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復讐。

数日後、瞬、陸、グレゴリは城へと潜入していた

潜入と言っても全く忍ばず、堂々と歩いている

灯の魔法によって完全に見えざる存在となっていた、五感全てで認識出来ない新魔法。

それはグレゴリと雪山で出会った変異種の能力を再現したものである、更には変異種に索敵が抜けられた事から

索敵(エコー)がすり抜けられないよう、看破出来るように空気の流れも可視化したんだよね、全部遮断しても空気の動きは誤魔化せないから、そこら辺も追加したよ」

「つまり?」

「私以外には絶対にバレない潜入魔法、空気の動きも捉えられないし、気配、熱、音、圧、匂い、存在を認める要素を全て遮断」

「無敵じゃないか・・・」

「弱点は有るよ、当然他から認識出来なくてもその場に居るから、範囲攻撃されたら当たるし・・・」

「血は?」

「魔法が効いている間は認識不可」

「水とか雨とか降られたら、輪郭とか見えないのか?」

「それも大丈夫、対策済」

「無敵じゃないか・・・」

「でも草とか踏んだり、泥の上だと足跡が・・・」

「ああ、なるほど、それは確かに・・・」

「それもその内対策施すけどね」

「・・・、無敵じゃないか?」


と言う無敵?魔法を施されて城内を歩いていた。

「まさか灯が復讐したいと言うとは思わなかったよ」

「うん」

「普段優しく穏和だからこそ怒った時は大変なんじゃないか?家が燃えた時とか、火竜を圧殺したくらいだ・・・」

「・・・」

「瞬、灯を怒らせないでよ・・・」

「努力する・・・」

「さて、無駄話もこれくらいにして()()ぞ」

「了解」「おっけー」


音も無く城内の人間の意識を刈り取って行く三人

元々Lv的にもアドバンテージのある瞬達の、完全な不意打ちに誰も抵抗出来ずに捕えられて行った

侍女、騎士、料理人、一区画全てを制圧、残すは聖女と近くに控える騎士団長のみ

この区画には灯のサポートで誰も外部から侵入出来ないように結界を施されている

「鈴、他には?」

「それで全員、残りは二人・・・」

灯と鈴はギルド寮で指揮をしていた

索敵・極(エコール)

部屋に王城の立体透明化地図が映される、操作すると一部が拡大縮小され人の動き、物、全てがリアルタイムで見れるようだ

「普段この規模で索敵すると援護が疎かになるからね、戦闘時は特に簡略化しているけど、腰を据えてやるなら・・・」

「マジか・・・」

(エグッ!)

(グレさん、これエグいよ!)

(ああ・・・、これは全部筒抜けだな・・・)

本気を出した灯の索敵に静かに引く三人

「灯、私は何をすれば良いの?」

「鈴姉はマップを見て状況確認と指示をして、実はこれ維持するだけでいっぱいいっぱいなんだ・・・」

そうして城へと潜入した瞬達


「本当に良いんだな?」

「うん、やるよ」

瞬の最後の確認に肯定する灯、これで終わりだ。





ガチャ

「失礼致します・・・」

侍女がお茶の準備を始める、いつもの時間、いつものように。

だが、この侍女は瞬達である

「ありがとう、団長も一緒に飲もうよ、流星は出ているし付き合ってよ」

アヤが騎士団長もお茶に誘う、騎士団長言えど格上の扱いの聖女の言葉は無視出来ないのか、立場的に断りにくいのか難しい顔をしながらも了承する

「はい、では御一緒致します」

(マズイな、騎士団長も飲む事になるぞ・・・)

(良いんじゃない、諸共で)

(そうも行かないだろう、灯?)

(続行、中止はしません)

灯の声に背筋が冷える、なんと聖女諸共騎士団長もやるというのか・・・


お茶の準備が終わる

「聖女様、お待たせ致しました・・・」

隅へと控える侍女達

「ありがとう、んー、いい匂い」

聖女がお茶を、飲んだ。

「戴きます・・・」

騎士団長もお茶を、飲んだ・・・、飲んでしまった。

(飲んだぞ)

(では・・・)

ゴクリ、唾飲み込む、横を見ると陸もグレゴリさんも最後まで見届けようと緊張した面持ちだ。


パチンッ!


