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旅。

灯とグレゴリの旅は順調だった、散発的にモンスターは襲い掛かって来るがどれも小型の獣ばかり、問題にはならない。

とある森の中での事

「ゴリさん、なにこれ・・・」

「今日の昼飯」

「焼いた肉じゃん?」

灯の目の前には見事な「マンガ肉」、それは肉汁が流れ、とても美味しそうである。

「料理任せろって言うから、期待していたのに・・・」

灯は文句を言いつつもナイフで肉を切り取り口に運ぶ、グレゴリは骨を鷲掴みにして食べている

「いや、旨いだろ?」

「美味しいけど、ゴリさん、これを料理とは言いません」

「男の、料理だ」

「他に出来る料理は?」

「焼き魚と焼き鳥」

「・・・」

「カレーとシチューも出来るぞ」

これならセーフだろ?と、言わんばかりのグレゴリを見る灯の目は完全に呆れている

「焼けば料理だなんて思わないでよね!」

そう言いながらナイフを置くと、材料を魔法鞄から取り出し適度に切り、鍋を火に掛けると、あっという間に野菜のスープを作る、序でに白パンも取り出し、魔法で加熱してホカホカにした物を並べる。

「コレが料理!はい、食べて、肉だけなんて体に悪いよ」

勿論二人分だ。

「む、ありがとう・・・」

流石に肉だけは駄目だったかと反省しつつ、並べられたスープに手を伸ばす

「・・・」

「どう?一応味見はしたけど・・・」

自信満々で料理を出した割には心配らしいが

「・・・うまい、お腹に温かく染みるな」

そう感想を言うと、灯はパァーっと明るく笑顔になって喜ぶ

「そう!?良かった、好き嫌いあったら言ってね、食べやすく料理するから!」

普通出さない、のではないのか、と苦笑しつつグレゴリは話す

「ああ、灯は良い奥さんになりそうだな」

何気無く言ったつもりだったが灯は顔を真っ赤にする

「お、奥さん!?えへへ、そうかな・・・」

恐らく誰かを想い浮かべたのだろう、その表情は恋する乙女そのものだ

「好きな人が居るのか」

ピクリと反応する灯、だが表情が曇る

「うん、好きな人、居たんだ」

「居た?」

「うん、もう多分会えないから・・・」

今にも泣きそうな顔になる灯にグレゴリは己の無神経さを反省する

(しまった・・・、この子はまだ14歳、俺みたいに簡単に割り切れるような経験も無ければ年齢でも無い)

「灯・・・」

「だ、大丈夫!元々フラれたようなものだったし、さ、ご飯食べて出発しよ」

何か声を掛けようとするも、灯はそう言ってちまちまと食事を再開する、その姿は必至に痩せ我慢しているのが分かる。

(出来るだけ早く幼馴染の所へ無事に・・・)

そう決心するグレゴリであった。


最初の難関、雪山が待ち構えていた

装備による耐性、サポート魔法による補助が無ければ先ず登る事は出来ないであろう寒さ、環境。

昼の晴天で-10℃、日が暮れると-40℃を下回る、吹雪くと更に体感は下がり人の存在する環境では無い、体力バカのグレゴリでも冷気に体力を奪われ、そこをモンスターに襲われれば力尽きるだろう。

この雪山では灯の補助魔法(バフ)の出番だ、杖が汎用品の物を使って居たのだが、翁の工房により世界最高の杖を振るえるようになった、その恩恵は計り知れない。

ゲーム上では必要ステータスのSTRを満たさなければ性能を十全に扱えない物でも、アークオンラインの世界が現実になった事により、単純に「重くて力が足りないから扱えない物」になっていた杖・神龍の瞳は軽量化を付与(エンチャント)され、更には翁の手により無重力スライムの特性も得る事となる。

結果、STR1という貧弱な灯でも振るえるようになった杖は恐ろしい性能を誇っていた。


杖・神龍の瞳は神の御業によって生み出された杖である

魔法系に関するステータスを大幅に、と言っても足りない程の超強化補正。

また、ハイエンド装備には漏れなく特殊効果が備わっていて神龍の瞳も例外ではなく特殊効果を持っていた


効果1 龍特性(神)の獲得

効果2 龍の加護

どちらの効果も不明である。


核となる圧縮された龍の瞳には事実上無限とも言える魔力が内在しており、灯は得意の魔法製作(クリエイト)でその魔力を己がものとして扱える様にしている。

補助強化(サポート)魔法特化と言っても丸一日以上の付与は不可能であったが、これにより常に魔法を維持する事が可能となった。


ギュウギュウ・・・

雪の中を進むグレゴリ、定位置の肩には灯が居る。

雪の深さは100cm程であろうか、仮に灯が自力で行軍したとなると頭がギリギリ出る程の深さだ。

「ごめんねゴリさん」

「適材適所と言う奴だな、俺にサポート魔法が無いように灯には体力が無い、体力系は任せろ、灯は軽いしサポート魔法が効いていて見た目よりずっと楽に進める」

「この杖のお陰で長時間維持出来る様になったから、体温保護と全身強化は任せて」

「ああ、頼りにしてる、索敵も任せて良いのだろう?」

「うん、これも範囲と精度が格段に上がったから、出来るだけモンスターの居ないルートをナビ出来ると思うよ」

「それはいいな、この雪の中でホワイトベアーやホワイトウルフと会うのは避けたい、アイツら動き速いからな・・・」

雪山には雪山に対応している生き物、モンスターが存在している、深い積雪でも沈まずに疾走してくる狼、3mの体格で雪を薙ぎ払いながら動き回る熊などである。

「まあ、来たら来たで(ドロ)に沈めちゃうよ」

「ははっ、アレには流石に驚いたな」

「ねー」

ハジッコから旅立ち、杖による能力性能向上の検証は草原や森で済ませてある、試しに動きの速いフォレストウルフに(ドロ)を放つと、なんと沼にハマり動きが遅くなる筈がそのまま沈んで出て来なかったのである、二人共口をあんぐりと開けて黙り込んだ程だ。

流石にこのままでは問題があるとして加減を覚えたのだが、神龍の瞳の増幅が強過ぎるのか他の魔法もやたらと大出力の効果になっていて苦労したのだ。


こんな事があった

打ち上げ(ロケット)を使ってみようと思うんだけど・・・」

「俺は断る」

「えー・・・」

「えー、じゃない!オークの時の事忘れてないからな」

「それはごめんって!」

オークコロニー殲滅時に、事前説明も無く魔法で打ち上げてオーク集団のど真ん中へと飛ばされた、心の準備も有るし突然の大ジャンプは心臓に悪かった・・・

「嫌だ、そもそも灯の方がシャボン玉でゆっくり降りてこれるのだから適任だろ」

「あ、それもそうだね、じゃあちょっと行ってきます」

「ああ、気を付けてな」

「うん、ロケットォォォォォォッ!!!??」

視界から完全に消える灯、声が響いてなければ空へ飛んだなどと気が付かないような速度で打ち上げられた。

グレゴリが見上げると灯は豆粒程の高さへと飛んでいた

打ち上げられた時は精々20mあるかないか程の高さだったのに、今回は少なくとも50mは優に超えていた

「断って良かった・・・」

意外と慎重派なグレゴリである。



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