邂逅。
王都では勇者と聖女が召喚されたとの話で持ち切りだった。
どちらも黒髪らしい、ジョーさんによると
「今は環境が変わって落ち着ける為に王城に缶詰めだとよ、でもその内気が滅入って街に出て来るかもな、ガハハッ!誰だってそうだ、閉じこもっても気分転換になんかなるかよ!」
豪快ながらも気の利くジョーさんの言う通り、数日後街へと出掛ける勇者と聖女。
その日は休養日として街で買い物をしていた瞬、陸、鈴。
「これは?」
「うーん、デザインが・・・」
「さっきのは?」
「惜しいよね」
鈴と陸が何やら雑貨を熱心に選んでいる
「おーい、そろそろ昼食べに行こうぜ、この間旨い食堂見つけたんだ」
近くのベンチで瞬がしびれを切らして言いながら二人を見る
「はいはい」
「今行くよ」
「うっし、期待しておけよ」
「不味かったら奢りね」
「マジか」
「この間美味いって言うから行ったら、ゲテモノ系だったから・・・」
「でも美味かっただろ?」
「美味しかったけど止めて」
「ゲテモノは人を選ぶから」
「大丈夫、今回のは普通の食堂で普通に美味い、それなら文句無いだろ?」
「まあ」
「普通なら・・・」
そうして行った食堂は普通に美味しかった、家庭の料理といった感じで少し懐かしくなってしまったが。
「瞬先輩?」
「ん?」
食後のデザートにケーキを食べていると唐突に名前を呼ばれる
「わ、やっぱり瞬先輩だ、陸先輩も!こっちに来ていたんですね」
「鈴先輩も居るじゃん」
女と男に話し掛けられる、先輩と呼ぶと言う事は後輩だと思われるが、瞬、陸、鈴がそれぞれ顔を見合わせるも三人共首を傾げる、誰だ?
「えっと、ごめん、君達は?」
瞬が代表するように問うと
「あ、えと、すいません!○○中学校で一年生の時に先輩達を知っていたので」
「同じく、すいません、一方的に知った気になってました」
「あ、ああ、そうなのか・・・」
異世界にて同郷の者、しかも同じ学校の近しい人間に会うとは思っていなかったのでビックリする瞬達、そして疑問がある。
勇者聖女召喚の話が出てから、この出会い、となると・・・
「勇者様、聖女様勝手に出歩くなとあれだけ言ったではありませんか!」
騎士が複数人困り顔で食堂へと入って来る、それを聞いて「やっぱり」と納得する三人。
「良いじゃない別に、お城は飽きたの」
「拉致して、次は監禁か?めんどくさい・・・」
「いや、それはその・・・」
どうやら一枚岩ではないようだ、冷静に観察する
「所で瞬先輩達も召喚されたんですか?」
「いや、俺達は・・・」
なんと言う?そもそもこの情報を開示して良いものか・・・
「お待ち下さい聖女様、そちらの方々も異世界の?」
とそれなりに歳を重ねた騎士が会話に割り込む
「そうよ学校先輩、あと!聖女様って止めてよね、アヤって呼んで」
「これは失礼アヤ様、それにしてもこの方達も、ですか」
「・・・まあ、ね」
これは良くないな、明らかに何か考えている様な態度だ。
「失礼致しました、私はエリス王国騎士団団長のカイエルと申します、お名前を伺っても?」
「瞬、こっちは陸に鈴、所でそっちの君は?」
「あ、俺は流星です」
お互いの自己紹介ついでに確認、聖女はアヤ、勇者は流星、ね。
「突然ですが、これからお時間を戴いても?」
騎士団長カイエルが話の場を設けようとしてくるが
「すみませんが、これから用事があるので、陸、鈴行くぞ」
選択肢をわざわざこっちにくれたんだ、さっさと離れようと思い陸と鈴にも促す瞬。
「そうですか残念です、では次の機会に・・・」
「えー、先輩もう行っちゃうの?私達お城に居るから何時でも来て下さいね」
