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新緑会①

はじまりの森、野営地


わいわいとクラスメイトが各々のパーティーでテントを設置していた


「みんな、居るね・・・」

「まあ、仕方ないわよ、それにみんなで旅行みたいで楽しいわ!」


本来の新緑会は、野営の実地訓練の様なものなのだが

王女と王子が参加すると聞き付けた者が殺到

毎年数組程度の参加者が今回はクラス単位での参加となってしまい、教師の手が足りなくなってしまった


その解決策として、教師一人が必ず随行

ひとクラスを監督する事となったのだ。


パーティー毎に野営地が別々になってはどうにもならないので、野営地はクラスで決めて一箇所にみんなで野営する事となる。


「きゃー!アリエットさん助けて!」

「リズベットさん!?メグ、ちょっと行ってくるね」

「ええ、いってらっしゃい」


「うおおっ!?なんじゃこりゃ!」

「あ、それは、こうして・・・」

灯もマールも野営には慣れている、困っているクラスメイトを助ける為にあっちへこっちへと走って行ってしまった。



「さて、エリューシア、こっちはこっちでやりましょうか」

「そだね、アリィもマールも活躍してる分、こっちも頑張らなきゃ」

「ええ、事前に習っていると言っても外では初めて、」


カツン!カツン!

「マーガレット、そっちそっち!そうそう!」

「エリューシア、それ踏んで杭打っちゃって!」

悪戦苦闘しながらもテントを建てる

エルは以前エクスとアルの旅に同行していたが、アルが手際良く殆どの作業をやってしまっていた

森の中で灯達に救出された後も男性陣があっという間に組み立てていたので実質初めて

マーガレットは言わずもがな・・・


一時間程経ち、テント設置が完了した

「ごめーん、メグ、エル!」

「ごめんなさい、エルちゃん、メグさん」

「あら、おかえりなさい、ふふふ、どう!?これ」

「わ、完璧!」

「アリィもマールもお疲れ様、みんなの方は良いの?」

「うん、テント立てて、あとは食事の準備とモンスター倒すだけだから」


大半の参加者は魔法である魔法鞄か、魔道具である魔法鞄に食糧を入れて持参している

冒険者、騎士志望のパーティーだけは干し肉と水、保存の利く堅パンのみで、あとは現地調達も考えた持ち物で参加


モンスターはブルースライムとコボルトしか居ないので、各々毎日一体討伐して終わる

今回は人員の都合上、二泊三日の野営となっていた。


朝早くから移動して来たので、今はお昼前

今から食事の準備をして食べる

その後、森の中へ探索に入ってモンスター退治

野営地に戻り、就寝となる予定になっている。


「何も出来なかったからお昼は私が作るよ」

「アリィちゃん、私も手伝います!」

「あら、二人共別に遊んでいた訳じゃないんだから気にしないで」

「そうそう、どうせならみんなで作って食べよアリィ」

「ありがと!じゃあ、何作ろうか」

灯の魔法鞄には出来合いの食べ物もあれば、食材も大量に入っている、なんでもござれだ。


「シチューとかは?鍋で沢山作ってしまえば夜の分も賄えないかしら?」

「そうですね、一品はそういう物にしておけばその分探索の方に時間を回せますし」

「他には果物とか、魚、茸とか?どうせなら現地調達の物もいきたいよね」

「キノコは危ないから、果物と魚かな?

鳥とか猪も居たけど・・・」

「鳥も猪も捌けますよ」

「じゃあ、そういう方向で行こう!」

「マール、一緒に行こ!魚とか取ってくるよ」

「なら、私はアリィと此処で料理ね」


ジャガイモ、人参、玉ねぎ、豚肉、牛乳

「あ、メグ、刃物はそう持つと危ないよ、こうして・・・」

トントントントン・・・、灯は慣れた手付きで食材を切っていく

「へえ、なるほど、グーにすると刃の部分で間違って切っちゃわないように出来るのね」

「そうそう、皮の剥き方も、ほら、」

「上手ね、私は手を切ってしまいそうだわ・・・」

「慣れれば何でも無いんだけどね、私も最初の頃は指切ったりしてたし」


「・・・勉強になるわ、お父様の言った通りね」

「え?アレクさん?」

「ええ、朝城を出る時に言われたの「不便を学ぶ事は必ずマーガレットの為になる、特に実際に得た経験はね」って」

「不便を学ぶ・・・」

「そう、私は何でも「当たり前」と思っていたけど、誰かが食事を作ってくれていたし、ドレスも、何もかも人の手で作られている、みんな凄いわ、紅茶も最近自分で入れてみたのだけど渋みだけになってしまってね」

「あ、紅茶は本当に難しいよね」

「ええ、感謝しないといけないわ、周囲の皆に、これまでの事もこれからの事も・・・」

「うん・・・」

それは同感だ、今日と同じ明日が必ず来るなんて保証はない

ありがとうを伝える

気持ちを伝える

後悔のない日々を・・・



「っと、なんかしんみりしちゃったわね、さ、作りましょ」

「うん」

シチューは煮込むばかりとなった、お昼の少し前くらいにエルとマールは戻って来た

近くの水源から取ってきたらしき魚が数匹、アケビや林檎と十分な量を確保して来た


「魚はどうするの?」

「うーん、フライパンとかもあるからソテーとかも出来るけど、せっかく自然の中に来たんだしワタを取り除いて塩焼きにする?」

「ワイルドね、魚の捌き方はどうするの?」

「えっと、こうして、こう、で、ズルっと・・・」

「う、結構グロいわね・・・」

「私やろっか?」

「ううん、やるわ、こんな機会そうそう無いもの」

自分の分は自分でと、それぞれ魚を一匹捌いて塩を揉み込んで串に指す


「メグ、こっちにも焚き火お願い」

「任せて、ファイア!」

ぽんと、小さな火球で集めた枝に火をつける

「ありがとう、串を火の周りに差して、と」

「焼き上がるくらいにはシチューも頃合いだね」

「うん」

「クラスのみんなは・・・」



「焦げたー!」

「マズっ!!塩漬けの肉は戻せっつったろ!」

「果物オイシイネ・・・」



「・・・」

阿鼻叫喚、焦げたナニカを齧る者さえ居る

まともに食べているのは数人居るか居ないか・・・


「ねえ・・・」

「分かってるわ」

「流石に見過ごせないよね」

「ね」




「皆さん!」

パンパンと拍手をして声を張り上げるマーガレット

クラスメイトが皆こちらを見たのを確認して続ける

「シチュー作ったからみんなで食べましょう、ただしお代わりはないからそこは我慢なさい!」


顔を見合わせたクラスメイトみんながワッと歓声を挙げながら集まってくる

「王女様の手料理!?」

「アリィと私よ」

「いい匂い・・・」

「仕方ないから、夕食はみんなで作りましょうか、皆アリィとマールさんの指示に従いなさいね」

はい!と場をまとめる

「という事で、二人共お願い、私も出来るだけ手伝うから」

「大丈夫」

「任せて」


結局、野営の経験がある灯とマールを中心にクラス全員行動となった。

みんなで輪になってシチューを食べる、森林学校を思い出す

仲良く食べる食事はこの時限りの特別な味がした




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