日常
シイちゃんは侍女見習いとして働く事になった
リトラの下に付いて侍女のお仕事とこの世界の勉強。
取り敢えず、侍女服が出来上がるまでは私が先生として勉強を教えている
教え始めて何週間か経った頃
「あれ?シイちゃんは?」
「本日は先代様と出掛けております」
「おじいちゃん達と?なんだろ?」
「きっと身元の登録かと」
「あ、そっか、そうだよね」
灯は深く考えていなかった・・・
「アリィ、新しい家族ですよ」
「えっ!?」
エドおじいちゃん、シルフィおばあちゃん達と一緒に現れたのは・・・
「シイちゃん!?」
ドレスを着てカーテシーをする詩奈
「初めまして、エドワルド・ルナリア伯爵が娘、シーナ・ルナリアです」
最後にニコッと笑顔を見せる詩奈。
「・・・・・・・・・」
パクパクと口を開けてシーナを指差す、そのまま周囲のみんなを見ると
お母さん、ニコッ!
お父さん、ニコッ!
お兄ちゃん、ニコッ!
エル、ニヤッ!
みんな知っていた様だ
「灯ちゃん?」
「シイちゃん?」
「えへへ、お嬢様になっちゃった・・・」
どうやら父サイリの説明によると
詩奈の後見人になるにあたって色々と対応を考えたらしい
瞬、陸、鈴、グレゴリ達の様に戦う術を持たない
かと言って灯の様にルナリア家直系の娘のような後ろ盾が有る訳でもない
今後、王国が難癖を付けて来る事も考えられる
(尚、灯には知らされなかったが、アレクが王国との交渉内で完全に詩奈の身元は魔法国へと移されている)
そして最後に
「アリィの友達なのに使用人として雇うなんて出来ないわよ、シーナちゃんだって故郷を失った被害者なのだから」
と、明確な立場を作り上げることにした。
元々ルナリア家には複数の爵位があるらしく
その内の一つである伯爵位を父サイリから祖父エドワルドに譲渡
これはルナリア家身内の処理として特に問題無い。
そしてエドワルド・ルナリア伯爵となった祖父の元に詩奈が養女として引き取られた
この事についてはエドおじいちゃんもシイちゃんもお互いに了承している
面倒な事をせずにサイリが引き取ればそれで良いかも知れないが
人の身で弱く戦う術のない詩奈が公爵家に養女として入ると今後の苦労が予想された
それだけルナリア公爵家の看板は大きく強い
ならばと、領地も無く、書類上での貴族の元に置いた方が一番本人にとって都合が良い
かと言って紙の上でと言っても他家に出すのは無責任だし、異界からの者として利用されては幸せになれないだろう
どうにか身内で固めて、かつ公爵家の看板を背負う事無く庇護出来ないかと考えた。
貴族にならないならそれはそれで、貴族になるならそれもそれで良し、と。
結局は詩奈をエド伯爵が守り
エド伯爵とサイリ公爵は親子で事実上公爵家の庇護を得るが書類上登録されただけの貴族なので、表立って顔を出す必要も無い、と、いいとこ取りの形に収めた
詩奈本人が望む道を進める様に取り計らった結果、エドおじいちゃんの養子になった・・・
この事は国王のアレクさんも了承済みで
しかもエドワルド・ルナリア伯爵の貴族登録を公示せずに
穏やかに安全に過ごせるように詩奈の立場を整えられた
・・・らしい。
「・・・シイちゃん、大丈夫なの?」
「大丈夫!それに灯ちゃんもそうでしょ?」
「う、うん・・・」
灯自身も結局「好きに生きなさい」と言われている
強制される訳でもなく、ただ将来の為に
貴族を知って選択するために今は学園に通い勉強していた。
「お父さん・・・」
「シイナさんにもチャンスが無いと不公平だろう?」
「ありがとう・・・」
「ああ・・・」
「お母さんも、おじいちゃんも、おばあちゃんもありがとう!」
家族が優し過ぎて泣いてしまう灯
こんなにも恵まれていて良いのだろうか・・・
「良いのよ、アリィは幸せになって良いの、それにシイナさんも幸せにならないとアリィも幸せになれないでしょう?」
勿論、瞬君達も続く。
どうやら、元々は瞬兄達にする用意だったらしい
私達が公爵家に到着した当時は準備が足りなくて出来なかったけど、その後準備を進めて帰って来たら可能な限り望む道を進めるようにと手を回してくれていた・・・
ああ、なんて、幸せなんだろうか・・・
「みんな、好き!愛してる!」
泣き笑いでみんなに伝える、少し恥ずかしいけどやっぱり言いたい時に言わなきゃね!
そんな灯に周囲は一瞬目を丸くして驚くも
駆け寄って抱きしめた、おしくらまんじゅうの如く
ぎゅうぎゅうと家族のハグが心地良かった
その後、詩奈の住まいはエドワルドとシルフィールが住む離れとなり
ぎこちないながらも親子として生活する事となる
詩奈は獣人のスキンシップに戸惑いながらも
真っ直ぐ好意と愛情を伝えてくれるエドとシルフィに少しずつ心を許して行った・・・
エドとシルフィは
「ははは!この歳で娘が出来るなんて嬉しいな!なあ!シルフィ」
「ええ!うふふ、シーナちゃんドレス作りましょう?」
とノリノリで詩奈を構い倒している。
「あれ?おじいちゃん達の養女にシイちゃんがなったって事は・・・」
「お母さんの義妹、私達の叔母さんってことになるね、アリィ」
「・・・」
詩奈が祖父母の娘になったということは
母リリスの義理の妹
つまり詩奈は叔母、姪の関係となる
「えー・・・」
本当に困惑しかない・・・
友達が、叔母・・・