次は無いし遊びにも行かない、少なくともこの国の騎士団団長を務めている人間だ警戒心しかない上に、誰がその本拠地である城に行くと言うのか・・・
そそくさと食堂を後にする瞬達、それをジッと観察するカイエル
「おい、行け・・・」
「はい・・・」
騎士数人が瞬達の後を静かに追う
騎士団長の青い瞳は何を写しているのか。
「陸」
「来てるよ、隠れたつもりだろうけど筒抜け」
「分かりやすい行動で良いけど、今後めんどくさいわね」
「まあ、折角呼び寄せた勇者様と聖女様の知り合いだ、何かに使えないかと思うのは分からんでもない」
「陸、レベル見た?」
「見た、団長が21、勇者30、聖女29」
陸は忍者系物理アタッカーで隠密偵察索敵技能もある、戦闘前から警戒して敵の力量を測る事も可能だ。
「低っ、勇者は対モンスターの切り札みたいな話もあったからどれだけかと思ったら30?」
「騎士団長で21程度なら、こっち来て即30なら化物扱いでも間違いは無いんじゃないか?」
「後は、特殊技能とか持ってるかも」
「はあー、ラノベ宜しく最強無双みたいな?」
「まあ敵に回ったとしても問題はない、が」
「が?」
「王国が後ろに付いているのがなぁ・・・」
「敵対せずに表面上付き合えば良いんじゃないかな?」
「それはそうだが、あの女、嫌いだ・・・」
瞬が心底嫌そうな顔で言う
「瞬、昔からああいうタイプ毛嫌いしてたもんね、あからさまに秋波送ってくるタイプ」
瞬は昔から人気があり、そういう目で見られる事も多かった、その中でも
「ああいった「欲」が透けて見えるのは本能的にダメだ、あと、なんか上手く言えないけど好きになれん」
「灯の視線は気にしないのにね・・・」
「灯のは純粋に親愛だから大丈夫なんじゃない?「欲」は混じって無いでしょ」
「もしくは「特別な存在」だから?」
「それもあるかもね」
ぼそぼそと話す陸と鈴
「何話してんだ?」
「別に」
「何も」
「???」
「それより後ろ、撒く?」
「取り敢えずこのまま外出るか」
「逆に倒すのは?やれるよ全員」
「止めとけ陸、何もされてないし、後をつけられてるだけだ、撒く」
「ホーム特定されたら堪らないわね・・・」
「全くだ・・・」
そうして後を付けている騎士達をやり過ごす瞬達、頃合いを見てホームに戻る
「なあ、いくつか気になっている事があるんだが」
「何?」
「あのアヤって女、俺達の事知ってたよな、俺が地球に居る時みんな存在を認識してなかったんだが・・・」
「何故、私達を認識しているか?」
「ああ」
陸が言う
「俺も疑問に思ったから考えていたけど・・・、例えばこっちに来た人間はオッケーとか、俺達の存在が認識されなくなる前に召喚されたとか」
「認識されなくなる前に召喚だと時系列に矛盾が」
「いや、同じ時系列で呼ばれたとも限らない、過去から未来に召喚された可能性も有るだろうし、あとは「あの」ノイズを体験していた、とか」
「あー、アレか」
「瞬だけアッチで俺達の事を覚えて居た事を考えると、コレが最有力かなと思ってる、どれにしても確認は出来ないけどね」
「ま、そこは重要じゃない、あのアヤって子、俺達を知っていたよな」
「だから、それは今の・・・」
「そうじゃない、俺達を中学の先輩と知っていたって意味だ」
「?、それがどうかしたの?」
「陸と鈴だけを知っているなら、俺から見たら3コ歳下、だが俺の事も知っていた、つまり2コ歳下、灯と同級生になる」
「まあ、そうだね」
「・・・」
そこで無言になった瞬の顔が険しい、怒っているかのような雰囲気に陸と鈴も気付く
