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変化。

それからは流石に聖女に一服盛られた事が問題視されたのか、王都内を騎士達が見回るようになっていた。

「まあ、当然だな」

「問題にはならないが、コソコソするのも性にあわないし、さっさと行こうか」

「賛成」

「うん」

灯の魔法で身元がバレる事は無いが、警備が厳重になった街中を平然と歩くには気分が良くない、王都を、王国を出る日が近付いていた。


「さて、王都を出るに当たってだな、移動手段を決めようと思う」

「皆の相棒(ペット)は?」

「速いけど、目立つな・・・」

「魔法で!」

「灯、何でも魔法に頼るのは良くないぞ、それに緊急時に限界を迎えたらどうする、出来るだけ温存するべきだ」

「う、はーい・・・」

「徒歩、は流石にキツいわね」

「馬車だろうね・・・」

「乗り合い馬車だと、何かと自由が効かないから、買うか?」

「騎士達が見張ってない?」

「ジョーさんは?何か伝手あるんじゃない?」

「聞いてみるか」


「おう、あるぜ伝手、紹介してやるよ」

「展開はえーな・・・」

「まあ追われてる身としては都合良いけどね」

「丁度田舎からこっちに出て来たんだ、腕は間違いねえ、ただ偏屈な爺さんだからな、気に入らなければ王族だろうが依頼は蹴られるぜ!」

「職人肌か・・・」

ジョーさんが言うなら腕は確かなのだろう、問題は交渉か

「灯に行かせたら?あの子昔から年配の人と仲良くなるよね?」

「そうだな・・・」



「儂は馬車は専門じゃねえ、何考えてるんだジョーの野郎・・・」

「あれ、お爺ちゃん?」

「おー?嬢ちゃんやっぱ居たな、どうだ猫のお守りと杖は」

紹介された職人はハジッコ街であった翁であった

「気難しい職人と顔見知りみたいよ?」

「豪運の持ち主だからな灯は」

「その割には酷い目に遭うけどね」

「出会いに運振り切ってるんじゃないか?概ね出会いに関しては良い人を惹き付けている気がするが?」

「概ね、ね・・・」

「アレはカウントしないでしょ」

「確かに、アレはな・・・」


「久し振り、お爺ちゃん王都に出て来たんだ、杖は最高、マヌマヌ猫のお守りも無かったら危なかったよ」

マヌマヌ猫のお守りの効果は耐寒・保温。

雪山で灯が意識を喪失後、順次支援魔法の効果が消えて行ったのだが、当然その中に寒さ対策の魔法もあった、雪山の氷点下の環境で意識を無くし出血もあった灯が体温を保持したまま下山出来た事は、正にマヌマヌ猫のお守りのお陰であった。

