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ゴリラが仲間になった。

助けた人はグレゴリ・ラインハルトさん、NPCでは無く、中の人が居るれっきとしたプレイヤーでした。

これはバグなのか仕様変更なのか・・・

「略してゴリさんね、宜しくゴリさん、私は(あかり)

「ゴリっ・・・、宜しく・・・、灯」

「ゴリさん大きいね身長いくつ?あ、どうしてここに居たの?ソロ?私はパーティーだけどはぐれちゃったから歩いて出る所!」

「あ、ああ、身長は230cm、パーティーで来たんだがノイズが走って強制的に解散させられたみたいで、目の前の敵を倒してそのまま・・・」

今に至る、と。


「ね、ゴリさん一緒に行かない?」

「俺と?」

「うん、ゴリさん見た所、本職の盾役(タンク)だよね、私魔法学士だから相性は良いと思うんだ、お互いにメリットがあるし、どうかな?」

「ああ、それは俺も助かるが魔法学士だったのか、回復速度が早かったからてっきり白魔法士(ヒーラー)かと・・・」

「あ、それはね、私のオリジナル「三倍加(トリプル)」で回復速度を三倍にしたの」

アークオンラインはかなり自由度の高いMMOで、それこそ伝説級の装備を分解して新しい物を作ったりも出来る。

魔法も例外ではないが、戦闘の最適化により魔法の進化は停滞、既存のものを如何に最適なタイミングで使うか、つまりイレギュラーを嫌う風土になっており、公開されている魔法の決まった効果、決まった立ち回り、ああすればこうする、作業化でマンネリ気味になりつつあった。

勿論勝利以外の結果は要らないとされ、野良パーティーの攻略は特に平均化、没個性化が強い。


逆に、灯達のように固定パーティーでの攻略を進める者は色々実験したり、セオリーを外した攻略を敢えて行うなど、新たな攻略法を生み出したりしていた。

魔法の改善開発も正にそれである。

当然オリジナルの魔法も多数創られているが、ソースを公開している者は少数派で、灯もその1人であった。


「なんか苦労して調整して生み出した魔法なのに、コピペワンクリックで即使用は腹が立つ」

との弁。

他の魔法開発者も似たようなもので、当初新魔法を公開していた者も己へのリターンの薄さと重箱の隅をつつくようなクレームの多さに辟易し公開を止める

ここはこうしろ、こうなら良いのに、もうちょっとこう・・・

息抜きのゲームで何故クレーム対応しなければならないのか、そうしてアークオンラインでは


新魔法=専用魔法となった。


「灯は魔法開発者(クリエイター)だったのか、小さいのに凄いな」

素直に驚くグレゴリ

「お父さんとお母さんがゲーム開発しててね」

「ああ、ソースを教えて貰ったのか」

「ううん、全然教えてくれなくて、自力で組んで見せてダメ出しの繰り返し、頑張って創ったんだよ、あと小さくないよ!ゴリさんが大き過ぎるの!」

「灯の身長は?」

「143cm・・・」

「俺は230cm」

「さっき聞いた・・・」

傍から見ると巨人と小人である


「もう!身長の事はいいの、もう遅いし歩きながら打合せして行こう、時間勿体ない」

「ああ・・・」


「私はバフデバフ特化、他は何も出来ない!」

「俺は盾役(タンク)、要塞型」

「わ、特化型盾役なんて珍しいね、野良で会う盾役は技術型で立ち回り重視なのに、動き重くて辛くない?」

盾役には回避盾と耐久盾が存在している


現在アークオンラインで主な盾役は回避盾がメインストリームとされる。

回避盾は文字通り敵の攻撃を回避する盾役、高ヘイトで敵の標的(ターゲット)を固定、殴りながら維持をして、被弾時のヘイト抜けを極力抑える、回復役は基本的に楽だが崩れると立て直しに苦労する。


