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心はどこか。

温かい。


人を抱き締める事がこんなに心地良いなんて思いもしなかった。

鼓動が聴こえる、温もりが伝わる、柔らかくて、気持ちいい


長い時間抱き合い、ふと少しだけ冷静さを取り戻す瞬

どうしても抱き締めずには居られなかったが

(灯が、そう、萌えだ、萌え過ぎた、さてこっからどうしよう・・・)

瞬が鈍さの極み男と言っても健全な(元)高校二年生

自分の部屋に、

ベッドの上で、

女の子と、

抱き合っている。


その意味が解らない程子供では無い、が!

(どうしよう・・・)


更には、当の女の子本人、灯も抱き締め返している

(あったけぇ・・・、幸せっつーか、離し難いっつーか)

ずっとこうしていたい、そんな想いを抱いていた。

(良し、あと10数えたら離そう、1、2・・・)

自分でルールを決めカウントを始める

(いや、しかし灯柔らかいな、なんだこれずるいだろ・・・)

抱き締めた感触にふにふにと夢中になる、とっくに10カウント分は過ぎている。

(あ、いやいや、10だ!10で離す!)

改めて数え出す、

(はー、いい匂いするな、同じギルド寮なんだから風呂で使っている物は一緒の筈なのにどうなってんだろ?そう言えば、前にも汗くさいとか気にしてたな、あの時も別にいい匂いだったけどな)

またも10カウントは過ぎる


(だめだ離せない、そうだ灯がまた苦しがったら離そう!)

勝手なルールを決めて、抱き締める力を少しだけ強くする

「ん・・・」

「・・・」

反応が薄く何とも離し難い感じになってしまう瞬

(それにしても灯、大きくなったな、昔はあんなに小さかったのに、いや今も小さいけど、こう色々と・・・、いやいやいや!何考えてんだよっ、灯は妹分!妹みたいなものだ!血は繋がってないけど・・・)

そんな事を考えながらまたもギュッとする

「ん、はあ・・・」

灯の吐息が首筋に当たってゾクゾクした

「あ、灯っ」

意を決して声に出して離すが

「・・・、スー、・・・スー・・・」

「寝てる・・・」

ハグを止めて少し離れると灯は寝ていた、そのままベッドへ横たえる。

「そう言えば最近あまり眠れてないって・・・」

サラリと髪に指を通し、頬を撫でる

「んん・・・」

むにゃむにゃと瞬の手を掴み、頬擦りする灯

「うっわ・・・」

なんだ灯ってこんなに可愛かったのか?

胸の奥がぽかぽか温かい・・・

そして、



トントンガチャ「瞬ちょっといい?馬車が・・・、ってアレ、何やってんの?」

「いや、なんでもない・・・」

陸が瞬の部屋に入って来た、ノックはしたが返事も待たずに来たので瞬は背中にドッと汗をかいていた。

「ん?灯こっちに居たんだ、鈴が探してたけど」

「ああ、話していたら寝ちまった、部屋に運ぶよ・・・」

どことなく様子のおかしい瞬に陸は不思議に思う

「???」

(あっぶねぇ!陸、ノックして即入室は止めろや!)


「陸」

「何?」

「灯って女の子だったんだな・・・」

「当たり前の事を何言ってんの?熱でもあるの?」

「いや、大丈夫」

(当たり前、か・・・)


瞬の中で少しだけ変化の兆しがあった・・・


馬車はその後一週間で出来上がった、荷馬車を基に翁を中心に魔改造されたソレは、見た目は普通の馬車だが見る人が見れば恐ろしい素材を使って組み上げられた代物になってしまった。


骨組みは全て竜骨に置き換わり、緩衝材にラバースライム、幌はワイバーンの翼膜、全体の表面も特殊コーティング、車輪と車軸は世界樹、他にもエトセトラエトセトラ・・・

「馬車って何だっけ?」

呆気に取られる鈴、開いた口が塞がらない瞬と陸、グレゴリは既に思考を投げ捨てている、その理由は

「灯だからな」

の一言。


「素材が良過ぎて、走行音がゼロになっちまったから、わざとガラガラガタガタ鳴るようにした、中は快適だ、あまり上等に走ってると目付けられるからな、それに合わせて外見もそれなりな見た目にした、どうよ?」

(なにそれ、プ〇ウスの接近音みたいな機能!?)

皆の心はひとつ、総ツッコミだ。


灯と出会うまで、近年は大した素材と出会わなかった鬱憤か、翁はやりきった表情だ。

「牽く馬と箱を考えたら、見た目は〇二ー、フレームはG〇-R、エンジンはR〇26って感じだな」

グレゴリが懐かしそうに言う

「何それ?」

「車の・・・、いや何でもない、気にするな」

「?」


「内装は好きにしろ、嬢ちゃん機会があったらまたな!」

やりきってスッキリしたのか、翁はそそくさと行ってしまう。

「ありがとう、お爺ちゃん、またね」


「さて、荷物を全く積まないのも不審に思われるか?」

「だね、皆魔法鞄持ちだから必要ないけど、検問とか街の出入りで何か言われるかも」

「全員魔法鞄持ちだから荷物は無いんですって言うのは?」

「魔法鞄が一般的かどうか次第だな、素材を欲しがるあの翁でさえも持っていないくらいだ、恐らく限られた人間しか持ってないんじゃないか?」

「貴族、冒険者でも上位の者?」

「冒険者上位、しかも全員Sクラスオーバー、目立つな・・・」

「適当に毛布とかテント、食料を置けば良いんじゃない?」

「そうね、まあ何も無くても怪しまれて時間を取られるだけで、いきなり拘束とかはないでしょ」

「やっと王都出れるね」

「道中も出来るだけ目立たない様に行こうな、魔法都市国家に入る前にひと騒動とか勘弁だぞ」

「瞬兄なんで私に向かって言ってるの?」

「いや、深い理由は無いが・・・」

灯が頬を膨らませて瞬を睨むと、瞬は気まずそうに視線を逸らした

「瞬兄?」

視線の先を追っても当然何も無く、再び瞬の顔を覗き込み心配しながら手を握る灯

「何かあった?大丈夫?」

「っつ!な、何でもないっ」

必死に取り繕った瞬だが、耳が真っ赤になっていた

「??」


灯と瞬のやり取りを見て生温い視線を送る三人

「今更思春期?」

「次、灯の告白スルーしたらxxxxxxx」

「俺も色恋沙汰は不得手だが、ここまで鈍くは無いぞ瞬・・・」

呆れる陸、呪詛を吐く鈴、やれやれといったグレゴリに見守られていた・・・



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