戦い、終わって。
戦闘後は後片付けがある、モンスターの死体を放置してしまうと疫病の発生、土地の汚染、アンデッド化、事後の対処で事前の予防となる。
「ゴリさんやり過ぎ!手加減って言葉知らないの?」
「いや、ここまでの威力が出るとは・・・」
オークをまとめて倒そうと全力で範囲攻撃を放った結果、土や岩盤はめくれ上がり、木は薙払われ、森だった場所は跡形もなく破壊されていた。
「自然破壊」
「いや、うん、すまん・・・」
謝るしか出来ないグレゴリ、灯の強化が後押しをした結果でもあるのだがそれを言うと
「私のせいって言いたいの?」
と言われそうなので、自己責任として受け入れる大人なグレゴリであった。
そう今現在、手の空いた者達で残りのオークの討伐、死体の浄化など手分けして作業をしていたが、広域破壊に因り浄化作業は苦戦していた。
「浄化は使えないから、はい聖水」
と大量の聖水を押し付けられたグレゴリは大人しく浄化して歩いていた、それも
「次はあそこの木の下、まだ生きてるから」
「ああ」
灯の索敵によるサポートが無ければ浄化だけでどれだけ掛かったか・・・
最終的には他のパーティーの浄化を使える魔法使いから
「そちらのお嬢さん、先程拡大化使ってましたよね?
差し支えなければ強化して頂いて浄化を・・・」
との申し出により、広範囲浄化で解決した。
因みにゴブリン側は情報通りの規模で恙無く討伐したそうな。
「疲れた・・・」
肩に顎を乗せてぐったりする灯
「寝ても良いぞ」
「良いの?ありがとっ」
グレゴリの首に掴まり、そのまますぐに寝てしまう灯
「・・・冗談のつもりだったのだが」
首筋に寝息が掛かってくすぐったい、そして何度も思うがこれだけの戦闘終わりなのに汗の匂いがしない
「男とは違うのか・・・?」
「旦那、嬢ちゃんに発情したんで?戦闘後は滾りますよねぇ」
「してない、なんだ貴様・・・」
傍らにザッコが居て話しかけて来たので、ドスを効かせる
「おっと、この破壊を見て突っ掛かるような真似はしねえよ、勿論その庇護下にある嬢ちゃんにも」
「良いか覚えておけ、この、」
「分かってまさぁ、嬢ちゃんの魔法も見てる、状況判断、対応速度、効率、どこをどう見ても一流の御業、疑ってやしませんよ」
「・・・ならいい」
ギルドでは見た目で判断して絡んで来たザッコも、大規模戦闘、特にオークコロニーのど真ん中へと飛び込み100、200のオークに囲まれながらも大した怪我も無く退け、そしてあの破壊攻撃。
灯もグレゴリの肩に乗って同行、あのオークの塊の中へ行くだけでも大した度胸であるのに、どうやらサポートと共に指揮も執っていた様子が見て取れた。
「旦那達は、一体何処から?」
「漆黒の龍窟から転移魔法陣で」
「漆黒の龍窟!?あの黒龍を倒したんでっ!?」
どうやら、この世界でも黒龍はかなり強い存在に位置しているらしく名は轟いているのかザッコは驚いている
「俺は途中で力尽きた、灯は倒して戻る時に俺を救った、その道中で」
「転移魔法陣ですか、いやしかし、嬢ちゃんが黒龍を・・・?」
「パーティーが居たんだがお互い離れてしまってな、道すがら同行した訳だ」
「へえ、で、どちらへ向かって?」
「王都だな」
「また遠い所へ、旦那気を付けて下さいよ、道中盗賊団やら辻斬りやらモンスターやら頻発しているそうですよ」
「そうなのか、ありがとう」
「いえ、迷惑掛けましたからこれくらいは・・・」
殊勝な態度のザッコ、力を見せた方がやはり早かった。
「んー・・・」
会話がうるさいのか、灯がモゾモゾと居住まいを正す
「灯、起きたのか?」
「んー?はむっ」
「ぬあっ!?」
灯が突如首筋に噛み付く、否、甘噛みだ。
「はむはむ・・・」
「灯っ、やめろっ!!」
寝ぼけている灯にその言葉は届かない、力づくで止めようにも首を後ろから取られていてどうにもやりにくい
(無闇に触れるのもっ!)
「ぎゃはははっ!あんだけ暴れた旦那も嬢ちゃんに掛かったら形無しだな!」
ゲラゲラ笑うザッコを横目に、グレゴリの耳は真っ赤になっている。
必死の願いが聞こえたのか、灯は甘噛みを止め、また大人しく寝息を立て始める
「も、食べられない・・・、むり」
「俺も無理だ・・・」
「スー、スー・・・」
「灯、後で説教だ」
その首筋はヨダレ塗れになっていた・・・
その後、灯は起きると何故かお説教が始まり、寝起きの頭のまま困惑する事になる
「良いか灯、男女の距離と言うものはだな・・・」
「????」
「灯聞け、これはな・・・」
「あ、ゴリさん首怪我してる、そんなとこ攻撃されたっけ?」
無邪気に言う灯に、手で跡を押さえ顔を赤くする
「灯、首への攻撃はな、心に決めた男のみにするんだ、良いな!」
何やら大真面目に訳の分からない事を言うグレゴリ
「???」
灯の混乱は深まるばかりであった。