戦闘開始。
「ゴリさんよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそよろしく頼む」
気力充分、他の者達が森へ入って行くのを見計らって二人も行動を開始する。
「索敵」
灯が魔法を使う、自分を起点に波紋が拡がっていった
「エコー?そんな魔法無いよな?」
「昨日大急ぎで作ったの」
「名前からして索敵か?」
「うん、これまではUIの中にレーダーも有って敵とか見えていたから良いけどそれはもう無いし、森だと遭遇戦多くなると思って、突貫工事で作ったから細かい設定は出来ないけど、動体反応と生命反応くらいは探れるから、あまり気を張らずに進行して良いよ」
「ああ、それは正直助かる」
グレゴリは身体が大きいので森のような動きを制限される環境では立ち位置に気を付けねばならない、そこを見越して自身もいつものような大盾大剣では無く、左手に武装篭手、右手に長剣、と取り回しを優先した装備に替えてある。
「コロニーに入ったらいつもの格好にはするが、索敵による森の進行は本当に助かる、死角が多くて不意を付かれたら堪らんからな、索敵範囲は?」
「半径100mくらい、効果中は3秒に1回パルスを飛ばして情報を更新するから」
仮に索敵外から敵が襲うにしても3秒以内に100m以上の距離を縮めなければならない、そして今回のクエストはゴブリンとオークなので、その様な俊足を誇るモンスターは存在しないから、実質不意打ちは無いと考えられる。
「十分過ぎる」
「動体と生命だから、非生命体の待ち伏せ型は索敵から漏れるからそこだけ気を付けて、何か在れば報告するよ」
「ああ、まあこの森には恐らく当てはまらないだろう、行こう」
「ん、」
グレゴリの肩に乗る灯、基本強化魔法は一通り掛けて森の中へ入って行った。
「ゴリさん左80、オーク3の弓1、杖1、剣1!」
「ああ!」
目の前のオーク戦士の斧をガントレットで捌き、剣で喉を切り裂き確実に倒す
指示通りの方向を見ると数十m先にオーク3体、敵は未だこちらに気付いていない
「射撃妨害」
灯は既に次の行動に移っていた、射撃妨害は文字通り飛び道具を逸らす魔法
「弓は無視して、杖も封じるから剣から!」
「おう!」
敵へと駆ける、50、まだ気付かない
40、
「ブギイイイイッーー!」
気付かれた、耳障りな咆哮が耳に届く、が遅い!
弓矢は逸れ
「魔封じ」
魔法も即座に封じられ、オークアーチャーとメイジは慌てる、残り20!
剣を持ったオークが向かって来るも、元々遥か格上の強さを誇るグレゴリの相手では無い、しかも灯の強化が掛かっているとくれば
「遅いっ」
すれ違いざまに首を刎ねる、次・・・
「弓!」
見ると、アーチャーの腰には斧が見える、しかし弓矢に固執しているのか当たらない矢を番えて撃ってくる
「この距離で弓など!」
腕ごと弓を斬り捨て、身体の中心、心臓に剣を突き立てる
「最後はっ」
「大丈夫」
残りのメイジを確認すると麻痺で地面に突っ伏していた
トドメを刺す。
「ふう・・・」
「灯、もっとサボっても構わんぞ、MPは保つか?」
「え、あ、うん、このペースなら自然回復分で大した消費にはならないから大丈夫、それより」
「ああ、多いな・・・」
まだコロニーには辿り着いていない、オークコロニー周囲に居るオーク達だけでも100は超えていそうな遭遇率に二人は警戒を高める
「ゴリさん、事前情報の誤差にしては敵が多過ぎない?」
「うむ、これだけ遭遇するとなるとコロニーの規模は300は超えて居るかも知れん」
「こっちだけならベテラン勢で十分行けるけど、ゴブリン側が3倍以上に膨れ上がっていたら・・・」
「まずいかも知れんな、いくら小鬼と言っても数を頼みに群れられると面倒だ」
「かと言って、こっちも人任せにする程余裕ないよね?」
「目の前の敵を倒して行くしかないな・・・」
「ん・・・」
灯の顔色は悪い、恐らく血が原因であるのは明白だ
濃厚な血の臭い、しかも森全体で漂っている、確実に事前の情報より数が多いし、そこら中から剣戟の音が絶える事無く続いている。
「灯、あまり下を見るな、遠くを見ていれば良い、近くは任せろ」
不器用過ぎる真っ直ぐなフォローに灯が笑い出す
「んふふ、ありがとゴリさん」
「ほら、これを」
グレゴリがリボン付きの小さな刺繍入り小袋を渡す
「わあ、これ香り袋?」
「首から提げておけ」
「うん、良い香り・・・、柑橘系?」
「オレンジジュース飲んでいたからな」
「ありがと」
「気にするな普通はそんなものだ」
「うん、行こっか」
「大丈夫か?」
「香り袋のお陰でかなり楽になったから」
「辛くなったら言えよ」
「大丈夫、戦闘している分にはそんなに意識しないから」
「そうか、周囲はどうだ?」
「うーん、戦闘中は何人か居るけどほぼ片付いたかな?」
周囲の状況は灯が把握している、今回のクエストも大規模作戦などと言ってはいるが基本的には冒険者は群れない、各パーティー単位で討伐に当たっている。
「コロニーに真っ直ぐ向かうか?」
「うん、拓けた場所でいつもの装備使って暴れた方が良いかも、取り敢えず隠蔽するから様子見しよ」
「了解」
そうして休憩後、灯が透明化、無臭化の魔法を施し、二人はコロニーへ向かった。