「何?どうしたの」
「まさか、、まさか、とは思うんだが、光さんに渡された色紙と手紙覚えているか?」
「うん」
「ええ」
「あの手紙に灯を虐めていた主犯の名前書かれていたな」
「色紙の寄せ書きにも書いていた、あのゲスね・・・」
鈴もその時の事を思い出したのか、吐き捨てる様に言う
「確か、「アヤコ」って、まさか・・・」
「あの女、アヤと言ったよな、「アヤコ」の呼び名としては無理のない呼び方だな」
「でも確証が・・・」
「そうだ確証が無い、アヤなんてそれなりにある名前だ、今こっちの世界に居るから確かめる術も無い、いや正確に言うなら有るには有るが・・・」
「灯本人」
地球に戻る方法が無い、つまりあっちへ戻って確認など出来ない、そもそもコチラの存在の立証も出来ないだろう。
唯一、当事者の灯本人だけがそれを知っているのみ
「ダメよ、絶対ダメ、間違いなら良いけど、張本人だったら」
「そうだよ、やっと戻って来たのに」
そう、灯が虐められて学校へ行かなくなるまで、たったひと月足らず、四月に新学期が始まり五月に入る前には学校へ行かなくなった、そして瞬達三人が母親の光に言われて気付くまで3ヶ月、七月になって灯に会いに行った。
この3ヶ月間も実は灯を人に会わせても大丈夫、と光が判断に至るまでの期間である。
七月、真夏だというのに首まで覆う長袖とロングスカート、肌の露出を極力抑えたその格好は怪我の存在を容易に想像出来た、3ヶ月も消えない痕、そう考えるとまさか本人かも知れない加害者に被害者を直接会わせて確認する訳にもいかない、舞台である世界が移り変わった以上訴え出て何になると言うのだろうか。
虐めた相手へ送る寄せ書きに平然と己も書き込むような人間だ、反省など臨めるのか?
本人ならば、復讐するか?
否、誰もそんな事は望んでいないし、そもそも灯が喜ぶ訳もなかった・・・
「俺だって解っているさ、疑念、可能性がミリでもある限り、あの聖女とやらと灯を近付けさせない、それでいいな」
「うん」
「そうね」
「あと、一応の提案として言ってみるが、アヤ本人に聞くってのは」
「有り得ない」
「ナシね、あの子「聖女」なんでしょ?ジョーさんに勇者聖女召喚について教えて貰った時から調べてみたけど、勇者も聖女も無駄に権力あるから」
「あまり接点を持たない方が良いか?」
「ええ、国王と同等の権利が認められているみたい、実際に行使出来るかどうかは別として、王国法的には、だけどね」
「じゃあ、なにか?あの二人の機嫌を損ねたら・・・」
「国を相手取るのと同様の意味を持つ事になる」
「やべえな・・・、俺と陸」
「目、付けられてるわね、あの様子では」
「そういう鈴も、あの勇者とやらの、」
「止めてよね気色悪い」
「気付いていたのか」
「あんな気持ちの悪い視線受けて気付かない筈無いでしょ」
食堂で勇者と聖女に会った時、勇者は鈴をジロジロと見ている、聖女の方は瞬と陸、特に瞬の方への態度は隠すつもりがないのかあからさまであった。
「恐らく、勇者聖女と持て囃されて、しかも何故か物理的な力も権力も手に入って勘違いしたか、増長したんじゃないか?」
「灯と同級生なら14歳、その年齢なら舞い上がりそうだね」
「まあ、灯がその状況になってもああはならないと思うけどね」
「確かに、ま、そういう事だ!灯には話すなよ、事前の話通り、国がきな臭いって事で国を移る」
コクリと頷く陸と鈴、既に灯は近くまでと迫って来ていたのだが、とある出来事も起ころうとしていた。
それが引き金となり今後とある事に巻き込まれて行く事になるのだった。