仮にお守りが無かったら、いくらグレゴリが灯をブランケットでぐるぐる巻きにしようとも末端の凍傷、壊死は避けられなかった程の環境だった。


「儂が作ったからな間違いない、馬車を欲しがっているのは嬢ちゃん達か?」

「うん」

「このタイミングで馬車を欲しがるって事は、国でも出るのか、何があった?」

「えーっと・・・」

灯がチラっと瞬達の方を窺う

「灯、良いよ」

皆、頷く

「あ、じゃあ・・・」

翁にこれまでとこれからを説明する


「聖女に一服盛ったから追われる事になったって!?ぶぁっはっはっはっ!」

「いや、聖女はついでというか、大規模戦闘時に大魔力で魔法を使ったのを見られて・・・」

「はっはっはっはっ!聖女はついでと来たか!まあ、神龍の瞳を全力で揮ったら目ぇ付けられるわな」

目を付けられたのは灯か神龍の瞳か、はたまた両方か

「迷惑な話だよね、自分達は高みの見物しておいて勝手だよ」

「確かに勝手だな、本当に面白えよお前ら」

「それで、馬車なんだけど・・・」

「おう、良いぜ受けてやる」

「やった、ありがとうお爺ちゃん」

「なになに良いってことよ、嬢ちゃんは素材持ってるし楽しめそうだが」

「が?」

「儂ぁ馬車屋じゃねえ、大雑把に言って素材加工屋だからな、箱さえ準備してくれれば後は何とかする」

「箱、か」

「馬はどうする?」

「俺の黒帝号を使おう、持ち主の体躯に合わせて大きさ変わるから、恐らく馬車の大きさに合わせられるだろう」

「となると箱だね」

「最悪荷馬車でも構わねえよ、馬が曳ける土台があるなら後は魔改造だ」

「魔改造て・・・」

「嬢ちゃん素材はあんだろ?事前に下処理しておきたいから出してくれや」

「あるよ、何欲しい?」

「竜骨と・・・」

翁の指定通り素材を出して行く灯、ゴロゴロ出て来るハイクラス素材、数、質共に不足無い素材が山積みになる。


「ねえ、馬車に竜骨とかミスリル、普通使う?」

「普通は木材と金属だけじゃないかな・・・」

「灯も気にせず出しちゃうから・・・」

「世界樹も出し始めたぞ」

「何を作るつもりなんだ?」

「馬車じゃない?」

「馬車に竜皮とか使わないでしょ・・・」

「作るの、馬車だよね?」

「そりゃあ、馬車だろ」

調子に乗って素材を出す灯、どんな馬車に仕上げるつもりなのか、言えば出て来る素材にテンションが上がる翁、それを眺め、呆れる四人であった。


「ここは灯に任せて俺達は箱を探しに行こうか」

「待って、いくら何でも灯を一人には出来ないでしょ?」

「じゃあ瞬が残れば良いんじゃない?」

「そうだな」

「決まり、行きましょう」

「じゃあね瞬」

「は?おい、なんで俺だよ」

相談の余地無く陸、鈴、グレゴリは行ってしまった。

灯は翁と何やら楽しげに話をしている

「マヌマヌ猫のお守り無かったら凍えてたかも、気付いたらベッドの上に居たから・・・」

「は?」

今何か聞き逃せない事を言ったな、気付いたらベッドの上?

「灯、今の、どういう事だ?」

「えっ?」

翁と灯の会話に割り込む、翁は何かを察したのか黙って素材の下処理を始めた。

「気付いたらベッドの上って・・・、いやちょっとこっちに来い」

「瞬兄?」

この場で話す事ではないと灯の手を掴み、瞬は自分の部屋へと戻る、瞬達男性に割り振られたギルド寮の部屋は狭い、客を迎えるような広さは無い為ベッドに座らせて話を続けた。


「灯、何か隠してるな?」

「べ、別に・・」

ギクリと身を引く灯

「何があった、気付けばベッドだなんて普通じゃない」

瞬の真剣な顔に迫られ灯は誤魔化す事を諦める

「実は・・・」

雪山で怪我をした事、意識を失い、気付いたら山を下りて近くの集落の診療所に居た事、怪我は一歩間違えば死んでいたかも知れなかった事を話した。

一通り聞くと瞬の身体から力が抜ける

「はあー、灯・・・」

その声は低く、灯は萎縮してしまい俯き反射的に謝ってしまう

「ごめんなさい・・・」

「あ、いや違うんだ怒っていない」

瞬は慌てて灯を抱き締めて言う

「瞬兄?」

「無事で、良かった・・・、灯が俺の知らない内に死んだら後悔してもしきれない・・・」

「あ・・・」

死が身近である事を理解し、心配を掛けてしまった瞬に言う言葉が見つからない

「灯、これからは俺が守るから、ずっと」

「う、うん、ありがとう」

瞬の言葉に赤くなり照れる灯、

「で、灯、今何か悩んでいるな、聖女に一服盛ってからだ、この際全部言うんだ」

「う」

「鈴から聞いているぞ、あまり眠れていないって」

「・・・」

聖女に復讐してから灯はずっと悩んでいた、その様子に皆気付いては居たが敢えて聞いたりはしていない、虐めてきた相手にやり返した事で思う所があるのだろう、そう思っていた。


「瞬兄、私、あの復讐ね、やっぱりダメだ・・・」

灯の言葉に瞬の背筋が凍り付く、瞬はずっと考えていた

灯がアヤに復讐したいと言った時、本当にコレで満足するのか、やっぱり許せなかった、そう言って危害を加える事を言い出したら・・・

俺達でさえ一時の感情に任せて、と思ったくらいだ、被害本人の灯が相手を憎いと思っても不思議ではない。


それこそ灯の魔力を持って本気の復讐をした場合、完全犯罪も可能であったのだ、城に潜入した時に施された完全隠蔽魔法、アレをアヤに掛けて何処かに埋めてしまえば誰にも探索追跡は出来ないし、火竜を圧殺した重力を遠くから放てばそれでも終わる。

固まっている瞬に灯は続ける

「私、やり返しても全然嬉しくないや、そりゃあ・・・、あの時はスッキリしたし青汁噴き出した顔見て笑ったけどさ」

「え?」

予想外の話に思考が追い付かない、復讐が足りない話じゃないのか?

「苦しめたり、叩いたり、嫌だから、それをやり返すのも何か違うかな、って・・・」


ああ、何でこの子はここまで優しいのか、学校へ行かなくなる程虐められた相手だというのに、その相手まで思いやって・・・

そんな灯がとても愛しく思えてしまい、抱き締めていた力を更に強めた。

「ん、瞬兄、苦し・・・」

「もう少しだけ、本当に心配したんだぞ、・・・イヤか?」

「ごめんなさい、、イヤじゃ、ない・・・」

ズルい言い方をした、心配を掛けたという罪悪感に付け込み、灯が断れない言い方をしている。

そして灯が背中に手を回して抱き締め返してくれた、身勝手な事を自覚しながらも嬉しいと思う瞬だった。



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