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新緑会③

「ただいま!」

「おかえりなさいアリィ、もー遅いから心配したよ」

言いながらエルは灯を抱き締めてキスをする

「や、ちょ、エルくすぐったい」

「じっとしてて、心配掛けた罰だよ」

獣耳を毛繕いしたり、首筋をなめてきたりとスキンシップが激しい

これはエルの構って欲しい病だった

そう言えば今日は殆ど別行動で全然話してもいなかった気がする


「それに、気を補充しておかないと、ね?

野営中に発作になったら困るでしょ、今日はもう離さないから」

「もう仕方ないなぁ」

頻度は格段に少なくなったと言っても、まだまだ灯の身体は不安定である

エルの接触で気を分けて貰うのは未だに必須


最近気付いたのだが、魔力に波長があるように

気にも波長がある

母リリスとエルの気が一番灯に近く、特に双子であるエルの気はほぼ灯の気と同じ波長で

それでもやはり微細ながらも違う気、その波長を揃えて気の受け渡しをするととても心地良く落ち着くとして

エルも灯もベッタリとくっ付く事があった。


「貴女達・・・、いえ、いいわ・・・、アリィご苦労さま」

マーガレットは傍から見るとイチャイチャするそんな二人に呆れていたが、治療みたいなものと諦めている


「あ、メグ、んふ、や、エル大人しくして」

「やー」

「・・・こほん、アリィこちらは殆ど終わったわ、日暮れが近いから女性が先に汗を流そうって話になっているの、行くでしょう?」

「あ、そうだね、走って汗かいちゃったし丁度いいかも」

「アリィ洗ってあげるね!」


「アリエットさん、結界はどうでしたか?」

「穴は全部補修して来ましたけど、一度解いて強い結界張った方が良かったかな、って・・・」

「そう、ありがとうお疲れ様、無理しちゃダメですよ広域結界の貼り直しなんて一人でやる事じゃありませんから、元に直しただけで十分です、本当にありがとうアリエットさん」

「あ、はい!」


「アリィ、先生も早く湖に行きましょ、男性方が真っ暗な湖に入る事になっちゃうわ」

「うん」

「ええ」


湖はスグ近くにある、水は透き通っていて澄んでいる

汗を流すには十分

令嬢は皆服を脱いで各々ホコリと汗を流す

「凄い開放感、ふふ、来て良かった」

王女が外で裸になって水浴びなんて、まず有り得ない

刃物を持って料理、モンスターも弱いと言っても退治して

少し前までこんな事が体験出来るなど微塵も思っていなかった

「貸し切り、って感じだね!」

「ええ!」

灯も服を脱ぎ、髪を解いて水に入った

「冷たっ」

「アリィ、洗ったげる!」

同じくエルも後ろから裸で抱きついてきた

「ありがとう、エルも私が洗ってあげる」

「メグさん背中流しますよ」

「ありがとう、じゃあマールさんの背中は私が」

「あ、ありがとうございます」



と、周囲のクラスメイトがひとつ零した

「マーガレット様、変わったよね」

「え?」

「あ、変わったって言うより、知らなかったよね」

「そうそう!学園閉鎖前はこういう事は興味無いって感じで」

「近寄り難い雰囲気だったのに、いざ話してみると、ねえ?」

「うん、勉強は教えてくれるし、優しいし」

「そ、そうかしら?」

「そうですよー、ほら私達爵位はそんなに高くない家なので・・・」

「・・・」

気にすることないのに、とは言えない

王女、と言うだけで何かと一線引かれてしまうのはマーガレットがよく分かっていた

「良かったらこれからもよろしくお願いします」

「ええ、こちらこそ嬉しいわ」

マーガレットの世界が少しずつ拡がっていく

その切っ掛けは・・・



「ちょっと、エルッ!」

「いいじゃん!」

バシャバシャとはしゃぐ姉妹を見て、マーガレットは穏やかに笑った。



因みにではあるが、水浴びの定番、覗きは居ない

皆、紳士

そんな卑怯な真似は世界がひっくり返っても有り得ないのだ


決して王女が居てバレると極刑であるとか

兎族のマールや何かと規格外の灯の聴覚を誤魔化しきれないとか

そんな理由ではない


皆、紳士なのだ・・・



その後は野営地の中心に大きな焚き火をマーガレットが着け

暖を取りながらみんなでカレーを食べ

塩漬け肉は不味い、だの

焚き火の火加減は難しい、だの

初めての体験を楽しく語らい眠りについた



テント内

「アリィ、寝よ」

「待って、髪まとめるから、エルもほら」

「ありがと」

水浴びをして髪を解いていたので、寝る前に軽くまとめる

やはり野営に限っては長い髪は不便としか言い様がない

灯はエルの髪も簡単にまとめてあげて、同じ寝袋に潜り込んだ

「メグ、マールちゃんおやすみ」

「ええ、おやすみなさい」

「おやすみなさいアリィちゃん」

「アリィ暖かい、おやすみ」

「エルも、おやすみ」



「貴女達、ナチュラルに裸になったわね・・・」


マーガレットのツッコミに答えるものは居なかった・・・






チュン、チュチュン

小鳥のさえずりで灯は目覚めた

家のベッドと比べると寝心地は悪いが、普段と変わらず隣にエルが居ることでぐっすり眠れた

「ん、アリィ?」

「おトイレ、まだ寝てて良いよエル」

「ん・・・」


寝袋から出てショートパンツとキャミソールを着る

上にカーディガンを羽織り、外履きのサンダルでテントの外へと静かに出た


トイレは仮設の物が設置されている、テントの張られた場所から少し離れていて

切り開かれている野営地から離れて、少し森に入った辺りにあった


「ん、、ふう・・・」

用を足し終わり、ショートパンツを引き上げようと・・・


ガサガサッ!


突然、茂みから音が聞こえた

「えっ!?」


覗きは有り得ない、しかも乙女のトイレを覗くなどクラスによる私刑で物理的にも社会的にも殺されてしまう

だが、結界は張ってある筈、モンスターでもないので・・・


結界があるという意識から安全と思っていたのだが、茂みからは大きな影が現れトイレの壁を殴り破壊する

「え・・・、きゃっ!」

中に居た灯は驚き、完全に不意を突かれた為反応が遅れる

大きな影は灯を見つけると鋭い爪を振り下ろした


ヒュッ


何の抵抗も無く爪は通り過ぎる、その爪先には灯が着ていた服の切れ端が無残にも引っかかっている

現れた影はレッドオーガ、はじまりの森に居るはずがない存在がそこには居た。

爪は鋭く並の防具は役に立たない、力も強く、接近戦は危険なモンスターである。





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