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奪う者、護る者。

「灯!」

フラリと噴水の上で身体が揺らぎ落ちて来る灯

瞬はすかさず受け止める、ぽふっと腕の中に落ちてきた少女の身体は軽い。

絶望的な戦況で逆転の手を打った存在は、揮った力とは対照的にとても華奢なものであった

「灯良くやった、ゆっくり休め・・・」

腕の中で穏やかに眠る少女はどこか笑ったような気がした。


暫く経つと周囲のモンスターの圧力が和らぐ、どうやら冒険者達が力を奮っている様でひと息吐く

「何とか、なったな・・・」

「ええ・・・」

「疲れた・・・」

「おらぁ!」

ドォンッ!とモンスターを力任せに大盾で潰すグレゴリさん、盾って何だったっけ?

呆れていると、そこへジョーさんが駆け付けた

「どるぁ!!」

ボコーン!と、ジョーさんは素手でモンスターを10m程殴り飛ばしている、なんなんだこの人も・・・

「おう!瞬陸鈴、えっと、でけえの!」

その表情は厳しい、この戦況で警戒しているような様子では無い

「どうしたんですか?ジョーさん」

「その嬢ちゃん連れてスグこの場を離脱しろ、騎士団が捕まえようとしてるぜ」

「はあっ!?何で、いや、灯をですか?」

どういう事だ、とジョーさんに食ってかかる

「城のダチから報せが来た、大方さっきの魔法を見ていたんだろ、出し渋ったかと思えば今度は欲掻きやがって騎士団(クソ)共が!」

人の良いジョーさんをしてクソと吐き捨てられる騎士団

もう、この国に残る理由は無くなっていた。

国の姿勢、勇者に聖女、そして騎士団、デメリットしか見当たらない・・・

「取り敢えず、ギルドへ向かえ!あそこは騎士団も簡単に手出し出来ねえ取り決めになってるからな!後で俺も直ぐに戻る、この場は問題ねえし、まだゴチャゴチャしている内に身を隠せ!」

「分かった、ありがとうジョーさん!」

「良いって事よ、急ぎな!」

「陸、鈴、グレゴリさん!」

心得たとばかりに皆頷く

「俺は目立つからな、逆に此処に残って適当に暴れてから向かう、先に行け」

「なら俺も残るよ、グレさんが騎士団撒く時に力になれると思うし」

「分かった、気を付けて!」

「うん」「ああ」

グレゴリと陸がその場に残り、鈴と瞬が先に引き上げる事になった、瞬が灯を抱き上げる。

「ん・・・、んー」

すると灯がギュッと首に抱き着いて来た、この穏やかな眠りを邪魔させたりはしない、そう決意して中央噴水広場から撤退した。


「行った?」

「その様だ・・・」

「ねえ、グレさん」

「何だ?陸」

「俺、いい加減腹が立って仕方が無いんだよね、騎士団の連中・・・」

「奇遇だな、俺もだ」

冒険者を使い捨てにして、最後勝ちの目が出て来た所で城から出撃、しかも灯を狙っている?

「巫山戯てるな・・・」

普段落ち着きのある陸だが、決して怒らない訳では無いし

可愛がっている妹分を攫いに来る騎士団を許す程我慢強くも無い。

「だからと言って、正面から事を構えるのも面倒だ・・・」

「どうするの?」

「そうだな、こういうのはどうだ?」

グレゴリの案を聞き、ニヤリと笑う陸

「良いね、やろう」

「俺も乗ったぜ、ガハハッ!他の奴にも手伝わせるぜ!」

どうやらジョーさんも混ざるらしい

その作戦はこうだ、騎士団が城から出て来た、当然後方は何も無い、そこへ

「オルァッ!」

ボコーン!ジョーさんの鉄拳でモンスターが空を飛んで行く、勿論手加減して殴り飛ばしているから

「グルアアァァァッ!」

騎士団の後方で怒り狂って飛び掛るモンスター

「うわっ、何で後ろからっ!?」


「ガハハハッ!下っ端は命令に従っているだけだろうがな!やろうと思えば門を開ける事も出来たのにしなかった、同罪だぜ、ドラァッ!」

ボコーン!!ボコーン!!次々と騎士団後方へモンスターを殴り飛ばして行くジョーさん、とても楽しそうだ。

「では、俺も、ぬうんっ!」

片手でガシリと無造作にモンスターの首根っこを掴まえるグレゴリ、勿論・・・

ブンッ!ブンッ!