灯の魔法が解かれた、それはお茶に施された認識誤認の魔法

「グッ、ごぼっ!」

「ガハッ・・・!?」

お茶を飲んだ二人が同時に吐き出した、だがもう遅い、全て終わりだ。


お茶のポッドやカップ、証拠になりそうな物は全て魔法鞄へと無造作に取り込んでい

しっかりと己の目で見届け、三人は音も無く部屋を、城を出た。

一先ず、城から離れて路地へと入る


「っ」

肩が震えている瞬、同じく陸も、そしてグレゴリは手を固く握り締めていた・・・

「くっ、ははは・・・」

「はははははっ!見たか、あの顔!」

「見た見た!ざまぁみろ!」

盛大に笑い出す三人、その顔はやり遂げた達成感でいっぱいだった。

「灯、鈴見たか!?」

「見た見た!」

「ふふふっ、苦しんでたね!」

「もっと苦しめても良かった位だけどね!」

「ざまぁっ!」


皆、笑顔に翳りはない、イタズラが成功したかのような、そんな雰囲気である、それもその筈二人が飲んだお茶は・・・


「アレを使うと言うのか、灯・・・」

「使う、アレをおいて他には無いと思う」

「なんて非道な・・・」

グレゴリは青ざめていた、灯が復讐の手段として提案したもの、それは

「青汁(真)を使うと・・・?」

「使う」

「この世の地獄だぞ・・・」

「使う!」

灯とグレゴリのやり取りに完全に置いて行かれる瞬、陸、鈴

「何?」

「青汁(真)って?」

青汁(真)の説明をする灯とグレゴリ、最初はそんな事で済ませて良いのか?と不満気だった瞬達も、グレゴリの恨みの篭もった青汁(真)の説明と

「殴られたからって殴り返したくないし・・・、多分あっちは毛程も気にしてないから、せめて私の気の晴れるやり方をさせて」

と灯が言ったので、皆力を貸すことにした

勿論グレゴリも「人の生き死にに関わらないからな、やるぞ?」とニヤリと笑って手伝ってくれた。

「所で、そんなに凄いのか、青汁・・・」

「飲むか?沢山あるぞ」

「少しだけ・・・」

といった会話をし始めた所で、灯は鈴の手を握ってササッと離れる

「灯?」

「アレは、ダメ・・・」

灯の脳裏にはグレゴリが吐き出す生・青臭い汁の醜態が浮かんでいた。

「ほれ」

取り出すグレゴリ

「うっ!?」「これはっ!」

ザザザっと後ずさる瞬と陸

「何よ、大袈裟ね」

近付こうとする鈴だが、微かに香る匂いを嗅ぎ付け

「う」

その場に固まった、皆正しく理解したようだった。


計画は大雑把に、潜入、人払い、お茶の入れ替え

潜入は前述の通り灯の魔法で解決、問題は人払いで

聖女の居る区画を丸々制圧する事になった。

「お茶を入れ替えるだけだと、侍女とか料理人が酷い目に遭っちゃうから」

そう心配した灯が、区画丸ごとを提案した。

誰も侵入者に気付かず、区画に居た全員が捕われ、しかも聖女に一服盛った、これだけの事を出来る存在だと、誰が悪いとは計れずに精々騎士の訓練が厳しくなる程度だろうとの考えだった

「でも、ごめん、私追われているんだよね?魔法の事もバレているなら、多分ほぼ私の仕業だって断定されちゃうよね・・・」


その通りだった、騎士団、騎士団長が灯の噴水広場での大規模魔法を見ている、この事を可能とする力を所有し、神憑り的な手口は十中八九灯だと思われるだろう。

それにしても誰が灯に追われている事を伝えたのか、と聞いたら

「ジョーさんが・・・」

「おう!嬢ちゃん、灯っつったか?灯!お前広場の魔法で騎士団や国から目付けられてるからな、気を付けろや!ガハハっ」

「って」

ジョーさん余計な事を!と思ったが、アヤの存在を灯に伝えていなかった事で、結果酷く動揺させてしまったので、これはこれで良いのかも知れない、と思い直す。


「灯気にするな、元々この国を出るつもりだったし、あっちが()()思っても証拠も何も残さない、他国に行けば引き渡しも難しいから大丈夫だ」

実際、騎士団や王国が十中八九灯の仕業、それ以外に無い!と確信しても、他国に渡った者を「そいつは犯罪者だ、こちらに引き渡せ、証拠は無いがそれは確かだ」などと言ったなら、いい笑いものである。


「ん、灯は我慢してばかりだから、偶には後の事を考えずに暴れた方が良い」

「そうね、灯はいい子だから、これくらいはやってもバチは当たらないわ」

「やられたらやり返せとは言わないが、まあこれくらいは、な」

「みんな、ありがとう・・・」



そんな訳で決行された復讐は大成功を収めた。

「灯、俺の声だけ聖女に飛ばせるか?」

「え?飛ばせるけど、声変える?」

「ああ、頼む」

「うん、じゃあ行くよ、3、2、1・・・」

「 」

グレゴリがボソリと言った言葉は誰の耳にも届かなかった。



そして、城では・・・

「ぐえ、げえっ、ごぼ、、ぐ、何が・・・」

「おええええ、うげえええええ」

悶え苦しむ騎士団長と吐き散らかす聖女、青汁(真)は伊達じゃない。

「だ、誰かっ!!おいっ、ぐ、おえ・・・」

「オロロロ・・・」

区画ごと制圧された場所だ、助けは誰の耳にも届かない


十分程経っただろうか、何とか落ち着きを取り戻し、

「毒、か?いや、」

お茶を確認しようとしたが、ポッドもカップも綺麗サッパリ無くなっていた。

有るのは汚物のみ・・・、流石にこれから調べるのは無理だった。

「聖女様、大丈夫、ですか・・・」

「何とか・・・」

ぐったりとしている聖女、が、突然ビクリとして顔が強ばる

「聖女様?」

「ひっ!」

聖女アヤはガタガタと震え出し、それから落ち着きを取り戻すまでかなりの期間を必要となった、その耳にはとある声が届いていた


「お前の所業は全て知っている、己の行動を見直すのだな、これは挨拶だ()()()()()()()()

地獄の底から響くような低音で、確かに耳元で囁かれていた。



「これくらいは、な・・・」

「何?ゴリさん」

「いや、何でもない、さて何を食べようか」

「肉、以外ね!」

「いや、肉は必要だろ!」

前途ある若者に余計な物は背負わせない、何か負うなら自分がと思うグレゴリ、それは死ぬ迄誰にも言う事は無いだろう。




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