耐久盾は敵に殴られながらも高ヘイトスキルで標的を維持、只管耐久に特化して被ダメージを抑え殴られ続ける、回復役の支援が無ければ成立しない。

特に「要塞型」と言われる耐久盾役は動きが鈍く、動き回る敵や状態異常攻撃の多い敵とは相性が悪い、全て受ける前提なので毒麻痺等々、ヒーラーの負担が大きい

その分硬さには定評があり、HPが減った高難易度ボスの所謂発狂モード時の即死級攻撃にも耐え切ったとの報告がある。

周囲は全滅していたので、あくまでその攻撃を耐え切っただけであるが・・・


「まあ、動きは遅いが予習しておけば待ち構えているだけで済むから、後はヒーラーとバッファーに任せるだけだ」

「ふーん、真面目なんだねゴリさん、まあバフは任せてよ」

自信満々に答える灯、途中で力尽きていたグレゴリは疑問を口にする

「そう言えば灯は下から来たな、全滅して引き返して来たのか?」

「違うよ、黒龍倒した後に脱出魔法陣に乗ろうとしたら落ちちゃってはぐれたから歩いて戻って来たの」

「何っ、黒龍!?」

「うん」

驚くグレゴリ、平然と答える灯。

「あの黒龍だよな?」

「どの黒龍か知らないけど、此処のボスの黒龍だよー」

「倒したのか?」

「倒したよ、皆で」

「何人で・・・」

「4人」

ハイエンドコンテンツのボスを4人で討伐。

本来は5人1パーティーを3組、最大人数(フルパーティー)での討伐対象を4人で倒したと言う少女。


「どうやってアレを倒したんだ?」

「耐えて、殴って、回復して倒したよ」

「いや、4人では耐えられないだろ?」

「キツイよねぇ黒龍の攻撃、マジックポーション毎回使い切るよ」

「・・・、嘘だろ?」

「嘘じゃないよう!」

「何か証拠は?」

疑うグレゴリにムッとして返す灯

着替えマクロ(ドレスチェンジ)!」

瞬時に装備を換装する灯、それは頭の先から足の先まで全て黒龍が落とす最終装備であり、戦闘に参加して居ない限り入手は出来ない装備、当然誰かに取って貰える仕様のアイテムではない。


「マジか・・・」

絶句するグレゴリ

「エッヘン!さっき装備一式揃ったのだ!」

ドヤ顔の灯


「さ、行こう、ゴリさんのお陰でゴリ押し出来そう」

「ゴリだけに・・・?」

「うん、取り敢えず速さと重さを増やすから、適当に壁に押し付けて嵌め倒そう」


その後は無双であった

二重詠唱(ダブル)敏捷向上(スピード)重量追加(ファット)

2m超えの金属全身鎧(フルプレートアーマー)の盾役が、大盾を構え、攻撃に全く怯まず突撃して行く、その突撃は戦車のそれで質量と速度の暴力であった。

重い物が加速すると止めるには相応の力が必要になる

ここはダンジョン、ボス広間以外はそこまで広くは無く、敵は基本小型の者しか現れない、つまり


「ギャーーッス」

「ゲッゲッゲッ!」

「ふん!シールドチャージ!」

大盾で壁に慣性の法則宜しく押し付けられ・・・

ズ、ッドン!

「グエッ」

「ギャッ」

無惨に潰されるモンスター、更には

「えい、麻痺(パライズ)(ポイズン)

