったか灯の奴、LUC振り切っている癖に運なさすぎだろ、さって、と寝るか・・・」
眠気に襲われすぐにベッドに入り寝てしまう瞬、隣の部屋、陸の部屋には異変が起きていた。
朝起きる、いつもと変わらない朝
「ふ、ンンーっ」
身支度を手短に整え部屋を出る瞬、隣の部屋の弟陸はまだ寝ているようで起こしに行く
トントン、ノックをする思春期の男子は色々な事情があるのだ
「陸起きろー」
・・・反応はない
ドンドン
「おーい、陸」
あいつあれからもアークやってたな?
強めに言っても起きて来ない陸、部屋に入ろうと思い始めた時
「あれ、おにい何してるの」
妹が起きて来た
「花、何って陸を起こしてんだよ」
「ふ、あー、、誰、陸って?」
「は?陸は陸だろ、俺の弟、花の兄」
何言ってるんだ、花もまだ寝惚けているな・・・
「?、おにい寝惚けてる?そこは昔から物置じゃん・・・」
スタスタと俺の横を通って1階へ降りて行く花
「花、完全に寝惚けてるな・・・、陸起きろー」
ガチャリ・・・
扉を開けた先は
「は?」
弟、陸が居ないどころか
「どういう、事だよ・・・」
その部屋は埃を被って物が置かれていた。
「母さん!」
「おはよう瞬、ご飯食べなさい」
「おはようっ、陸は!?」
「何、朝から騒いで、陸?、何?」
問うている意味が分からないとばかりに聞き返してくる母親
「弟の陸だよ!俺の隣の部屋に居ただろ!」
「何寝惚けてるんだよあんたは、瞬と花2人兄妹だろ、顔洗ってシャキッとしてきな!」
その言葉に思考が停止する
どういう事だ、ドッキリ、にしては悪趣味過ぎるし、わざわざ一般人の俺を嵌める意味が分からないし、こんな悪趣味なイタズラ母さんは許さないだろう、花が嘘を吐いているようには見えない・・・
嫌な予感がする、
「そうだ、灯、灯は!?」
隣の家の幼馴染、可愛いもう1人の妹分
「灯?何さ灯って?」
「隣の、いや、いい!」
家を飛び出す瞬、直接確認した方が早い。
「ちょっと朝食は?」
「今日はいい!」
幼馴染の家のインターフォンを鳴らす
ピンポーン・・・
ガチャ
「あら、おはよう、瞬君朝からどうしたの?」
「おはようございます!おばっ、・・・照さん」
勢いでおばさんと呼びそうになったが、一瞬鋭い視線を受けて名前で言い直す
「あの、っ、灯は・・・」
聞く途中で、焦りの余りつっかえてしまう、頼む・・・
「灯?」
「はい・・・」
一瞬の間だが、永遠の長さにも感じる
心臓の音がうるさい・・・
「なあに、灯って?」
「っ!」
嘘だ、こんなの・・・
血の気が引いていく、照さんが何か言っているが言葉の意味を理解出来ない。
「大丈夫?瞬君、具合悪いなら休んだ方が良いわよ、言いづらいならお母さんに私から言う?」
「っ、いえ、、その、昨日の夜、玄関の電球が切れていたみたいで・・・」
「え、そうなの?ありがとう、気付かなかったから助かるわ」
「じゃ、俺はこれで・・・」
「わざわざありがとう」
なんとか取り繕ってその場を離れる
そうだ、携帯電話、鈴は・・・
スマホを取り出しアプリを起動、確認するも
「ダメだ・・・」
陸、鈴、灯、全員登録が無くなっている
その後、鈴の家にも確認に行ったが空振りで、学校に行っても無駄だった
「存在が消えた?」
そんな馬鹿な、俺が頭おかしくなったのか?
いや、数時間前まで普通に会話してゲームを遊んでいた、そんな筈・・・
「ゲーム・・・?、アークオンライン、まさか」
いや、そんな、まさか。
だけど、戦闘中からログアウトするまでの間のノイズ・・・
こんな馬鹿げた事があるのか、実際起きているが俺以外は気付いていない。
部屋に戻りアカウントを確認、
「って、サービス終了のお知らせ!?」
〇月〇日0時をもって、サービスを終了させていただきます・・・
今日だ、今日の日付けが変わったらアークオンラインは終わる、おかしい、好調な売上を誇り国内トップシェアのオンラインゲームが突然サービス終了?
「アカウントは、俺のはある、陸達は、接続しているのか、いやそもそも」
存在しているのか?
フレンドリストからオンラインのフレンドはゲーム外からも確認出来るようになっている
カチッ、カチッ・・・、マウスを操作して項目にアクセス・・・
なんだ、これっ、バグってる・・・
@tjaymbh@abj@_tupjnqwastj
/wkjnksxcrtxi_,,vtlxk_myybblxll
意味不明な羅列が画面を埋め尽くしている
「くそっ、何とかしろよ運営っ!」
カチッ、カチッ、ページの更新を繰り返すが
文字列が変化するだけで何も変わらない
「くそっ、、くそっ」
カチカチカチカチッ、バァンっ、ガチャガチャッ
どうにもならないイラつきに我慢出来ず周辺機器に当たる
こんな事してもどうにもならないのに!
ザザッ
「?」
ノイズ音が、
ふと、画面を見ると未だ変わらずに意味の無い文字列に埋め尽くされている中に
陸
鈴
灯
の文字が確認出来た
が、すぐさま画面は切り替わり、また意味不明な画面に戻ってしまったが瞬は確信する。
「居るんだな・・・、そっちに」
多分、灯達の今の状況を考えると行ったら戻れない、いやそもそもあっちへ行けるかどうかも分からないのだが
「イカレたのは俺か、世界か」
笑える、ゲーム異世界転移なんてラノベかよ・・・
ふー、深く息を吐き即座に決心、ごめん母さん、父さん、花・・・
「灯、今度こそ守ってみせる」
もう二度とあんな思いは御免だ!
VRギアを被り、体内のナノマシンと同期、アークオンライン起動・・・
その日、地球上から「瞬」という存在が、4人に引き続き消えた。
元々存在などしないかの如く、世界は回り続ける。