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旅⑦

「手伝いなんて要らないのに」

「何もしないのも悪い気がして・・・」

「アンタは患者、寝てりゃ良いんだよ」

「怪我は治ったから!貧血気味だけど・・・」

「下手に歩き回るんじゃないよ、危ないからね」

「うん、座ってる」

手伝いは要らないと言うたまお婆ちゃん、貧血以外は元気になった灯は手持ち無沙汰もあり、けれど動き回る事は許されなかった為に座ったまま杖を取り出してサポートしだす。


トントン、キィン・・・


たまお婆ちゃんに確認を取っては洗濯、食器の片付け、消毒、清掃、果ては野菜の土落としまでも魔法で手伝う。

全て虹色玉(シャボン)の応用魔法で、同時に洗浄魔法も混ぜ合わせる事で泡が全てを綺麗にしていく。


「器用な事するね・・・」

「動けないから魔法弄ってたの」

「アンタ、魔法創れるのかい・・・」

「あ、」

魔法開発(クリエイト)をうっかりバラしてしまう灯

「・・・」

「今のは、無かった事に・・・」

まずいかも、と思った灯だが、

「何の事だい、こんなババアが何をやると言うんだ」

「たまお婆ちゃん、好き!」

「ふん、・・・無理すんじゃないよ、病み上がりなんだ」

「うん、ありがとう」

そっぽを向いて薬草をすり下ろす、たまお婆ちゃん。


すると突然杖が光り、神にゃんに変身した

「にゃー」

「神にゃん、久しぶりー」

「杖が猫にもなるのかい、何者なんだよアンタ・・・」

「えーっと、冒険者?」

「並みじゃないね、着ていた服、杖、魔法の腕」

「え、へへ、まあ、色々有って・・・」

今はまだ明かせない、自分だけの問題では無い

異世界から来たと話して、自分だけ痛い目をみるのは構わない、だけど陸、鈴姉、グレゴリ、転移者全員に迷惑が掛かる可能性もある。

「・・・、まあ色々あんだろうね、話せる様になったら話せば良いし、話せないならそれはそれで良いさ」

「ありがとうお婆ちゃん、優しい・・・」

「伊達に長く生きてないよ、まあ・・・」

何かを言おうとして黙り込むたまお婆ちゃん

「?」


「行く場所が無いならいつでも来な、生きてる限りは此処に居るからね」

「っ」

なんで会う人会う人、皆こんなに優しいのだろう・・・

何も話していないのに、此処に居て良いのだと言ってくれる、泣きそうになるがグッと堪える灯。

「ハジッコの街でも、此処に居て良いって言ってくれた人が居てね・・・」

「ほう?ならあたしと一緒で良い女だね、間違いない」

「へへっ、そうだね、みんな優しくて好き・・・」

「子供はね大人に甘えて良いんだよ、それを受けて動くのが大人ってもんさ、持ちつ持たれつずっと続いていく事さね」

「お婆ちゃんかっこいいね」

「ふふ、だろう?灯も良い女になるんだよ」

「うん、頑張る」

そんな会話をしている部屋の外には、グレゴリが居て聞いていた。

「適わんな、俺も精進しないとな・・・」




――――――――――――――――――――――――――



毎食くぴくぴと薬湯を飲み干す灯

「真緑なんだが、大丈夫なのか?」

「なんだいデカいの、あたしの薬にケチ付けんのか?」

「い、いや、そういう訳では・・・」

「ゴリさんも飲むー?」

「あ、いや、うむ・・・、味は気になる」

灯から受け取ろうとしたグレゴリだが、

「それは灯の薬湯だよ灯が飲み干しな、デカイの!仕方ないからアンタにも作ってやるよ、聞けば肉ばかり食ってるらしいね、若い内に不摂生してると歳食った時にガタッと来るよ」

「あ、ああ、恩に着る」


十分後、グレゴリに薬湯が渡された。


「ほら、飲みな」

「では、、う、匂いが・・・」

生臭い!灯はこんなものを平気で飲んでいたのか!?

「なんだい、いい大人が、灯を見習いな!」

「ぐ、いただきます・・・」

グッと薬湯を呷るグレゴリ

「ん、ごふっ、げふ、!!」

エグ味がエグい!なんだこれは!

こんなもの飲み干せる訳が無い!あまりの味の酷さに驚愕する

「一度口を付けた物は責任持って飲み干しな、子供じゃないんだ残すのは許さないよ」

「お、うぐ・・・」

涙目になりながらも気合いで飲み込む、何度となく吐きそうになるが、たま婆さんの前で吐けば後が怖い、何より灯の目の前で吐いて醜態を晒す訳にも行かない!

ゴグリと飲み込むグレゴリ、顔は脂汗でジットリしていた。

「ゴリさん大丈夫?」

灯が背中を撫でてくれる

「灯、っぐ、凄いな、こんなもの、、っ、毎回飲むなんて、、」

「えー、美味しいけど?」

お、美味、しい?こんなものが、美味しい、だと!?

灯の言にハッとなり、たま婆さんを見ると

「くっくっくっ・・・」

心底面白そうに笑うたま、その表情は見事なドヤ顔、やられたっ

「婆さん、謀ったな!?」

「何を言ってんだ、誰が灯と同じ物を出すなんて言ったんだい、この娘のは消化を助け内蔵の動きを補助する薬湯、アンタのはただの青汁だよ、っ、はっはっはっ!」

腹を抱えて笑うたま、この婆さん悪魔かっ!


因みに灯の薬湯は果物と蜂蜜を入れて味を整えている、味はミックスジュースだった。

「可愛い娘っ子にわざわざ不味い物作る訳ないだろ、飲みやすく作るのも治癒師の腕の見せ所だよ!飲みにくい薬なんて少し良くなったと思ったらスグ飲まなくなる奴ばかりだからね」

正論だった、飲みやすい薬ならそれにこしたことはない。

「ぐ、なら何故俺のは只の青汁だっ、、おえ、、」

「暇潰し」

平然と言い放つたま婆

「ば、婆さん・・・、ぐぅ」

「おうおう、どうした坊や、あたしが何か危害を加えたかい?」

肉ばかり食べている事で健康の為に青汁を飲まされただけだ、危ぶまれる事が無ければ、害される要素も無い、だがなんだ、このやるせない怒りはっ


グレゴリの口の中からエグいエグ味が取れるまで、たっぷり一時間程掛かったのだった。



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