麻痺と毒の追加魔法で身体の自由を奪われ、程なく力尽きる。

そして毒に耐えきっても

「シールドバッシュ!」

「ブブッ」

グチャリと追撃を受け壁と盾のサンドイッチの完成、流石にひとたまりもなく・・・


「凄いな・・・」

「ねー、ゴリさんの質量攻撃、エグいよね!」

大盾に攻撃を受けて傷が入る事はあってもモンスターの毛や血が着く事などこれまで経験は無く、その手応えも相まってあまり見たくは無い状態になっている。


「いや、俺が言ったのは灯のバフだ」

「私の?なんで?」

「通常のバフで速度は上げても重さを増やしたりはしないし、ましてや増やした重さを攻撃に使うなんてやらないだろ」

「そっかな?いつも瞬兄を重くしてボスの目の前に固定するよ?」

「・・・」

南無・・・、シュンとやら、きっと黒龍の目前でも重くされて袋叩きにされているのだろう。

見た事も会った事も無い相手に同情する。


「ところで、な、コレはどうにかならないのか?」

「コレ?無理!」

「何故だ・・・」

「歩くと疲れて息上がってサポート出来ないもん、凄いよね、味覚と疲労の実装」

現在、グレゴリの左肩には灯が顎を乗せて後ろからぶら下がっている。

少し歩くと息が上がる、息が上がると詠唱が出来ない、突然の会敵にサポートの遅れはエンドコンテンツのダンジョンでは命取りであるからして・・・

「抱っこ?」

「手が塞がる、盾が持てない」

「肩車?」

「やってみるか?」

・・・

・・・


「ぐ、おええー・・・」

「ダメだな・・・」

2m超えの大男の視点は140cmそこそこの灯には見た事の無い絶景であり最初ははしゃいでいたが、戦闘に入るとあっという間に酔ってしまい継続戦闘能力に無理があった。


という事で、グレゴリと出来るだけ目線を同じにして動きに合わせられるこの位置、肩に後ろからぶら下がる事にした訳だが・・・

(くそっ、顔の横に女性がっ、なんかいい匂いも、いやいやっ)

肩にぶら下がっていると言う事は、自分の顔の横に灯の顔がある訳で、ふわりと香ってくる甘い香りにドギマギするゴリラ・・・

(近いっ)


灯は140cmそこそこの小柄な体格に、肩までの黒髪、装備は見た目を弄っていて和装風、顔は整っていて美少女である、本人はゲーム内だからと距離感がやたら近く、なんとか意識しないように務める。



「そんな事は聞いた事ないが・・・、それを言うなら痛覚と嗅覚も、だな」

「え、そうなの?」

「ああ、ほれ、盾!」

スっと大盾の血塗れの面を近付ける

「ぐへ、臭っ、清潔洗浄(クリーン)清潔洗浄(クリーン)!」

「おお、盾が綺麗に!ありがとう!」

「ど、どう致しまして・・・、でも痛覚はヤバくないですか?」

「・・・、、正直、痛い・・・」

「そういう事はスグ言ってよゴリさん、構成変えるから、・・・えっと、防御向上(プロテクト)、ううん衝撃緩衝(ショック)かな、硬くなっても痛いものは痛いだろうし、うん、衝撃緩衝と速度向上、重量追加、かな」

「助かる、だが痛覚を誤魔化すようなものは無いのか?」

「今は無いよ、ただ今後創れるとは思うけど、現状有ったとしてもオススメ出来ないかも」

「何故だ」

「仕様が変わってUI(がめんひょうじ)が無くなったし、だから、痛覚を無くすと怪我の有無が分からなくなるし、今ヒーラー居ないから・・・」

「確かに、危ないか・・・、入口までMPは持ちそうか?」

「うーん、ギリギリかな?自然回復も合わせてどうか、って感じ」

「そうか、なら進行を遅めにして行くか」

「うん、そっちの方が助かる!最悪の場合霊薬使うからあまり気にしなくても良いけどね」

「霊薬は勿体ないだろ、ボス戦なら兎も角、雑魚で使うなら死に戻りの方が良くないか?」

「まあ、それもそうだけど

装備揃った記念に気持ち良く脱出したいから!」

「そうか、霊薬使った時は半分持つよ、お互い様だからな」

「わ、太っ腹ゴリさん!好きよ」

「よせやい」


軽口を聴きながら道程は順調に進んでいた

下層から上がれば上がる程に敵は弱くなる、疲労感が気になるが問題にする程ではなかった、2人は順調に脱出していた。


その頃、瞬、陸、鈴と言えば・・・




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