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新緑会②

適当な石に座ってシチューを食べながら灯とマールは夕食と明日の朝食の相談をする


「マールちゃん、メニューどうする?」

「やっぱり大鍋で汁物を作るのは基本かな?」

「だよね、クラスメイト20人分ってなると、明日朝の分も考えると40人分?」

「うん、朝イチで野営の食事作りは大変だしね」

「だよね、前日の夕食兼用になるよね」

「幸い森の恵みはあるから、果物と木の枝を集める人達、魚調達する人達、調理する人達で分けて」

「朝はパンで良いかな?みんなパンは持ってきてるし」

「うん、じゃあ夕食はご飯かな?」

「ご飯炊くのは得意なので、私はそっちに回るね」

「ん、じゃあ私は調理の方に、カレーで良いかな?

大きい鍋は持ってるから、寸胴3つで作れば十分だよね」

「それで行きましょう」


「アリィ、私は何すればいい?」

「エルは魚を取った所にみんなを案内して、夕食と朝食分で40匹」

「任せてー」


「私は?」

「メグは私を手伝ってくれる?司令塔が必要だし、メグの声って通るから一緒に居てくれると助かる」

「任せなさい!」



「アリエットさん、シチューご馳走様美味しかったわ」

「いえ、お粗末さまでした」

「少し良いかしら、マーガレットさんとエリューシアさん、マリルーシェさんも」

「はい?」


少しクラスメイトから離れた所で先生が話し始める

「申し訳ないのだけど、アリエットさんに簡易結界を見て欲しいの・・・」

「結界?前日に魔法使いが来て張ったばかりでは?何かありましたの?」

野営地は事前に城から結界魔法専門の部隊が来て結界が張られている

いくら弱いスライムとコボルトでも、寝込みを襲われては堪らない

安全のために当然の処置である


「それが、さっき見回りして来たのだけど一部破壊されていてね」

「破壊!?」

「ええ、私は結界は専門じゃないし、大規模結界なんてとても・・・」

「なるほど、結界魔法ならアリィの得意な魔法だから」

「そうなの、一応破壊された所にはゴーレムを配置して来たから今すぐどうこうなる問題じゃないけど」

「夜までには何とかしたいですよね」

「ええ、お願い出来る?」

「はい、大丈夫です、でも・・・」

「こんな事頼んでいるのだから、クラスの食事の方は手伝うわ」

本来なら随行している教師は手も口も出さないのだが、フィーネ先生は緊急時との判断なのだろう

「分かりました、結界を何とかします」

「ありがとう、あとこの事は」

「誰にも話しませんわ、余計な不安は必要ありませんから」


「じゃあ、食材と寸胴鍋は置いて行きます」

「結界針の位置は分かる?」

「大丈夫です、地図に念の為書き込んで来たので」

結界針とは結界の魔法式を刻まれた簡易大規模結界の魔道具で、これを地面に刺して魔力を込めるだけで結界を張ることが出来る

騎士団の訓練や災害時の避難民など使用は多岐に渡る代物だ。


灯は地図を広げ、フィーネ先生に確認してもらう

「うん、間違いないわ、この四箇所お願いね」

「はい、じゃあフィーネ先生

夕食、明日の朝食はカレーを予定してます、エルが魚調達の指揮を、マールちゃんがご飯炊きの、メグを全体の司令塔に、あとは果物と木の枝を集める採集班なので、」

「分かった、採集班はリズベットさんに任せましょう、カレーの調理の方に加わるわ」

「お願いします」

「こちらこそお願いします」

「では、いってきます」

「アリィなら大丈夫だと思うけど気を付けてね」

「うん、そっちもよろしくね!」

「任せて!完璧なカレーに仕上げてみせるわ!」

と、離れた所からみんなに気付かれないように森の中へと一人、灯は向かった。




森の中を走る、片手には念の為に武器を

神龍の瞳の代替品、投擲用の短槍で小柄な灯が持っても尚短い槍

古ぼけた柄に、くすんだ穂先、どこから見てもボロ槍だがこの槍、実は神龍の瞳と並ぶ伝説級武具


光槍・グングニル


灯の新しい武器である

モンスターを相手にするのに素手だとクサイ・・・

神龍の瞳は家で寝て・・・、いや、保管されている

モンスターを相手にするなら刃の付いた武器が良い

灯の動きを阻害せず、かつ魔力をブースト出来る武器として

神代の賢者神オーディンの持ち物だと言われている代物だった

槍としても使えるし、杖としても優秀なこの武器がピッタリ灯の用途に合っている

普段はボロ槍なのだが、解放の意思と魔力を篭める事で真の姿を現すものである

解放前でも破壊不能の硬い槍として使える




はじまりの森は国の管理下なので、木々も適度に間引かれて光が差し込んでいる

結界の境界を辿って、結界針を目指し移動する

偶に結界の外側にスライム、コボルトが居たが無視して結界の綻ぶ箇所へと急いだ


「あった」

結界の一部が確かに破壊されている

近くにはフィーネ先生のゴーレム、何体かここを通ろうとしたのか叩き潰されたスライムとコボルトの死体が転がっていた

結界強度は最弱、しかし最弱と言ってもスライム達に破られる強度では無い

数百m四方に張る結界、大きさと強度に比例して魔力も必要になるのでコストパフォーマンスの兼ね合いから選択された結果であると思える。


「んー、補修で良いのかな?」

短槍に少しだけ魔力を通して破壊された箇所の補修を済ませる

神龍の瞳が有れば補修と言わず外側にもう一枚結界を張った方が安心だけど手元にはないし、学園生活での使用は禁じられていた

過剰な武力は周囲の為にも灯の為にもならない、サイリ、リリスの判断であった。

更に索敵魔法も出来るだけ使用しないように、と言われていた

灯の超大な範囲を誇る索敵魔法は全ての生き物を捕捉する高性能な魔法だ

しかし、五感を周囲に拡大するも等しいそれは、知らず知らずに身体に多大な負荷をかけていた

それを知るリリス達が索敵魔法を可能な限り使用しない様に灯に言うのは当然であった



その為、灯は見落としていた

スライム、コボルトが破壊出来ない筈の結界が誰の手によって破壊されたのか

破壊した存在は、何処に、居るのか・・・



「よし!次は・・・」

結界補修した所から時計回りに境界を歩いて補修を進める


結局完全に結界を直す頃には日暮れが近い時間となってしまっていた。



夜闇には、巨大な影が溶けて紛れ込んでいた・・・




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