鈴と陸の場合。
黒龍討伐後、魔法陣で脱出、外には陸だけが居た。
「あれ?瞬は?」
「眠いから先に落ちるって」
「そう、って」
ザザザザッ、激しいノイズに襲われる
「うっわ、酷いわね、コレ、バグ?」
「かな?」
「緊急メンテの通知は来ないし・・・」
「鈴姉」
「何?、って、何よ、そんな怖い顔して」
「ログアウト、出来る?」
「何を当たり前の事を言ってるのよ、メニュー開いて、って、あれ?」
メニュー画面にログアウトが無くなっている、どころか設定、フレンドリスト、メール辺りも無い
「何、コレ?」
「分からない、でも外部との連絡も取れない、オンラインオフライン設定も無くなっている」
「な、何それ、SAOかっての・・・」
「今現在、それそのもの、だな」
「う、そ、でしょ・・・」
冷静に言う陸、私はそんなに落ち着いて居られない
「え、だって、ただのゲームよ、どうしてっ、ねえ、なんで?」
はっ、はっ、息が浅くなるのが解る、
「鈴姉」
「出られない、なんて、そんな事、っあるわけ」
嘘だ、そんな漫画みたいな事が起こる筈無い
「鈴姉」
「イタズラでしょ、灯辺りがプログラム弄って・・・」
はっ、はっ、は、は、呼吸が、
「鈴!」
陸が大声で名前呼び肩を掴んで来る、ビクっとなり完全に思考が真っ白に
「落ち着いて鈴」
「陸・・・」
「息、吐いて・・・」
はー・・・
「吸って」
すー・・・
「吐いて」
ふー・・・
「落ち着いた?」
「うん、ごめん混乱した・・・」
「大丈夫、気にしない」
「私は気にする」
「鈴?」
「それよ、陸のくせに呼び捨てなんて生意気、鈴姉、でしょ!」
「本当の姉弟じゃないから、呼び方は俺の自由」
「ふん、ま良いわ許してあげる・・・、ありがと」
「どういたしまして」
軽いやり取りにいつもの調子を取り戻し、考えを巡らせる。
ログアウトは出来ない、連絡も出来ない、何も出来ない?
「って、灯は?」
「そう言えば、出て来ない・・・」
「まさか脱出前にノイズに呑まれたんじゃ・・・」
「そもそもパーティーが解除されていて、UIも無くなっているし」
「最悪ね、灯ダンジョンに取り残されたの?」
「行く?助け」
「行きたいけど、瞬が居ないと・・・」
私達4人は特化集団だ、私は回復特化、陸は攻撃特化、灯がサポート特化、瞬が万能特化、盾役は居ないけど何でも出来る瞬が基本盾役を務めてバランスを取っている。
このパーティーの核は瞬と灯の2人、この2人が居ないとエンドコンテンツを少数クリアなんて出来ない。
仮に私と陸がダンジョンに行っても、火力に優れる陸が敵を倒せても防御が薄いから、回復を沢山撃つ事になる、回復ヘイトはかなり大きいから私に敵が向かう、私が殴られて自己回復、敵の標的が私に固定、の悪循環で負ける・・・
瞬が居れば盾役で安定する、だが連絡する術がない、灯が居れば強力なサポートでアタッカーの陸で擬似盾役が出来たが、その灯を救出に行きたい話だ。
「待つか、街に行って盾役を募集するか」
「此処に潜れる盾役なんて、ほぼ固定の面子でしょ、無理だわ・・・」
「知り合いは」
「オンラインなのかオフラインなのかさえ分からない・・・」
「待つしかないな」
「そうね・・・」
「ねえ、陸」
「何?」
「あの子、死に戻りしないわよね?」
「この異常で流石に試そうとはしないと思うけど・・・」
「そう、よね」
「うん」
「ねえ」
「落ち着いてよ鈴」
「でも・・・」
「待って、・・・、違うな、、これなら・・・、、いや、、そうか・・・」
1人でブツブツ言い出す陸
「何?」
ピコン!頭の中に突然SEが鳴り響く
「えっ!?」
「パーティー行った?」
「うん・・・」
「良し、ダンジョン入ろう」
「待ってよ、私達じゃ・・・」
「違う、入口に入るだけで内部でパーティーを飛ばす」
「あ・・・、そっか、それなら」
「安否だけは確認出来る」
善は急げと、ダンジョンに入りパーティーを飛ばす
「ダメ、弾かれる、エリアリストには載っているのに」
「ねえ、これもしかして、このグレゴリって人とパーティー組んでいるんじゃ・・・」
「なら、私達はパーティーを解散して待てば、あっちから」
「パーティー誘われるかも」
・・・1分経つ
気づいて・・・
3分・・・
きっと戦闘中なのよ、お願い
5分・・・
ピコン!
「来たっ!」
顔を上げてお互い見合わせる、パーティー承諾。
「だから、行けますって!」
「いや、箱庭型でそれぞれ独立した接続だろ、無理だ」
「それを言うならゴリさんと出会うのもおかしいじゃないですか、エリアサーチに載っているんだから行けますって!」
元気に誰かと言い争いをする灯の声が聞こえて来て安心する
「灯、良かった無事で・・・」
「わ、鈴姉!ほらゴリさん見た事かっ!」
「む」
「灯、僕も居るよ」
「陸!みんな無事?」
のんきにこっちを心配してくる灯に呆れる
「無事も何も灯の方が心配掛けていたのよ、もう!ダンジョンに取り残されるなんて」
「う、ごめん、勝利記念にスクショ撮ってたらノイズに呑まれちゃった・・・」
「もう、ばか・・・」
「ごめんなさい・・・」
お互い情報のやり取りをする
「あ、こっちの人は、って見えないか、ゴリ、、ゴリ、さん!」
「・・・グレゴリ・ラインハルトです、途中で助けられて同行している」
「あ、そうなんだ、うーん、どうしようね」
「どうしようって、灯、軽いわ、出れないのよ?」
「まあ、そうなら仕方ないと言うか、その前に目の前に問題があるから・・・、脱出してから考える」
「そうだな、目の前の事を片付けてからにしよう」
「それにしても、グレゴリさんが盾役で良かった」
「ね!取り敢えず何とかなりそうだから、街に」
「「此処で待ってる!」」
2人は灯の提案を封殺する、こんな異常状況で灯を置いて街に戻るなんて出来ない、グレゴリさんにお礼もしないと。
「え、でも、あと1時間は掛かるよ?」
「待つ」
「待つわ」
「灯、皆心配しているんだ、安全かつ迅速に戻ろう」
「うん、ありがとう待っててスグ行くから」
一先ず懸念のひとつは無くなったわね、後は瞬がどうなっているのか、外・・・、現実はどうなっているのか・・・