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出発と別れ。

王都を発つ日になった、顔見知りや世話になった人には事前に挨拶してある

「おう、達者でな!まあ俺らも時期ここ離れるから何処かで会えるかもな、ガハハ!」

「お世話になりましたジョーさん」

「ありがとうございました」

「困った事があったら言ってね、多分ある程度何とか出来るから!」

「お、おう、嬢ちゃんが動くとマジで何とかなりそうだからな、まあ困った時はお互い様よ、元気でな!」

「わっ」

いつもの調子でジョーさんは豪快に笑い、灯の頭をグリグリ撫でて行った。

髪がもじゃもじゃに崩れる


「ジョーさんもお父さんみたい・・・」

「グレさんも?」

「そだね!全然タイプは違うのにね、包容力?って言うのかな、何となくだけど・・・」

「俺は父扱いは遠慮したいが・・・」

「え、でもゴリさんお兄ちゃんて感じじゃないし、叔父さん?」

「オジさんもやめて頂きたい・・・」

ガクリと首を折るグレゴリ、灯は無邪気に言う

「んー、恋人?ごめんなさい、私好きな人居るから・・・」

「タダの知り合い枠は無いのか!?しかも告白もしていないのにフラれた・・・」

「するの?告白」

「いや、しないが」

おバカな話をする灯、陸、グレゴリ、少し離れて瞬と鈴はジョーさんに挨拶していたのだが


「灯、好きな人居るのか・・・」

「この、xxxxxxxx」

瞬がすっとこどっこいな発言をしたので、鈴は青筋を立てて呪詛を吐き出す

(お前だよ、好きな奴!と叫べたらどれだけ楽か・・・)

かと言って人の色恋に口出しはしたくないし、他人の口から伝えるのも違うと思う、つまりは瞬が自覚するか、灯が再び告白するしかないのだった。

「ガハハっ!青い春だな!」

ジョーさんの高笑いが木霊した。


王都自体は恙無く出られた、と言っても門では衛兵に止められたのだが

「冒険者の集団か、どうした?」

「家が燃えてしまいまして、一度田舎へ帰るつもりです」

「そうか大変だったな、あの火事では仕方あるまい、後ろには?」

「仲間が四人と荷物が・・・」

「一応規則だからな、確認させて貰うぞ」

「どうぞ」

衛兵が馬車の後ろへと回る

「女が二、男が三、荷物と・・・、ん?そっちの子供は随分小さいが冒険者なのか?」

灯が目を付けられるが、事前の打ち合わせ通りに受け答えする。

「見習いです、ギルドにもまだ入ってません」

「そうか、しっかり守るように、無理はするなよ」

「ありがとう衛兵さん」

灯がニコリと御礼を言うと、衛兵も微笑んで頷く、どうやら良い人のようで強行突破せずに済み安心する一行。

「気を付けてな、行ってよし!」

「衛兵さんも頑張ってねー」


ガラガラガタガタ・・・

馬車がゆっくりと王都を出て行く


「子供って!」

子供扱いされた事に憤慨する灯、14歳となると十分子供ではあるが、かと言って完全に子供かと言えば、また難しい年頃ではある。

「体格に加えて灯は童顔だからな・・・」

「だからって子供はどうかと思う・・・」

「くっくっく、気にしたら負けだぞ、それより王都を出るとスグに道が悪くなるからな、乗り心地が良いと言っても石に乗り上げたら揺れるし、気を付けろよ」

グレゴリが御者台から子窓を開けて注意を促す



そう言って間も無く、ガツンッ!と馬車が石に乗り上げ揺られた

「きゃっ」

「おっと」

「ひゃっ!?」

現代の道路と違って土、砂利道、しかもゴムタイヤではない車輪の馬車の為に下からかなり突き上げられる

「大丈夫か?」

グレゴリが中を伺う、馬車の中は陸は平然と、鈴は陸に掴まり、瞬は灯を抱きしめて支えていた。

「ご、ごめん、瞬兄」

「いや、大丈夫、怪我はないか?」

「うん、ありがとう瞬兄、もう大丈夫だから・・・」

灯が少し身を引いて二人の間に隙間が出来るが

「ダメだ、今かなり飛び跳ねたぞ、怪我をするから掴まっていろ」

と、瞬も譲らず肩をグッと引き寄せて密着する

「あ、あのあのっ、っ!」

カーっと赤くなる灯

「イヤか?」

「・・・」

フルフルと首を横に振る灯

突っ張っていた手から力が抜けて、そのまま瞬に身を預けて寄り掛かる。



「やだ、なにこれ、今なら砂糖吐けそう・・・」

「甘っ」

うげえ、と言いたげな鈴、陸、二人の甘い空気を狭い馬車内で発揮されては堪らないとばかりに呆れていた。

「すまん、気を付ける・・・」

ガタゴトガタゴト、馬車の旅は始まったばかりである。


「ゴリさん交代どれくらいでする?」

「ん?俺はずっとここで構わないが」

「駄目だよ、一人だけに運転させられない」

「いや、気にしないのだが、そもそも灯は馬車操作出来るのか?」

「出来ないけど、黒ちゃんに乗れば平気かな、って」

「く、黒ちゃん・・・」

黒帝号を黒ちゃんと言われてズッコケるグレゴリ。

「馬車の御者が、馬に乗って操るのか、一周回って怪し、新しいな・・・」

「まあ、ある意味適正なスタイルではあるんじゃない?」

「そ、そうか?」


「灯は良いから座ってろ、俺と陸、グレゴリさんで交代して行けば十分だろ」

「えー、何か申し訳ない?」

「灯、良いじゃない男達がやるって言ってるなら任せれば良いのよ、料理とかは私達担当なんだし」

「そうだ、肉しか焼かんぞ俺は」

「そう言われるとそうだね、瞬兄聞いてよ、ゴリさん肉焼いて料理って言うんだよ?」

「あー、まあ分かるから・・・、俺も似たようなものだし」

頬をポリポリとかいて気まずそうにする瞬、陸も同じなのだろう、我関せずといった体で遠くを見ていた。

「鈴姉・・・」

「ええ、胃袋事情は私達に掛かっているわね・・・」

力強く頷く灯と鈴、それぞれの役割が決まった。



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