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旅⑨

黒帝号で三時間程移動した灯達、丁度良い場所を見つけた為休憩をする事にした。

移動の間、灯は自分からは話さずに魔法開発作業を継続していた

「灯、そろそろ休憩しよう」

「ん?もうそんなに経ったの?」

「ああ、三時間は走っていた」

「わ、そんなに!?そう言えばお腹空いたかも」

「次の町まではあと少しだが、ゆっくりしよう、ほら」

手を取り、サッと抱き上げると馬から降りる

「わ」

「馬も結構疲れるぞ、って、どうした」

灯を地面に降ろすとペタリと座り込む灯

「こ、腰が・・・」

「抜けたのか、股擦れは?大丈夫か?」

「痛い、かも・・・」

「ふむ、良い頃合いだったか」

「うん、ありがとうゴリさん、声掛けられるまで全然気が付かなかったよ」

「気にするな、それだけ集中していたという事だろう」

「あはは・・・、乗馬って結構疲れるんだね」

「結構飛ばして来たからな、もう少し抑えよう」

「私、大丈夫だよ?」

「いや、行程的にも次の町で一泊するし、もう近いんだ、もっとゆっくりでも良かったな」

「でも、陸と鈴姉をあまり待たせられないし・・・」

「灯、自分が待っている身になって考えてみろ、勿論行方不明期間が長い程不安になるが、いざ再会した時にクタクタのボロボロでも心配するだろ?」

「うん・・・」

「まったり観光する訳にもいかないが、急ぐ必要もそこまで無い、元気な顔を見せて旅は楽しかったと言える位の余裕は有ってもいいだろう」

「うーん・・・、うん、そだね!私急ぎ過ぎてたかも」

「ああ、慌てず急がず急ごう」

「ふふ、なにそれ」

「人生の秘訣だ、急いで得るものなどたかが知れてるんだ、何事も程々に、が一番」

「ゴリさんの人生訓?」

「まあ、そんな感じだ、どっちかと言えばこっちの方が大変なんだから我が身を優先するべきだ、今幼馴染達が何をしているかなんて分からないだろう?」

「うん」

「もしかしたら王都で観光しているかも知れないし、危機に陥っているかも知れない、だが知る術は無いし、知っても何も出来ん」

「そう、だね」

「一人で出来る事はたかが知れてるんだ、灯、ゆっくり行こう、な?」

「ん、ありがとうゴリさん、分かったよ」

スクッと立ち上がり、レジャーシートを広げて食事の準備を始める灯

「お婆ちゃんの薬湯美味しいから癖になっちゃってね、結構楽しみにしてるんだ」

「俺もやっと味わえるな、あの青汁はもう勘弁だ」

「凄い顔してたよ、あの時のゴリさん、そんなに不味かったの?」

「不味いなんてものじゃない、エグ味がエグい」

「なにそれー、エグいエグ味?」

戴いたお弁当を広げて、薬湯(果汁)を飲み始める灯

グレゴリも薬湯(?)を取り出しひと口・・・

「ぐえ、ぶっ!!」

「ぎゃー!ゴリさん汚い!」

アノ味を不意に食らい噴き出すグレゴリ、ぼたぼたとレジャーシートに広がる青汁(エグ味)

「ぐ、げっほ、ごほっ」

「何、もう!ゴリさん、行儀悪い!」

「いや、ごれっ、ぐ、、」

「うん?やだ、何コレ生臭い?青臭い!ゴリさん臭い!近付かないでよ!」

出発前になんとはなしに考えていた、灯には言われたくなかった台詞を早速言われてしまいへこむグレゴリ

「く、くさい・・・、婆さん・・・、ぐえ、、」

しかもエグいエグ味のアレより更に強烈になっている気がした。

だが青汁(前)と青汁(真)、どちらを飲んだ後も体調がすこぶる良くなるので何とも複雑な気持ちになる。


その後の旅は順調に進む、日中は馬や白虎に乗って長時間高速移動の強行軍になるが、町と町の間を早く移動する事により明るい内に宿へ入り町中を散策、グレゴリは灯の様子を窺っていたのだが、移動疲れは有っても町で気分転換も出来て、夜はしっかりベッドで寝れる事で疲労は溜まっていないようだった。

黒い巨大馬と白虎の組み合わせは目を引くので、少し街道から離れた所を駆け抜けていた

そうすると通常はモンスターや盗賊と遭遇しやすくなるのだが、灯の索敵範囲は今や広大なものとなっていて、ほぼ回避して移動していたのだ。

「ゴリさんこっち」

「ああ」

灯の誘導でナビゲーションして貰う、かなりの速度で移動していても会話が成り立つのは新魔法無線(トーク)で、会話をしているからである。

風切り音で灯の誘導が上手くいかない時があったので、休憩時にササッと作ってしまったのだ

「システムのパーティートーク使えなくなったからね、音を任意に飛ばす位なら簡単だよ」

なんて言ってはいたが、通信手段のないこの世界では革命的な魔法では無いのだろうか・・・

灯は意外と抜けた所がある、戦闘中や他人事に関しては無いのだが自身の事となると結構うっかりしているから気を付けねばならない。

今も懐で何かを創っている

「灯、今やってるのは結界魔法か?」

「違うよ、アレは終わったから、新しいの」

「まだ創るのか・・・、いや結界も終わったのか」

「うん、概ね形にはなったと思うから、今度ゴリさん思い切り殴ってね」

「それは構わないが、今創っているのは?」

「魔法の無詠唱化」

「・・・」

流石に呆れるグレゴリ、魔法の無詠唱化はゲーム時は当然実現出来るものでは無かった、それを今度は現実世界で創ろうと言うのか

「出来るのか?」

「不可能では無いけど、多分私専用になる、かな?」

「灯専用?つまり、汎用性は」

「無い、ね、正確に言うと私専用と言うよりは神龍の瞳を扱える人間専用、かな」

「どういう事だ?」

「現状だと無詠唱化技術の開発じゃなくて、神龍の瞳の莫大な魔力を使って無理矢理魔法を加速して捻り出す、って感じ?」

「だが中身はどうあれ無詠唱になるのだろ?凄いじゃないか」

「怖いからね、詠唱中は」


魔法詠唱は一種のトランス状態だ、使いたい魔法を思い浮かべ魔法式が起動、この時点で集中状態になり術者本人はその場から動けない、あとは魔法が発動するまでそのまま。

魔法を使う時、術者は完全に無防備になる為、無詠唱魔法の恩恵は計り知れないのだ。


灯はグレゴリの肩に乗っているので今の所自分が動きながら魔法を唱える事は無いのだが、それでも戦闘中に周囲の状況を数秒でも見失うトランス状態はデメリットが大きい、ゲーム時代なら詠唱中は硬直時間だけなので次の行動を思考、準備、周囲の状況確認は出来ていたが、此処では実戦である、特に臨機応変な対応が望まれる支援魔法の使い手にとっては生死に関わるとして、灯は無詠唱化に手を付けたのだった。

「見て!神の盾(アイギス)

キィンッ!薄く光る膜が周囲を囲む

灯が杖から魔力を引き出し、即座に魔法が発動したようだ。

「結界が、無詠唱化・・・」

「途中で気付いたけど、如何に効率良く杖から魔力を引き出すかを突き詰めた方が一番良いみたい」

「そ、そうか・・・」

盾役の存在をも脅かしかねない魔法に冷や汗が止まらない

余計に神龍の瞳を持つ灯に気を付けねばならないな・・・

気を引き締めるグレゴリであった。



先を見つめるは王都、二人はその王都へ向かう手前の町で、良からぬ話を聞くことになる・・・



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