教育的制裁
王子と共に居たのは同じパーティーのメンバー
人族で騎士団長の息子
エルフの上位魔道士の息子
怪我をしていたのは人族の議会事務局長の息子
皆、将来の国を背負う者で決して前線に出て身を盾にする人材では無い。
騎士団長の息子は鍛錬を積んでいるだけあって何とかオーガの攻撃を避けて時間を稼いで居たようだ
魔道士の息子も幻覚魔法で消耗を抑えつつ距離を取っていた
事務局長の息子は戦い自体に向いていないのだろう
上記の二人に庇われながらなんとか逃げ回っていたが、森の地形に足下を掬われて転倒、ブルーオーガに蹴っ飛ばされたそうだ
レッドオーガだったら恐らく死んでいただろう・・・
前衛1に後衛1では戦闘にも綻びが出て来る
限界を感じて居た所にレッドオーガ二体とブラックオーガ一体、生きた心地がしなかっだろう
そんな状況でも逃げなかったのは王子が退かないから
見捨てて撤退して生き延びても後が辛くなる
撤退を進言しても聞き入れて貰えず困っていた所に上位オーガ、そしてマーガレット達がなだれ込んで来たそうだ。
王子とマーガレットが言い争いをしている間にコショコショと三人が状況を教えてくれた。
「大変だったね、えっと・・・」
「ブックです、こちらはソウドにマージ」
事務局長の息子がブック君、騎士団長の息子がソウド君、魔道士の息子がマージ君と言うらしい
「私は、」
「知ってますよ、エリューシア様、アリエット様、マリルーシェ様」
「あれ?会ったことは・・・」
「ありませんが、皆さんは有名ですから、マーガレット様と仲良く一緒にいる所を拝見しておりました」
「ブック君、怪我は?」
「ありがとうございます、マリルーシェさんから戴いたヒールポーションで治りました」
怪我はポーションとエルと灯の治癒功、ヒールで回復している。
「お兄様!」
「五月蝿い、怪我を治癒したら行くぞ!ブック、ソウド、マージ!」
喧嘩している王子とマーガレット、エルが棒読みで答える
「まだ、ちりょーちゅーでーす」
嘘だ、怪我は既に全開、マーガレットの説得の時間を稼いでいた。
「ねえ、もう置いて帰ろうよ」
「ま、マリルーシェ様?」
「いや、それが出来れば・・・、なあ?」
「ああ・・・」
話を聞けば将来を考えると「あの時逃げたな!」と思われるのは何かと面倒らしい
国に、城に仕える三人はソコが痛いらしく困っているそうだ。
「じゃあ、私かエルで無理矢理縛る?」
「ええっ!?」
「だって、ブック君達は将来の仕事の上司だから逆らえないんでしょ?
私達は別に城で仕事しないし、王子様と会う訳でもないから困らないし、ね、エル」
「そうだね、ルナリア家自体中立を保つ家系だから構わないよ」
「ま、まじか・・・」
「私がヤッても構いませんよ?こちらも辺境伯ですから・・・」
マールちゃんは完全に目が座っている
赤い瞳が全く笑っていない
「マールは落ち着いて・・・、って、あれ?」
「もう待ってられるか!一人でも行くぞ!」
「お兄様!!」
王子が一人で進み出した
嘘だろ・・・、マジかよ・・・と男三人絶望している
「メグ?」
「はあ、もう無理ね・・・、意地になっていてダメ・・・」
「どうする?今皆で話して、私かエルが強引に縛りあげようかって言ってたんだけど」
「貴女達・・・、いえ、もうそれしか無いかしらね」
良いのか・・・、王子縛られんの?見たくねぇ・・・、男達は思う所があるようたが反対意見は出て来なかった・・・
「アイギス」
「は?」
球体状況にした灯の魔法で王子を閉じ込める
「で、どうする?」
「このまま引き摺って行きましょ、私が許可するわ」
「おい!」
「マール、周囲は?」
「出せ!」
「大丈夫、モンスター無し」
「王子にこんな事してただで済むと思っているのか!」
「じゃあ行きましょ」
完全無視だ
誰も触れない
来た道を急いで戻る、あまり遅くなると心配をかけるし
さっさと家に帰って母にただいまと言ってお風呂に入ろう
「エル、そろそろ大丈夫だけど」
「魔法使ってるんだから、このままで良いよアリィ」
「ん、ありがとう」
「それにしてもアリィちゃん凄いですね、黒を一撃なんて」
「マールだって危なげなく相手してたじゃん」
「私は決め手に欠けるから、援護待ってただけだよ、エルちゃんこそオーガを蹴り倒すなんて・・・」
「あれ、硬かったよねえ、刃物何か練習しようかな」
「貴女達が味方で本当に良かったわ・・・」
「おい、ブック、ソウド、マージ、此処から出せ」
シンと静かになる、自分では出られないから断れない人間に助けろと言うのだ
だが彼らは理解している、戦闘に入った3人の中で1番弱いマールにさえも勝てないと
エル、灯と事を構えるなど以ての外
マーガレットが呆れる
「・・・お兄様、いい加減になさって、皆さん聞く必要はありません」
「分かっているんだろうな、俺に・・・」
パチン・・・、灯が指を鳴らした途端王子の声が聴こえなくなった
「音、遮断したけど良いよね?」
「ありがとうアリィ」
「コレ、連れて行くのもあれじゃない?」
「まあ、そうねえアリィ何か案は無い?」
「あるけど・・・、やっていいなら・・・」
「何?取り敢えず言ってみなさい」
「コレをお城に先に飛ばしちゃう、とか」
「・・・コレを?」
「うん」
「出来るの?」
「多分」
「良いよ、アリィちゃんやろ!」
「マールさん!?」
「ブック君達の精神衛生上にも良くないし先に消えて・・・、帰ってもらった方が良いよ」
「ま、まあ、ね・・・」
「どうする?メグが良いならやるけど・・・」
「良いわ、やって、頭冷やして貰いましょう」
「じゃあ・・・、エル下ろして」
「はい」
魔法起動、着地点座標固定、詠唱完了、待機
肉体強化、腕力ブースト、気を練り込む
「フー・・・」
王子を閉じ込めた結界玉が少し浮かぶ
魔法だけならまだ分かる
しかし何故か気を練り込んで力を溜める灯
エル、マーガレット、マールが気付いた瞬間にはもう遅い
そして
「はぁぁぁあーっ!打ち上げ!」
打ち上げ対象は結界玉、ロケットだけでは飛距離が足りないので外から物理的に力を加える
打ち上げと同時に結界玉を全力で殴った
ドッゴ、!!「げうっ!!」
鈍い音を鳴らし、空の彼方ヘと・・・
否、城の堀へと結界玉(王子入り)は飛んで行った。
「ふぅぅぅ・・・、よし、終わり!」
「まさかの力業!?魔法じゃないの!?」
「やー、魔法だけだとと届かないし・・・」
「なんか、殴った瞬間「げうっ!!」って言ってたけどお兄様大丈夫なの?」
「え?、・・・あ」
しまった!と灯の顔に出た
「アリィ?」
「あははは・・・、中のケア忘れてた、ごめんメグ!」
対象を打ち上げるロケット
今回の対象は結界であって王子ではない、つまり結界は高速で動き、王子は中で・・・
本来ならば衝撃干渉、物理防御を施せば問題なかったのだがウッカリして灯はそのまま打ち込んでしまった。
「・・・」
「・・・」
「ま、いいわ、痛い目見てもらいましょ、今回のお兄様は酷すぎたものね」
良いんだ・・・、男性陣は無言で付き従うのみ。