騎士団後方へと投げ付ける、その姿は悪鬼羅刹のようだ。

「じゃあ、はいグレさん、これもよろしく」

陸はグレゴリとジョーさんの所へモンスターを引き連れて来る、それを掴み投げる、殴り飛ばす。

あっと言う間に騎士団も混沌とした戦いに巻き込まれていった

「ガハハッ!どうよ退路のねえ戦いはよっ!!」

「うむ、少しだけスッキリしたな」

「グレさんごめん、()()投げられる?」

「ん?」

見ると、そこには大きな体躯の人型

「トロルキングか・・・」

身長は3mを超えて、体重も300は下らないだろう巨体

「どれ、やってみようか」

ゴキゴキと肩を鳴らしトロルキングへ悠然と歩を進めるグレゴリ

「グルルッ」

「ぬん!」

ドスンッ!!取っ組み合いになる巨人と巨体

「ガアア!」

「強い、が力だけでは勝てんぞ!」

スパッと足払いを仕掛けるとトロルキングは地面へと転がった、その隙を逃さず両脚を掴むグレゴリ

「ぬあああっ!!」

力を込めてフワリと巨体を浮かしたかと思えば勢い良く回転し始める巨人と巨体、ジャイアントスイングだ。

ブンッ、ブンッ、ブンッ!

その迫力は生のプロレスを遥かに超える

「おおおおおおっ!!!」

パッとトロルキングから手を離すグレゴリ、宙を舞うトロルキング、数百kgの身体が確かに飛んでいた。

そして、ドドーンッ・・・と騎士団の、

「ありゃあ騎士団のど真ん中じゃねえか?ガハハッ!」

「む、勢いが足りなかったか」

「グレさん、ゴリさん・・・」

「グレで頼む・・・」


フラフラとトロルキングが立ち上がると周囲の騎士を薙ぎ倒していく

「と、トロルキング!?」

「ひいいー、どうなってんだよ」

「雑魚にトドメ刺すだけじゃなかったのかよ!」

完全に大混乱の騎士団であった。


「モンスターに勝てねえ奴が侵略なんか出来るか!鍛え直して来いや、ガハハハッ!」

ジョーさんの指揮で、大混乱に陥った騎士団に残りのモンスターを全て押し付けて離脱していく冒険者達、グレゴリと陸も便乗して離脱したのだった。



「追手は?」

「無し、モンスターで手一杯みたい」

姿が見えなかったがフッと肩に乗ってくる陸、どんなスキルを使っているのか全く重さを感じない、存在も希薄に感じる。

「そうか、ならギルドへ行こう」

「ん、グレさんやるじゃん」

「陸もな」

拳を合わせる二人、どうやら上手くやれそうだ。


路地をジグザグに走っていると途中でジョーさんと一緒になった

「腹の立つ事も有ったが、まあやり返したし、火竜で元は取れるな!」

「火竜回収してたの?いつの間に・・・」

「おう、お前らが広場へ向かってスグだ、その場で解体して、ギルドに運ばせてたぜ!火事と怪我人居なくなって手が空いた奴が結構居たからな!」

ガハハッと笑うジョーさん、抜け目が無い。

「こんだけやられてタダ働きなんざ目も当てられねえ、騎士団や国に持ってかれるのも癪だしな、火竜だけで皆に十二分に報酬払えるが仕留めたのは嬢ちゃんだ、そこん所どうだ陸?」

「大丈夫、灯は火竜位なら要らないって言うよ、事情も分かってくれる」

「おお助かるぜ、火竜さえ要らねえたぁ剛毅な嬢ちゃんだな」

「もしかしたら何処か特定の部位欲しいって言うかも知れないけど・・・」

「構わねえよ、全取りされても文句はねえんだ、指定部位くらいなんて事ねえよ」

事実、灯は火竜で欲しい部位は無い、ほぼ全モンスターの素材を大量に保有しているし、お金にも困っていなかった。

目を覚ました時に火竜の事を聞くと

「良いよみんなで分けて、素材要らない人には現金化して等分配で不満少なくしてね、あ、何だったら全部買い取って現金化して渡しても良いよ」

などと平然と言い放ったので、流石のジョーさんも苦笑いしていた。

「お、おう、取り敢えずは素材欲しい奴も居るし大丈夫だ、任せてくれ」

と、答えるので精一杯だった。




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